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8、殿下の精霊契約2

  木漏れ日の光に隠れる光の低級精霊達にヴァシュロンが一人で対面し、契約を望んで出せる限りの魔力を差し出した。


  その持ち掛けられた契約に木漏れ日に居た精霊達は喜んで応じ、それどころか湖付近に居た全ての光の精霊達がヴァシュロンの元へと集ってしまった。


  その様子に私が一人慌てていると、翡翠が『統合する』と言い、それに白妃も同意したかと思えばヴァシュロンの元で強い光が放たれた。


  放たれた光は一度だけではなく、続けて三回ほど強い光が放たれた。


  私は思わず背を向けて、目を瞑った上で腕で覆った。

  そして、光がそれ以上放たれるのを警戒しながら腕を外し、ゆっくり目を開いた。



(うう……目がチカチカ……しない?)


『精霊の光だもん。陽の光とかみたいにチカチカしたりしないよ?』


『契約していない人間にはそもそも見えないものですし、視覚には影響しませんわ。まぁ、影響与えようとして光を放てば別ですけれど』


(そう……なのね。それで、精霊契約の方はどうなったのかしら)



  私は、少しばつの悪い思いをしながらヴァシュロンのいる方へと振り返る。


  そこには数多の光の精霊達の姿はなくーー



「……だれ?」



  思わず声に出して私がそう呟いたのは、ヴァシュロンが何か別のものに変異してしまったという訳では無い。


  ヴァシュロンの前に、先程までは確かに居なかった、プラチナブロンドを2つ結びにしている金の瞳の絶世の美女が居るのだ。

  ついでに、遠目でも胸元に2つたわわに実っている様子が見える。


  白金に輝く髪を束ねているのは何故か水晶玉のようで、来ている服はなんとも簡素でありながら美しい真っ白のワンピース。


  そのような軽装で外を出歩くなど平民であってもありえない。


  それに、あの簡素なワンピースは見覚えがあるような気がする。



(まさか……)


『さすがにあの数だったし、上級精霊にまでなったか〜』


『……仕方ないですけれど、先を越されてしまいましたわ』


(上級!?)



  翡翠と白妃の会話を掻い摘むと、ヴァシュロンの目の前にいる絶世の美女は、先程まで集っていた光の精霊達の変化した姿で、上級精霊らしい。

  そして、翡翠達は中級精霊。



(なんだか……とんでもない事になっているような?)


『けれど、良かったのではありません?優れた精霊魔法士であると思われた方が都合がよろしかったのでしょう?』


(そう……ね。まさか上級精霊と精霊契約するとは思っていなかったけれど)


『あら、フィリスが望めばすぐにでも上級精霊と契約出来ると思いますわよ?』


『そーそー。あの子みたいに低級精霊が沢山いるところで魔力を差し出すか、あたいらに初めて会った時みたいにいっぱい魔力くれればすぐだよ?』


(……ん?低級精霊でないといけないのですか?)


『低級精霊には、自我らしい自我がありませんからその他大勢と統合しても気になりませんけど……』


『あたいら中級精霊には自分ってもんが既にあるからな。その他大勢と統合されてせっかくの休み芽生えた自我を失うなんてまっぴらさ』


(なるほど……確かにそれはお断りですね)



  私達が精霊の統合について話している間に精霊契約が無事に完了したのかヴァシュロンが光の上級精霊を連れて私達の元に来た。



「フィリセリア。無事に精霊契約が出来ました!有難うございます!あ……もしかして、フィリセリアの契約精霊の方々?」


『そうだよ〜あたい風のヒスイ!』


『光のハクヒと申します』



  精霊契約を成した事で私の契約精霊である翡翠と白妃の姿や声も分かるようになって驚いている彼に苦笑しながら、彼の言葉に返事をした。



「私は何もしていませんわ、ヴァシュロン殿下。全て殿下がおひとりで成し遂げた事です」


「いいえ!僕一人では精霊達のいるところに気付くことすら出来ませんでしたし、魔力圧縮の訓練だって……本当にフィリセリアのおかげです」


『ヴァシュロン、そろそろ私の事を紹介してくださいませんか〜?』



  ハープのような心地いい声でそう言い出したのは、ヴァシュロンと精霊契約をしたばかりの光の上級精霊だ。



「そうですね。こちらは、僕と精霊契約をしてくれた光の精霊ルチアです」


『光のルチアですわ。以後、よろしくお願いしますね〜』


『よろしくー』


『よろしくお願いしますわ』


「フィリセリア・レストルーチェですわ。よろしくお願いしますねルチアさん」


『クスクス、精霊にさん付けだなんて変わった方ね〜?ルチアと呼んでくださいな〜』


「さん付けはしないものなのですね……わかりました。よろしくお願いしますルチア」



  さん付けしないのは精霊の常識らしい。


  知らなかった事を一瞬恥入りそうになったが、ヴァシュロンも『そうなのか……』という顔をしているので恥じ入ることも無さそうだ。


  精霊術士か精霊視するものくらいしか彼らと会話しないのだから、人間が知らなくて当然の事である。



「……これで僕も精霊魔法士ですね」


「そうですね。まぁ、対外的には精霊魔術士って事にした方がいいのかしら……。精霊魔術士ってどんな感じなのかしらね……」


『それは私がお答えできますわ〜』



  そう答えたのは、なんだか少しおっとりした口調のルチアだった。

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