16、お披露目魔力測定2
お披露目会の要である魔力測定水晶玉による魔力計測が行われた。
四公爵家のうち三公爵家からお披露目の子供が出席し、ガルマ公爵家令息は基礎三種と闇属性、ライダンシェル公爵家令嬢は基礎四種の属性を各々水晶玉に8、9割ほど現した。
そして、レストルーチェ公爵家令嬢であるフィリセリアは基礎四種と特殊二種、全ての属性の色を水晶玉に浮かべたが、その割合は中級貴族にも劣るやもという5、6割程のものだった。
(私の事を知っている皇帝やヴァシュロンは、驚いているわね。まぁ、父様も似たような反応をしている事でしょう。けど……それでも全属性はさすがに目立つみたいね)
『全属性なんてフィリセリアくらいですもの』
ダビッド皇子の様子も一応見たが、小馬鹿にするような表情でこちらを見ていた。
(あ〜まぁ、ダビッド皇子はお披露目の時にはもっと色の割合が多かったのでしょうね。しかし、自身より劣るものを小馬鹿にするような態度は褒められたものでは無いと思いますが……)
私が座席に戻って行くとサランディア令嬢は、納得のいかない顔をして私を睨んでいた。
そして、私が座席に座ると隣の席から私に嫌味を言い始める。
「全属性がなんですの?公爵家でありながらあんな結果を出して、まぁ〜恥ずかしい!魔力量の多さが公爵家の売りでしょう?そんなに魔力が少ないんじゃ、まともなところに嫁げませんわね!」
『随分な物言いの小娘ですわね!』
(まぁまぁ、抑えて白妃)
「……これから精進して参りますわ」
「はっ!スタートラインが違うんですものたかが知れていますわね!」
そこまで言うとサランディア令嬢はスッキリしたのか清々しい顔で前を向いた。
(五歳児の嫉妬と思えば可愛いものね……。同じ公爵家として今後の社交界で関わり合うと思うと先が思いやられるけれど……)
『関わり合いたくありませんわね』
(そうはいかないわよ……)
『人間って大変ですわね?』
(貴族はね……。人間の種類にもよると思うわ)
全属性という事で周囲の目を集めてしまった私だが、今日のお披露目の本当のラストを飾るのは私では無い。
「ヴァシュロン・ティルス・シャルディルチア殿下、こちらへお越しください」
ヴァシュロンは落ち着いた様子で水晶玉の前に歩み出てきた。
先程までざわめいていた貴族達もヴァシュロンが呼ばれたことでピタリと口を噤み、静かに見守っている。
「殿下、水晶玉に御手をのせてください」
「はい」
ヴァシュロンが水晶玉に手をのせた途端、玉が青、緑、白色の色の塊を鮮やかに現した。
そしてあっという間に割合10となり透明度などまるで無い濃さの各色に染まるとーー
ーーピシッ
水晶玉にヒビが入った。
「おっ!御手をお離しくださいませ!」
慌てた大神官にそう言われてヴァシュロンは、水晶玉から手を離して数歩下がった。
当然、会場内は先程までの騒ぎより、さらに大騒ぎとなっている。
「水晶玉にヒビが!?」
「それ程までの魔力量だというのかっ」
「魔色は三種しか無かったが……」
「適合魔力が三種であることなど大した事じゃない!なんて魔力量だ!」
貴族達が各々驚きの声を上げ、子供達はただ突然ヒビの入った水晶玉に驚いている。
……コツコツコツ
会場が騒然となる中、陛下が静かに前に出た。
すると、貴族達は誰もが口を噤み陛下へを見る。
「皆、皇城で5ヶ月前にあった広域治癒魔法を知っている事だろうと思う。そして、その時に広まった噂。曰く、第二皇子ヴァシュロンは光の精霊王と契約を交わした。曰く、皇子は神々にも愛される神童であるとの噂であったな?」
「なんですかそのでたらめな噂はっ!」
皆、内心思うところがありながらも陛下のお話中なので静粛に次の言葉を待っていた中、そう叫んだのはダビッド皇子だ。
(いくら第一皇子とはいえ陛下のお話を遮るなんて……)
「全くですわ!どういう事ですの!!」
(貴女まで便乗しては駄目でしょうサランディア令嬢……)
『荒れてますわね』
私はついため息を吐きそうなのを我慢して、事の成行きを見ていた。
「父上そんなのでたらめです!ヴァーシュが俺より優れているはずがないっ!」
(どこからそんな自信が湧くのやら……私が鍛え上げたのだからヴァシュロンはかなり優秀なはずですわよ?)
『そうですわ。ヴァシュロンはちゃんと頑張ってましたもの』
さすがに公の場で叱り飛ばすという事はなく、陛下はダビッドに手をかざして黙らせた。
「噂は真実と異なるという事を認めよう。ただ、完全に無関係でもない事をここに証明する」
(あ、もしかして……?)
陛下がヴァシュロンに前へ出るよう促すとヴァシュロンがルチアを呼び、皆に見えるように光で具現化させた。
会場はどよめいたがそれを陛下は手をかざして黙らせる。
「ヴァシュロンの契約精霊。光の上級精霊様だ。城で起きた広域治癒魔法は、確かにヴァシュロンの影響により起きたものであることをここに知らせよう」
「皆様をお騒がせ致しましたこと、誠に申し訳ございません」
「水晶玉が耐えられぬほどヴァシュロンの魔力があるという事実は、光の上級精霊が証明となろう。私からはーー」
「そんなことは信じられないっ!」
そう言って立ち上がったのはやはりダビッドだった。
「事実、光の上級精霊様はヴァシュロンと精霊契約を交わしている」
「嘘だっ!精霊は目に見えない存在のはずっ!こんなのは偽物だっ!この嘘つきめっ!」
「言葉を慎みなさいダビッド」
陛下が声色を凄ませてダビッドに叱りの言葉を向けると、さすがにダビッドも黙った。
「……ダビッド。静かに出来ぬのであれば退場していなさい」
「なっ!」
「時間は限られておるのだ。そなたに遮られてばかりでは、お披露目会が進行せぬ。これ以上、会の妨害をするな」
「(チッ)……わかりました」
(舌打ちしているわ……。後ろの方にいる大人たちにには聞こえていないでしょうけれど……)
これで、ようやく今年お披露目となった貴族の子供の魔力測定が全て終わった。
(ヴァシュロンが目立ってくれたから私の全属性の件はあまり目立たなくて済んだかしら?ヴァシュロンに感謝ね)




