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24、サランディアのお披露目会2

大変遅くなりました!16日の分です。

  サランディア令嬢の特技お披露目が終わり、社交の時間になると母様は久々の社交の為、忙しくなった。

  私は少し心細さを感じながらも母様を見送り、給仕から飲み物をもらう。



(ダビッド殿下とサランディア様がいるこの会場で、何も問題が起きないことを願うしかありませんわね……)



  そう思いながらダビッド殿下の姿を探すと、殿下はサランディア令嬢と接触するところだった。



「実に素晴らしい演奏だったぞサランディア嬢!」


「殿下にお褒めいただけるなんて……とても嬉しいですわ!」



  殿下はサランディア令嬢の先程のバリシテの演奏を大層気に入られたのか、とても令嬢を褒め称えた。

  それによりサランディア令嬢は、会場内の誰より身分の高い殿下にお褒めの言葉をいただけたことで自信を取り戻し、会の主役に相応しい満面の笑みに戻った。



(殿下にもいい所がーー)


「あの下品なレストルーチェの小娘より、よっぽど嬢のバリシテの方が優れている!やはり、貴族令嬢の特技披露はこうでなくては!」


「まぁ!殿下もそう思ってくださいます?」


(……私と比較して、私を虚仮にしたかっただけでしたのね。実に殿下らしいですわ……)



  その後はずっと、ダビッド殿下とサランディア令嬢で意気投合して私の悪口をたたき続けており、こちらに接触はしては来ないが気分がいいものでは無かった。


  だが社交界は、陰口など当たり前の世界。


  私は、この程度の事にいちいち腹を立てては足元を掬われるだろうと思い、あえて彼らの会話を無視した。



「大丈夫ですか?」


「……あ、レン様」



  私が内心悶々としながら会場の片隅で過ごしていると、レン令息が来た。

  心配気な表情は本心からのように思える。



「ありがとうございますレン様。まぁ、私を話の種にではありますが……サランディア様も機嫌を戻し、お2人が仲良くなれたようなので構いませんわ」


「大人な対応ですね……」


(大人……ね)



  レン様にそう言われて、私は周囲の大人達をちらりと見た。


  先程から誰も私に話しかけること無く、ずっと殿下達と私を眺めているだけの大人達。

  そして、大人達に従って同じく様子見しているだけの子供達も……。



(試されているのでしょうね?私が、悪し様に言われて激怒し品を損なうような公爵令嬢なのかどうかを……)


「大したことではございませんわ。大人も子供も人を話の種にして仲良くなるのはよくある事ですし、まして彼らはまだ若い。可愛いものではありませんか」



  そう言って私は、給仕から受けたとっていた飲み物を一口飲んだ。



「……本当にあなたが私達と同じ5歳なのか度々悩まされますね。私ですら彼らの言い様に怒りを覚えるというのに……貴女がそのようでは私が怒るのはお門違いだ」


「ふふ。レン様にそのように思っていただける事にむしろ喜びを感じますわ。ありがとう存じますレン様」



  レン令息は私が思いの外、彼らの言動に傷付いていないようだと知ると社交の輪に戻って行った。



(ふぅ……まぁ、私もずっと壁の花でいるわけにはいきませんわね。社交会の度に毎回逃げるように席を外すわけにもいきませんもの。ちゃんと慣れなくては……)



  そう思い私は会場を見渡す。


  主役のサランディア令嬢は意気投合した殿下とどこかへ消え、レン令息は歳の近い男子達と雑談。

  母様はご夫人達に囲まれて久々の社交を楽しまれており、父様を含め男性貴族達は仕事の話。



(令嬢たちの輪は……)



  この会場にいる歳若い令嬢達は二組に別れて雑談に興じていた。

  下級から中級貴族の令嬢達の組と上級貴族の令嬢達の組だ。


  私は上級貴族の令嬢達の輪へとゆっくり歩き近づいていく。



「ご歓談中失礼致しますわ。私もお話に加わりたいの」


「いらっしゃいませフィリセリア様」


「嬉しいですわフィリセリア様」


「ご一緒できるなんて嬉しいです」


「よろしくお願いいたしますフィリセリア様」



  その場に居るのは四人の令嬢。


  彼女達は皆、私のお披露目会にも参加してくださっていたので面識があった。


  深緑の片側を結い上げた髪に紫の瞳のシャディア・ライティス令嬢は、侯爵家の令嬢で落ち着いた雰囲気がある。歳は7つ上。

 

