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33、騎士団の魔力操作訓練1

総合評価1,000突破ありがとうございます!

m(*_ _)m

御礼を込めて2話連続投稿しようと思います。

  即死毒に侵されたヴァシュロンの治癒を行い、加減を間違えて大事を起こしたとはいえ夜の事だった。

  そのため翌朝に領地まで情報が回ることは無いだろうと思っていたが……もう、あの日から3日も経っている。



(その日の午前にあった事件を午後には知れる情報網があって、あの騒ぎの噂が少しも聞かれない?それとも、皇家が緘口令でも敷いたのかしら……)



  なんにしてもあの件に関してなんの音沙汰もない。


  あの件の翌日には、いつ故郷に帰るかも分からないという事をカルに伝えて冒険者業をこなし、その後2日は騎士団を相手していた。


  以前、ビエラを護衛として連れ出す時にレストルーチェ騎士団員達と約束した身体強化の訓練を手伝うというもの。


  帝都にもう危険は無いと確認が取れれば、すぐにでも帝都へ戻るように公爵に言われてしまうかもしれない。


  今、約束を守らないといつまた領地守衛のレストルーチェ騎士団に会えるか分からないと思った私は、急ぎ騎士団の身体強化訓練を始めた。



 ****


「皆さんよろしくお願いします。えっと……私は自分の魔力を全身に均等に行き渡らせてそれを維持して身体強化としているのですけれど……」


「そこまでの身体強化が可能なのはお嬢様くらいかと思います……」



  騎士団の身体強化訓練でまず躓いたのがここだった。


  魔力操作を全然訓練できていないという事。


  騎士団員は皆、簡単な魔術は使える。

  しかし、魔術は魔法と違って魔力操作をあまり必要としない。

  魔術は、魔法陣に出力、属性、方向性、形状など様々な情報を描き込んでおき、そこに必要量の魔力を流すことで魔術を発動するもの。

  魔力操作の内容は魔法陣に描き込まれており、自身で魔力操作する必要が無いのだ。


  簡単に表現するなら、魔術はあらかじめ誰かが描いてくれた絵に決められた色で色塗りするだけの状態。

  魔法は、一から絵を描き色塗りも自分で色を考えながら行う状態。


  簡単な絵に赤と緑だけ、青と水色だけ色塗りできるという状態の者が、いきなり筆を渡されて自由に描けと言われてもまともな物は描けない。


  身体強化は、魔法を使うほど魔力操作が難しくは無い。

  だが、簡単な魔術しか使ったことが無いような者には、難し過ぎるだろう……。



「魔力操作の訓練をまずはしましょうか」


「魔力操作の訓練?我々は、魔術士では無いのですが……」



  私が魔力操作の訓練をすると言うと、一人の騎士がそう答える。

  他の騎士たちも同感のようで、口々に魔力操作なんてするくらいなら剣を振る方が身体強化を身につけられるだろうなどと言っている。



(魔力操作は魔術士達がするものであって騎士がやるようなものじゃないとでも思っているようね?)


「だから全身身体強化が使えないのでしょう……。全身身体強化は、自身の魔力を操作して全身に行き渡らせる事で使えるものです!魔力操作が必須訓練なのは当たり前でしょう!」


「しかし……体づくりが出来ていなければ身体強化は使えないのでは……?」


「だったら私は何ですか?私がはじめて身体強化を使ったのは四歳の誕生日でしたが?」



  その言葉にそれまでザワザワと批難の声を上げていた騎士たちが全員絶句し、押し黙った。

  日頃の訓練の手合せなどを繰り返すことで完全に、私を子どもとは見なくなっていたのだろう。

 

  私はそれ以上批難の声が上がらない事を確認すると訓練をはじめた。



「自身の魔力をできる限り取り出し、それを圧縮してください。それが限界まで出来たら次の訓練を行います。見やすいように水の玉で表現して見せますね」



  私は魔法で訓練場が覆えるほどの水玉を創り、それをみるみる圧縮していく。

  そして、圧縮していくにつれて水は氷へと変化し、それをさらに圧縮していく。

  最終的には、これ以上無いほど密度を圧縮された氷が出来上がり、質量のやたらある氷の塊が出来上がった。

 

  出来上がった氷塊を落とすとゴッという鈍い音がする。

  それはもはや、脆い氷などではなくまるで金属塊のようだった。


  騎士たちは、それを見届けるとまるで人知を超えた存在を見るがごとく私を見た。



「同じ事を自身の魔力で行って下さいね?」



  騎士達が各々で魔力操作訓練を始めると私は途端に暇になってしまった。

  魔力は目に見えないし、他者の魔力を正確に感じるのは難しい。

  魔力探知は、個体別に認識可能だが細かな魔力の動きなどは捉えられないのだ。



(でも、あの眼鏡さんは魔力を見る事が出来るのよね?)



  副ギルド長の事である。


  彼は、冒険者登録の折お世話になったが、その時「見えるんですよ……。あなたの内包する魔力がその歳では考えられない程に濃縮されとても濃く渦巻く様子が見えるのです」と言っていた。


  彼固有の能力かもしれない。


  だが、もしそれと同じことが出来れば、この魔力操作訓練はさらに精密なものに出来るだろう。



(試す価値は十分にあるわ。うーん。見える……か。魔力探知みたいに感覚として捉えるのとは違うわけよね?眼に何かすればいいのかしら……)



  試しに自分の眼に魔力を覆ってみるが、特に変化は無い。

  次に眼に身体強化をかけてみるが……視力が異様に良くなり、青空の向こうに星の輝きらしいのが見える……。



(魔力を眼に纏わせたり身体強化かけたりするのでは駄目みたいね……。あと出来ることは……)



  ふと、副ギルド長の事を思い出した。



(あの人、眼鏡似合いそうなのに付けていないのよね……。眼鏡……色眼鏡?わざと見えるように細工する魔法が創れれば……)



  わざわざ眼鏡の形にする必要は無いだろうと思い、カラーコンタクトのイメージで魔力を見られる媒体を思い描く。


  両目を閉じ、魔力を目元に集めて形作り魔力を魔法で創造する。


  閉じていた両目をあけると、今まで見えなかった光が騎士たちの周囲に見えるようになっていた。



(あれが魔力!へぇ〜……あっ)



  眺めているとほとんどの騎士たちがほぼ透明な薄い光しか纏っていないのに対し、一部の騎士たちは少し色の付いた光になっているのがわかった。



(あれが、魔力が強いかどうかという事かな?魔力濃度?じゃあ……既に全身身体強化を使えるビエラは……)



 ビエラを見つけると、彼女は見事に朱色の光を纏っていた。



(……綺麗。ふふっ流石ビエラは優秀ね)



 ビエラの手元には既に濃い臙脂色にまでなった魔力の塊がある。

 


(なるほど、あのくらい魔力操作が出来ていれば全身身体強化可能だって事ね。なら……一部の色つき騎士さんたちも頑張ればすぐにでも習得出来るんじゃないかしら?)



  訓練の目処が少し立って嬉しくなった私は、自分の瞳が魔視の力を得てどんな色に変化しているのかなんてまるで気にしていなかった。

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