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1、帝都への帰還

第3章になります!

「お帰りなさいませフィリセリア様」



  行きの時と同じく、公爵邸の使用人達とお父様、お母様が玄関ホールに揃っていて、私の事を出迎えてくれた。


  お母様の腕にはーー



「ファディール……?」


「ウホンッ」



  つい、お母様の腕に抱かれるファディールが気になって名前を呟いてしまうと、お父様が咳払いで『挨拶が先だ』と圧をかけた。



「あっ……ごめんなさい。ただいま帰りました。お父様、お母様」


「ああ」


「クスクス。気になるわよね?ほら、ファディールよ。大きくなったでしょう?」



  私の記憶ではまだ首が座っていなかったファディールは、すっかり首が安定していて表情も出ており、不思議そうな目で私を見ている。



「最近はお座りが出来そうな様子なの。今度、会いに来てあげてね?」


「はい!お母様。ファディ、私会いに行きますからね?」


「アウア〜」



  私が声をかけながらほっぺに触ると返事のような声を上げてファディは笑った。



(可愛い……笑うようになってるわ!)



  ファディの笑顔につられて私の頬も綻んだ。


  でも、私たちのほのぼのした触れ合いタイムは長く続かず、公爵が私に声をかけた事ですぐに終了した。



「フィリス」


「はい。お父様」



  公爵の呼びかけに私は姿勢を正して応えた。



「領地でどんな様子だったのか知りたいところなのだが……急ぎの用がある」


「そうですか……お父様はいつもお忙しいですから……どうかお身体にはーー」



「急ぎなのはお前もだ。皇城にお前も呼ばれている。すぐに支度をしてくれ」



  公爵はとてもお忙しいから、すぐに皇城へ戻らねばならないのだろうと思い、体の心配をするとそれを遮られた。

  そして、私も急ぎ皇城へ行かねばならない為、登城の準備をしろと言う。


  公爵邸に帰って早々、皇城へ呼ばれて?


  皇城の騒ぎが呼び戻された原因かもしれないとは思っていたが、そんな急な話だとは思っていなかった。


  しかし、皇城からのお呼び立てとなれば急ぎ支度をせざるを得ない。

  私は急ぎリリアに皇城行きのペールオレンジ色の冬用ドレスに着替えさせてもらった。



 ****


  ヴァシュロンを救いたくて皇城に忍び込んだ時を抜きにすれば、皇城を訪れるのはこれで二度目。


  けれど、何度来ても皇城で緊張せずに居られる自信はない。

  豪華さでは帝都内の宴会用屋敷も華々しいのだろうが私は行ったこともないし、城の内装が豪華絢爛だから緊張するというのもあるが……。



(何よりも皇城は空気がピリピリしていて苦手なのよね)


 

  皇城にいる間は気を弛めることが出来ない。


  私は、今こんな事を頭では考えている間も表情は余裕を持った笑みを浮かべ続けている。



(皇城には上級貴族があちこちに居る。公爵家のものとして落ち度がある所を見せることは出来ない)


「レストルーチェ公爵、並びに公爵家ご令嬢フィリセリア様。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」



  私達は、城の者に案内され城内を歩く。


  たどり着いたのは、初めて来た時も訪れた応接間だった。



(公的なお呼びではないのね……。まぁ、お披露目をしていない私を公的には呼び出せませんものね……)



 ****


  私達が応接間に案内されてから10分程で、陛下はお越しになった。

  私達が案内され待たされたのは、例の盗聴防止魔術具のテーブルだ。


  陛下が椅子に座るなり、テーブルへ手を置いた。


  私達もそれを合図にテーブルへ手を置き、それを見た部屋に居たものは、何も言わず護衛だけ最低人数残し、みな部屋を出た。



「まずは、急な召喚に応じた事に感謝しよう。フィリセリア、君に尋ねたいことがあって呼び立てたのだ」


「なんなりとお尋ねください」



  陛下は、既に私が魔法士であり精霊魔法士である事もご存知だ。


  それらを説明に使っていいなら、ヴァシュロンの解毒についてちゃんと答えられる。


  そう思って『なんなりと』なんて言ったのだが、陛下の尋ねごとは思っていたものと違った。



「ヴァシュロンが光の精霊王と精霊契約を交わしたというのは真か?」


「………………へ?」


(え?ええええ?いつの間にそんな事になっていたの?真か?なんて言われても知りませんわよそんなこと!)



  私がなんの事だかわからず内心パニックになっていると陛下は落胆したようなため息を吐いた。



「そなたでも知らんのか……。先日、ヴァシュロンが部屋仕えをしていた侍女に致死毒を盛られた。その時、光の精霊王がヴァシュロンの部屋の外に現れその毒に侵された身体を癒したのだ」


「へ、へぇ……」


(……なんだか身に覚えがあるような気もしなくもありませんわ)


『フィリーのやったやつだね〜』


『間違いなくあの件だと思いますわ』


(2人ともいつの間に……)



  いつの間にかに傍らにいる翡翠と白妃が、揃って私がヴァシュロンを解毒した時のことで間違いないと言う。



「その光は皇城全域を癒しの光で満たし、ヴァシュロンのみならず皇城に居た全ての者に癒しをもたらした。だが、ヴァシュロンの部屋の外で癒しの光が放たれた以上、癒しの目的はヴァシュロンの解毒であって他はついでであったことは明白である」


「そ……うですわね。ヴァシュロン皇子の居室傍が癒しの光の発生源ならば、きっと皇子を回復させて差し上げたかったのですね……」


「故に、城の中ではヴァシュロンは光の精霊王と精霊契約を交わしており、契約に従って癒しの光はもたらされた。そう噂されておるのだ」



(あああ……私のせいで、ヴァシュロンが光の精霊王と契約を交わした伝説的精霊術師扱いになろうとしているって事だわ!)

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