  淡紅色の波打つ髪がふんわりとして、薄水色の瞳をしたミミラティス・ドルティチア令嬢も侯爵家の令嬢。

  彼女は見た目の印象通り、どこかおっとりした令嬢だ。令嬢は同い歳でお披露目会ではティフルーティがお上手だった。


  明るい橙色をしたストレートの髪に若草のような薄緑の瞳をしたティリカミリス・カプティリエ令嬢は、伯爵家の令嬢で元気で明るい令嬢。歳は1つ上。


  薄水色の髪を1つに結い上げる青の瞳をしたアイシャルネ・ウィスノリス令嬢も伯爵家。

  彼女は凛とした雰囲気で、令嬢なのにどこか格好良さがある。歳は3つ上。


  令嬢達は皆、私を快く受け入れて話の輪に加わらせてくれた。

  私が輪に加わった途端、私に話しかけてきたのは1つ年上で活発なティリカミリス令嬢だ。



「フィリセリア様、殿下達のことどう思われます?」


「ティリカミリス令嬢っ。物言いが愚直過ぎますわ」


「だって、噂ではフィリセリア様がダビッド殿下の婚約者に成られると言われていたではありませんか。気になります!」



  ティリカミリス令嬢のストレートな物言いをシャディア令嬢が窘めるが、ティリカミリス令嬢は引かない。

  他の令嬢も気になっているようで、私の言葉を待っているようだった。



(正直に言えば殿下なんて願い下げ!!なんですけれどね……)


「今日の主役はサランディア様ですから、彼女の御心を安らげた殿下はお見事だと思いますわ」


「まぁ……フィリセリア様は、殿下をちゃんと立てて差し上げるのですね」


「フィリセリア様は、ダビッド殿下の有力な婚約者候補ですもの!」



  私が自分の本心を隠して、殿下を褒めるような物言いをするとシャディア令嬢が少し驚き、ティリカミリス令嬢が『当然だ!』と言わんばかりの態度を示した。



「でも、殿下もサランディア様もフィリセリア様の事を散々な物言いなさってましたけれど?」


「まぁ、そうですねミミラティス様。けれど、それは別に構わないのです。私1人を話の種に今日の主役が機嫌を取り戻し、お2人が仲良くなられたのですもの。安いものですわ」


「なんて謙虚なんでしょう。フィリセリア様は、お優しいお方ですのね」


「素晴らしいですわ!」


「自己犠牲ですか?」


「アイシャルネ様っ」


「大丈夫ですわシャディア様。そうですねえ……私としては、自己犠牲では無いと思っておりますわ」


「なぜ?」


「先程の事で、周囲の貴族に悪し様に言われても品を忘れて怒るような令嬢では無いと印象付け出来ましたから」



  私の言葉に3人の令嬢は、なるほどと納得と賞賛の思いを抱いた。

  だが、この場の最年長であるシャディア令嬢だけは私に忠告をしてくれる。



「初めの印象付けとしてはそれでいいと思いますわ。けれど、そのままですと『何を言われても言い返せないような度胸の無い令嬢』と思われ、付け入ろうとする者が出る事も考えられますわ」


「ふふっ。そうですね。しかし、私の身分で殿下へ下手に指摘申し上げるのは無礼に当たりますもの。もし、言い返しても良い相手が私を貶めるような発言をなさった折にはそれ相応の対応をさせていただく事にしますわ」



  私がそう言うと3人はびくりと肩をはね上げ、シャディア令嬢は満足そうに頷いた。



(家族に迷惑がかかると嫌ですし、その辺は慎重にならなくてはなりませんね)

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  ダビッド殿下が何故あそこまで、わがままになったのだろう?
[気になる点]  ティフルーティはフルートやリコーダーみたいな笛だと思ってたらいいのかな。 [一言]  主人公以外からの視点の小説話もあたっらよりよくなると思います。
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