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20、閉会とその後

  レン令息と舞踏を踊った後は、私がテラスで休んでいた間にノルマの3人までを踊り終えたヴァシュロンが私の元に来た。



「レン殿、フィリセリア様をお連れしてもいいかな?」


「もちろんでございます。フィリセリア嬢、ありがとうございました」



  私はヴァシュロンに連れられて、会場の片隅で飲み物をいただいた。



「……フィリセリア様を一人にすべきでは無かったようだ」


「貴族令息達に囲まれてしまった事ですか?仕方ありませんわ。3人までは舞踏を踊らねばなりませんでしたし、レン令息がすぐに助けてくださったので大丈夫でしたわ」


「……はぁ。この後はずっとそばに居るよ」


「最低人数は踊りましたけれど、皇族と公爵家ともなれば他の貴族とも社交をすべきでは……」


「あのように囲まれて一斉に話しかけられたところで、社交とは言えないよ。はぁ……(それに、もうフィリセリアに男達を群がらせたくない)」


「クスッため息が多いですわ」


「君の事だもの気を揉むくらいいくらでもするよ」


(大事な友達として心配してくださるのね……)



  ヴォシュロンは宣言通りに私から離れることなく、ずっと傍にいた。

  おかげで貴族令息達に囲まれる事も無かったが、令嬢達まで皇族である殿下に気を遣い、私に近づいて来ないため社交にはならなかった。


  私との魔力訓練を終えてからの四ヶ月の様子をお互いに話したり、会場の様子を一緒に見たりするのみ。

  いつの間にかに会場に戻ったダビッド殿下は、貴族令嬢達に囲まれてご満悦な様子で、こちらには気付いても居ないようだった。



「皆、お披露目会は楽しめただろうか?」



  前に出た陛下が声をかけた事で、皆が陛下の方を向く。



「今年のお披露目となった貴族子達は大変優秀なようで大変喜ばしい。今後の彼らの活躍に期待し、お披露目会はお開きとしようと思う。新生貴族達、期待しておるぞ」



  皆が陛下に頭を下げて会はお開きとなった。



「フィリセリア様、また会える事を楽しみにしております」


「私もですわ。ヴァシュロン殿下。御前、失礼致します」



  大人達はそのまま皇城に残り夜会への出席をする為、私は父様母様に一言挨拶だけして公爵家から来た迎えに連れ、馬車で屋敷に帰った。



 ****


  翌朝、遅くまで夜会に出席した両親は遅めの起床と朝食となった為、顔を合わせられなかった。



「フィリセリア様、公爵様とファリシア様が昼食を共にとられるとの事です」


「わかったわ。ありがとうリリア」



  午前の勉強を終えた私は食堂へと向かう。



「昨日はご苦労だったな」


「フィリス、お披露目会は楽しめました?」


「労いの言葉ありがとうございますお父様。ええ、楽しめましたわお母様」



  私は2人の言葉にそれぞれ返事をしてから席に座った。



「陛下から話には聞いていたが、お前があれほどヴァシュロン殿下と親しいとは知らなかったな」


「ええ。私も驚いたわ。とても仲がいいのね?」


「はい!ヴァシュロン殿下は、恐れ多くも良い友人ですわ」



  2人が昨日のお披露目会の事を思い起こして、私とヴァシュロンが仲良さげだったと言うので私がそう答えると、2人はきょとんとした。


  私は、求められる返答と違ったのだろうかと首を傾げた。



「いや……うむ。フィリスはそういう認識なのだな……」


「殿下は苦労しそうね〜クスクス」



  それから昼食が給仕により配られ、お披露目会でどのように過ごしたかを2人に聞かれては答えて過ごした。



「舞踏を共に踏んだのはダビッド殿下、ヴァシュロン殿下、レン令息か……」


「クスクス……殿下が貴女の騎士になっていたのね?」


「ごめんなさい。本当はもっと他の方たちとも接して社交をしようと思っていたのですが……」


「仕方あるまい」


「大丈夫よ〜。少なくとも女の子達に関してはすぐに機会があるわ」



  そう言って母様は侍女から手紙を受け取り、それを私に渡してきた。



「これは……?」


「皇后様主催のお茶会の招待状よ?それは貴女の分」


「皇后様の!?」



  手紙を裏返せば、押蝋は確かに皇家の月と光の紋章だった。



「お部屋に戻ったら手紙を読んで、お茶会の支度を始めてちょうだいね?」


「私の分という事は、お母様も参加なさるのですか?」


「ええ。今回のお茶会には一緒に出席するわ。そうね〜せっかく一緒に出席するのですし、ベビーブルーの衣装でお揃いにでもしましょうか?」


「いいですわね。母様の薄い金髪にとても似合いそうですもの」


「うふふ。一緒に参加できるなんて嬉しいわ。娘の居る親冥利よね」



  部屋に戻って手紙を開けると、内容は14日後に皇城の庭園でお茶会を催すので上級貴族の令嬢は全員出席をというものだった。



「皇城の庭園……あのテラスから見えた綺麗な花壇の所かしら……」



  あの美しく花々が咲き誇る庭園でお茶会をするならきっと心地良いだろうと思った。



(少し楽しみですわ……)



  上級貴族令嬢が集まるならばあの気の強いサランディア令嬢も参加するし、派閥の見極めをしようとする親の意向に従う令嬢達も集う事になる。


  綺麗な庭園でゆっくり心地のいいお茶会とは行かないだろう事を私は失念していた。



 ****


  その晩見た夢は、恐らく前世の出来事なのだろう。


  私は、女でありながら必要に駆られて剣を振っていた。


  傍らには私の錬金術の師であり、私の友である男ーー。


  彼はいつも言葉足らずで、基本無口な愛想の無い男で、誰とも関わりを持たず孤独に錬金術に勤しむ。


  私はそんな彼にしつこく錬金術を教えて欲しいと懇願し弟子となって、錬金術がまだ邪術などと言われる国で、2人で研究しては人々の役に立っていた。


  けれど、王の悪政に耐えきれなくなった国民による暴動が起き、人々を守るために私も彼も剣を握る事になった。


  彼は剣を扱い慣れていたようで難なく敵を倒すが、この暴動で初めて剣を握ることになった私はひたすら必死に剣を振るしか無かった。


  ようやく暴動が収まり、人々を守り抜くため戦い抜いた私達は既に瀕死で、2人揃ってその時死んでしまった。


  死に際に私に向けて彼が優しい顔で何か言った気がするけれど……なんと言ったのだろう?

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