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9、精霊魔法士と精霊魔術士

  対外的には精霊魔法士という事を伏せて数は少ないが一般的とされる精霊魔術士と名乗った方がいいかもしれない。


  だが、『精霊魔法士と精霊魔術士はどう違うのか?』と疑問に思っていると、ルチアが答えられると名乗りを上げた。



『精霊魔法士のお2人は、精霊に気に入られて魔力を差出して、名を与えて契約をしたでしょ〜う?』


「ええ、そうですわね」


『でも〜精霊魔術士は、各属性の精霊を呼ぶ魔術陣を描いてその陣に魔力を送って、精霊を不規則に呼び出すのよ〜』


「え?特定の精霊とやり取りしながらではありませんの?」


『違うわよ〜。魔力を対価に魔術陣で誰でもいいからその属性の精霊を呼んで、魔力分だけ働く契約になるのよ〜』


「精霊に力を借りる時だけ魔力を送って、その魔力分の精霊魔法を精霊に使ってもらう?」


『そういうこと〜』


「では、精霊魔術士には契約精霊が居ませんの?」


『居ないわね〜。まぁ、精霊に気に入られれば、その属性の陣の時は自分が行くよ〜と、約束してくれるかもしれないけれど〜』



  精霊魔術士は、精霊魔術陣で魔力を対価にランダムに精霊を召喚して精霊魔術を使ってもらう……。

  精霊に気に入られても常時一緒に居られるわけではなく、精霊魔術陣で呼び出す時にその精霊を確定で呼び出せるようになるだけ。


  精霊に気に入られて精霊契約をし、いつでも契約精霊と一緒に居られる精霊魔法士とは全く別物だ。



「普段から姿が見えているなら、もっと仲良くなれそうなものですのに……」


『見えてませんわよ〜?』


「え?」


『精霊魔術士達は、普段は精霊達を見えていませんわよ〜?彼らは仮契約状態の精霊のみ見えるのです〜』


「え……。では、まさか……普段から精霊達の姿を見る事が出来、声を聞けるのは精霊魔法士だけなのですか?」


『そうですよ〜?精霊視出来る目を持つ者達も見るだけで、声は聞こえてませんし〜。そこまで親和性が高いのは、精霊魔法士だけですわね〜』


(なっ……。そうなると精霊魔法士は相当貴重な存在という事になってしまいますわ……。本当に素性を隠さないと……)


『うふふ〜そうですよ〜。精霊魔法士はとっても貴重です〜』


(!契約相手でなくても心話可能なの?)


『親和性が高いって言いましたでしょ〜?これも精霊魔法士の特権ですわ〜。まぁ、これは私がフィリセリアとの回線を繋いだからですけれどね〜』



  私は、色んなことが立て続けにわかってきて少し疲れ、ちょっとばかりため息を吐き項垂れた。



「……?ルチアは誰と話しているんだ?」


「あれ?私の心話はヴァシュロンには聞こえなかったのね」


『当然よ〜フィリセリアと私の回線を繋いだだけだもの〜。いくら契約相手とはいえ、人と人の心話を繋げることは出来ないわ〜』


「なるほど……」


(よかった……心の声がヴァシュロンに聞こえちゃう事にはならないのね)


「心話?何それ?」


『ふふふ。それは後で私から教えますわね〜』


「うん。よろしくルチア」



  既に精霊に関してお腹いっぱいな感じではあるが、私には湖でもうひとつやりたい事がある。



「水の精霊達は、私と精霊契約してくれるかしら……」


「えっ!フィリセリア、水の精霊とも契約するつもりなの?既に光と風の2つの属性の精霊と精霊契約しているのに??」


「え?ええ。それに、私が精霊契約しているのは翡翠と白妃だけではなく、闇の精霊の希闇もですわ。日中は大体不在ですけれど……」


「三属性も……?」



  明らかにヴァシュロンが私の精霊契約数に驚いている。


  魔力さえ足りれば精霊契約はいくらでも可能だと思っていたのだが、もしかしたら契約出来る数に限りがあるのだろうか?

  いや、ヴァシュロンは契約した精霊の属性数に驚いているように思う。


  考えても分からないので、私は素直に尋ねることにした。



「何か……おかしいのでしょうか?」


「い、いえ、精霊魔法士の事を聞いたことがないのでおかしいのかどうかも分かりませんが……純粋に驚きまして」



  一般的に何かおかしいと思って驚いた訳ではなく、単純にすごいと思って驚いたらしい。

  なんだそうか、何か一般の基準があるわけではないのかと一安心しそうになったら、翡翠達が追加情報を出してきた。



『まぁ、フィリスだけだよね〜』


『そうですわね。そうそう精霊に気に入られるものではありませんもの精々、二属性では?』


「そうなの?濃い魔力がたくさんあればいくらでも契約可能なのだと思っていたけれど……」


『そんな事だけで精霊契約しないって〜。よほど気に入らないと精霊契約は成さないよ?光なら人々を導く聖人が如く徳が高く心優しいとか、人の為を考える人とか、風ならすごく旅や冒険する人?』


『水なら誰よりも海を知る海の男や呼吸を気にせずどこまでも泳ぎ、水と戯れる人など好かれそうですわね?』


「その手の超人だけが好かれる……?でも、私はそんな……」



  私は、お披露目前で人前に出ていないのだから、徳なんて積んだ覚えがないし、すごく旅や冒険をしているわけでもない。

  水になど公爵令嬢として過ごす時には触れさせても貰えないし、せいぜい人より水に触れているのは風呂くらいだろうか?



『前に白妃が言ったでしょ?フィリスの魂の輝きに私達は惹かれたんだよ』


「魂の輝き……」



  陛下に呼び出されて精霊契約した時の事を話した時に、『高濃度の魔力に釣られたというより、フィリスの魂に惹かれてたどり着くと高濃度の魔力が溜まっていたので頂いただけですわ』と確かに言っていた。



『本当……フィリセリアの魂の輝きは、とても心地いいですわ〜』


『今生のフィリセリアがまだ人生をあまり経験していなくても、前世での経験が精霊達に評価されているというところでしょうか……。きっとフィリセリアなら、他の属性の精霊達にも気に入られますわ』


「………」


『どうした〜?フィリス』



  白妃の言葉に俯いて黙ってしまった私を心配して翡翠が声をかけてくれる。

 

  私は俯いたまま、思っている事を口にした。



「……魂の輝き、前世の経験を評価されるのも私を評価されていることになるのかもしれません。けれど……今生の私としては何も力を示せていないわけではありませんか……」



  自分に覚えのないことを評価されても、何もしていないのに期待だけがかけられている重荷というか、評価を偽造して騙しているような心地の悪さがある。

  私はそれが気になってしまった。


  私は俯いていた顔を上げて、湖を見ながら宣言する。



「私の魔法を見てもらって、その上で精霊に評価してもらいます!まずは、湖に居る水の精霊ですわ!」

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