2、陛下の召喚理由
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「故に、城の中ではヴァシュロンは光の精霊王と精霊契約を交わしており、契約に従って癒しの光はもたらされた。そう噂されておるのだ」
こんなにも早急に皇城に召喚されたのは、第二皇子ヴァシュロンが光の精霊王と契約を交わしたという噂の真偽を知るためだったようだ。
「そなたの精霊達に聞けばわかるだろうと思い急ぎ呼び立てた。尋ねてみてはくれぬか?」
「あ……えと」
「フィリス、了承できるだろう?そのくらい即答なさい」
登城の緊張で言い詰まっていると思った公爵に窘められるが、私の心中は荒れていた。
(陛下はなんて答えて欲しいのかしら?皇子は光の精霊王と契約を交わせて良かったですね?いやいや嘘だし、嘘言ったら処刑されちゃうわよ!あああ……)
私が斜め上を見たり、斜め下を見たり、考え込んだり、頭を抱えたりと奇っ怪な動きをしてしまっているが、当の私は気付いていなかった。
ポンッ
いきなり、考え込んでいる私の肩に公爵が手を置くので驚いて肩を跳ね上げた。
「フィリス……?この件にお前が関わっているようだという事はよくわかった。全て正直に話しなさい」
「ふぇ!?」
(なぜわかったの!?声には出していなかったはずだと……)
「あー……考えが口に出るとはよく聞くが、行動に出るというのは初めて見たな」
「申し訳ございません。陛下」
陛下が私の無意識的奇っ怪行動にそのような感想を述べて、公爵がすぐに謝罪した。
それでようやく、考え込んでいる間に変な行動を取っていたらしいと知った私は、耳まで赤くなった。
「もうしわけ、ございません……」
「して、話してもらえるのか?フィリセリア嬢」
「ええと……端的に言えば、光の精霊王と思われている発光の正体は私の治癒魔法です……」
二人とも私の返答が想定以上のものだったようで驚きに固まった。
この光の精霊王事件に私が少なからず関わっているとは思っていたようだが、光の精霊王の正体そのものだとは思っていなかったようだ。
「……なぜ、ヴァシュロンの部屋の外に居たのかはあえて触れぬ。癒しの光の効果は城全域に及んだと聞いているのだが?治癒魔術と違い、治癒魔法とはそれほど広範囲に渡って効果を発揮出来るものなのか?」
「あはは……ええと、その……城周辺の魔素を全部掻き集めて、それを魔素魔力にし治癒魔法にあてましたら思いの外、効果範囲が拡がってしまいまして……」
「城周辺の魔素を全部……なるほど、それ故か」
「あの……魔素が無くなって何か不都合が?」
誰も活用しようとなどしない魔素ならばどれだけ集めても問題ないと思っていたのだけれど……?
「そのように心配そうにせずとも良い。城内にある全ての庭園の植物が萎れただけだ」
「っ!それは……申し訳ございません」
城全域に治癒魔法の光が満ちた折、城内の花々は萎れ、木々はその葉を散らしたらしい。
どんな生き物であっても魔素を吸っているが、植物にとってはそれが顕著だったのだ。
もしかしたら、厩舎の馬などにも影響が出ていたかもしれない。
(魔素を使い尽くすようなことをするのは危険ね。気を付けなくては……)
「なあに、翌朝には元に戻っていたのだ。なんの問題もない。城内では、城の植物達がヴァシュロンを哀れんで命を分け与えたのだと噂されておるがな……」
「だいぶヴァシュロン皇子が神聖化されているような気が致しますが……」
「……既に光の精霊王と契約を交わした神々に愛されし神子だなどと認知されかけておる」
(随分な大事になってしまっているわっ!)
実際は私が暴走をしただけなので、ヴァシュロン皇子はそんな存在ではない。
なんの特別な力も無いし、そんな大層なものと契約などしていないーー。
「ヴァシュロン皇子は否定なさらないのですか?」
ヴァシュロンには何一つ身に覚えがないのだから本人が否定しそうなものだ。
本人が光の精霊王と契約を交わしてなどいないし、神々に愛されるような覚えもないと訴えれば……と思ったが、そう簡単なことでもなかった。
「無論、本人は否定していた。だが、ダビッドではなくヴァシュロンを次期皇帝にと考える貴族達が噂を大きく広めてしまってな」
「第二皇子派の貴族達……ですか」
「そうだ。ヴァシュロンがまだお披露目前である為、人前に出て弁解する事が出来ないのをいいことに大事にしてしまったのだ」
「なるほど……あの、実際のところは今お話した通りなのですが、陛下はどうお考えなのですか?」
実際はヴァシュロンにはなんの力もないが、既に噂は城内に拡がってしまっている。
恐らく、城を出入りする貴族から他の貴族にも……もしかしたら城が光っていたのを見ただろう城下の者たちも何かしら噂しているだろう。
そして、それを広めたのはヴァシュロン皇子を皇帝に仕立てようとする貴族達。
(うう……私があんなに光らせたりしなければ城内にいた者達に箝口令を敷いて簡単に事を収めることが出来たのだろうけど……)
私がやってしまった事を後悔し始めた頃に、私の質問の答えを考えていた陛下が口を開いた。
「そうだな……落とし所としては、光の精霊王ではなく、気まぐれに集まった光の精霊達が力を貸した。そして、光の精霊達だけでは力が足りず、彼らは草花から力を吸い上げそれも回復の力に充てた。という所か」
「光の精霊王ではなく普通の精霊達ならそれほど問題にはならないと……?」
「まぁ、精霊達に気に入られ精霊契約をしているものは目の前にもいるからな。精霊王と契約を交わした伝説的精霊魔術師よりは精霊に愛される精霊魔術師くらいの方が大事にならんだろう」
「そうですね。珍しいとはいえ精霊魔術師は普通に居るんですし……」
「うむ……そこで、フィリセリア嬢?」
「はい?」
私の名を呼びながら笑みを浮かべる陛下がなんだか怖いんですが……何でしょうか?
「今回の事、そなたも関わっていた以上、もちろん事態の収拾に協力してもらえるな?フィリセリア嬢?」
「は、はいっ!もちろんです陛下!」
(誠心誠意努めさせていただきますっーー!うう……笑顔の陛下、すごく怖いですわ)




