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8、誕生

 誕生日の翌日、日がようやく昇るという薄暗い時間に、私は屋敷の騒がしさで目を覚ました。


「リリア、みんなどうしたの?」


「フィリセリア様!お目覚めになられたんですね!ファリシア様がっ!産気づいーーって言ってもわかりませんよね。ええ〜っと、フィリセリア様の御きょうだいが産まれそうなんですよ!」


(なるほど、朝方早くにお母様が産気づかれてみんなバタバタしているのね。きょうだいか……あの夢の人生でも一人っ子だったから想像つかないわ)



「私は大人しく自室で待っていたらいいかしら?皆、忙しくしているようですし動き回るのは邪魔になってしまうでしょう?」


(もっと成長した身体なら手伝える事もあるかもしれないけれど、4歳児の身体ではうろつくだけ邪魔だわ)


「な……なんか妙に冷静ですね。はぁ〜……私の方があたふたしてるくらいです。はい、自室で待機していましょう。何か必要なものがあればお申し付けください」


「ありがとうリリア。勉強用の本もあるししばらくは大丈夫よ。とりあえず、着替えをしたら朝食を取るから部屋に運んでもらえる?」


「はい、承知致しました」


  朝食後、母様ときょうだいが心配で内心そわそわしながら魔素による魔力操作と勉学に取り組んだ。


 ****


  朝と言うには遅く、昼と言うにはまだ早い時間に屋敷内に赤子の泣き声が響き渡った。



「!!産まれたのね!」



  気になって勉学に集中出来ていないのは丸わかりだったようでリリアに微笑ましそうに眺められていた。

  それでも、表面上は平静を装っていたのだが、泣き声を聞いて思わず椅子がガタンッ!と倒れるほど勢いよく立ち上がり叫んでしまった。



「クスクス。どうやらそのようです。御きょうだいに会いに行きましょうか」



  私が、リリアの案内で母様の元へ向かうと、疲れを残した顔で母様がベッドから身体を起こして赤子を抱いていた。



「お母様!」



  令嬢教育も忘れて母様に走りよると母様は嬉しそうな顔をして抱き寄せてくれた。



「フィリス、あなたの弟よ」



  そう言われて母様の手元を覗く。


  目の前に母様の腕に抱かれた産まれたばかりのシワクチャ痩せぎすな産毛まみれの頭髪の薄い小さな猿が居た。



「んふふ。もう、フィリス?何この小猿はって顔に書いてあるわよ?そんな顔しないの」



  見るなり私は、相当険しい顔をしていたようで母様にそう言われてしまった。



「うぐ、そんな事思ってませんわ……」


「産まれたての赤ん坊はみんなこんな感じよ?フィリスもそうだったもの。そのうち産毛も薄くなってふっくらとしてくるわ」



(……弟よ。今後に期待していますからね)



「そうだ、この子の名はなんというのですか?」


「ファディールよ」


「ファディール……。私は姉のフィリセリアですよ。これからよろしくお願いしますね?」



  返事は当然ないが少なくともこちらからは仲良くようと思いながら、母様に抱かれてすやすや眠っているファディールをしばらくの間見ていた。



 ****


  私は、母様とファディールの居る部屋を出て昼食をとる為、食堂へと向かった。


  母様は産後無理をしないためと新生児を外部に知られない為にも最低限の人間だけと接触しながら過ごす事になる。

  娘の私にすら接触を控えて、部屋に籠って育児をすることになるらしい。


  公爵はいつも仕事で忙しく食事を共にすることなど滅多にないし、母様ともここ数ヶ月別々だった。

  1人で食事をする事はごく当たり前になってきていたのに、いつも以上に寂しい昼食のように思えた。



(妊娠中もなかなか会えませんでしたが今後もしばらくはお母様に会えないのですね……)



  少しばかり寂しい気持ちに沈むものの、母様や弟のファディールに凄いところを見せ驚かすために頑張る期間と思えばいい。と気持ちを切り替える。



(より一層、集中して各訓練に挑みましょう!そうすればあっという間に日数など経ちますわ)



  だが、収魔のブレスレットを外しての身体強化の訓練ができない以上、武術を磨くのは難しい。

  魔素からつくる魔力を使っての魔法訓練も魔法を使うこと自体を待てと言われている今はできない。



(結局、いつも通りの勉学と体力づくりの運動……あとブレスを外して魔法を使うのは禁じられたけれど魔力操作は禁じられていないからできるくらいですか)



  正確には、収魔のブレスレットを外さなくても魔力操作の訓練ができることを公爵が知らないため禁じられていないだけだが。



(魔力操作の訓練をより高度にできないか考えてみる事にしましょう)



  仕方ないからいつも通りにとはならないのが私である。

  早く偽の収魔のブレスレットができることを願いながら私は魔力操作の方法を工夫できないか模索し始めた。

続きを見たい、応援したいと思ってくださった方

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毎日投稿頑張る所存です(´∀`*)

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