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4、殿下の訓練

  ヴァシュロン皇子の魔力操作訓練は、ほぼ私の魔力操作訓練と同じ内容を行っていった。


  偽の収魔のブレスレットが出来るまでは、魔素を使った魔力操作訓練をながら作業で毎日続けてもらい、創った魔素魔力は収魔ブレスへ。


  偽ブレスが出来てからは、自身の魔力操作をして魔力圧縮をするのと並行して魔素魔力創り

 をさせる。

  この魔力操作もはじめの魔素魔力つくりと同じく、ながら作業で毎日行うが、この魔素魔力は創っては霧散させた。



(貯めすぎてから霧散させると帝都に魔物が押し寄せて来るかもしれないもの……)



  週一回の私が指導する時には、 創った魔素魔力をその場で魔法実践に使って、魔法を使い馴れていく。

  魔力圧縮を続けている自身の魔力は、身体強化と治癒魔法に当てる。


  魔素魔力は、走り回りながら互いに魔法をぶつけ合っての魔法戦の実習で使用した。


  レストルーチェ騎士団を鍛えた時と同じ1ヶ月が経つ頃には、ヴァシュロンの実力は騎士団の者達より遥かに上達していた。



「ヴァシュロン殿下、かなり上達されましたね」


「……ここでは二人きりです。殿下はやめてください」


「なりません。私は友人としてここにいるわけではなく、ヴァシュロン殿下に魔法指導役としているのですから」



  私がそう言うとヴァシュロンは拗ねたような顔をした。

  何度も顔を合わせて訓練をするうちに顔を合わせるなり目を泳がせて俯くような事はなくなった。



  (訓練を繰り返すうちにだいぶヴァシュロンとも打ち解けてきたような気がするわ)



「ヴァシュロン殿下。今日はいつもの訓練と違う事をしたいと思っているのです」


「いつもの訓練と違うこと?」


「はい」



  私は、ヴァシュロンの訓練のために頻繁に皇城へ訪れるようになってから気付いたことがあった。


  それは、皇城に住まう精霊達。


  初めて訪れた時から皇城はなんとも煌びやかだと思っていた。

  だが実際は、私の目に精霊達の光も映り込んでいて、そのために城が余計に輝いて見えていたようだ。


  といっても皇城に居るのは、低級精霊らしく姿らしい姿のないただの小さな光。


  それでも探してみれば水の精霊、風の精霊、土の精霊、光の精霊が居た。


  精霊は自然豊かな田舎に多くいるものと思い込んでいた。


  だが、城は光がよく入るよう配慮されていたり、美しい庭園があったり、土魔法で壁は作られ、湖も敷地内にあるし噴水などもある。

  精霊達が好むには充分な環境が揃っているようなのだ。


  さすがに翡翠たちのような中級精霊は見かけないが、低級精霊が彷徨くくらいはする。


  そして魔力操作訓練を日々熱心に行い、保有している魔力の濃度も上がったヴァシュロン。

  彼が、魔素魔力をつくっては霧散させる度に、その精霊たちが興味ありげに近づいて行く。


  その状況を見て私は『ヴァシュロンが精霊契約を成す条件は既に揃っている』と考えたのだ。



「殿下。精霊契約、してみましょう」


「え……ええ!?出来るのですか!?でも僕、精霊様が見えませんけど……」


「クスクス私も精霊が見えないまま精霊達と繋がりを持ちましたもの。きっと大丈夫ですわ」



  実は事前に翡翠、白妃、希闇には相談しておいたのだ。



 ****


  白妃には日中のうちに声をかけて、就寝前にベッド脇にランプを灯しておいき精霊達と話し合いをした。



(皇城に水風光土の精霊が居るじゃない?)


『まぁ、風の仲間は風さえ通ればどこにでも居るし!水もある土もあるし!』


『光の精霊は日差しのいい所を好む上、宝飾の輝きや貴族の装いも好きですからね』


(え?光の精霊が居たのはそんな理由だったの?)


『まぁ、心優しい者を好むところもあるので、城で出入りするような貴族達と契約しようなんて思いませんけれどね?』


(アイドルを追うけれどアイドルと結婚したいわけではないファンの女の子みたいな感じね……)


『あいどる?ふぁん?そもそも結婚なんて概念があるのは、人間くらいですわ』


『話が見えない』



  希闇の冷静な一言で脱線していた話を元に戻す。



(んん。そうね。私が魔力操作や魔法指導しているヴァシュロンの事なのだけれど、最近その城の精霊達が彼に興味ありげに近づいていくの)


『あの子、フィリーと同じで魔素を固めて撒くでしょ?そりゃ気になるよ〜』



  翡翠の言葉に白妃と希闇も同意して頷く。



(そっか……目立つ行動をとっていたからって事か……)


『それがどうかしましたの?』


(うん……ヴァシュロンが精霊契約できないかなと思ったのよ)


『出来るんじゃない?』


『フィリスと同じように彼らに自身の魔力をあげれば喜んで契約すると思いますわ』


『あの者の魔力濃度であれば充分だろう』


(私と同じように?自分の魔力を圧縮しては霧散させるのを延々と自室で?)


『違う違うっ!普段私たちに魔力をくれるように手のひらに濃厚な魔力をのせて差し出すだけだよ!』


『フィリス……帝都に魔物が押し寄せて来ますわよ?』


『冗談で済まぬな……』



 ****


  そんなわけでヴァシュロンが精霊契約に成功するであろうことは翡翠達のお墨付き。


  私は、ヴァシュロンを連れて光の精霊をよく見かける湖畔へと足を運んだ。



(何度見ても綺麗な湖よね……)



  水底まで見えそうなほど美しい湖は、ヌシタリス宮を写し出しながら、波が揺れる度に陽の光でキラキラと輝く。


  光の精霊達はその湖畔の輝きがお気に入りで、今も波で陽の光が水面に輝く度、その湖面の光と戯れている。


  当然、湖畔には水の精霊も居る。

  なので、この湖では水と光の2種類の低級精霊を見ることが出来た。



(水の精霊か……私も水の精霊と契約してみようかしら)

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