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7、4歳の誕生日と魔法3

  暖色の庭で魔力の活用を試して自室に戻ると、案の定リリアがそわそわしながら待っていた。



「あっフィリセリア様、よかった……お戻りになられたんですね」


「うん、ただいま。庭の花は変わらず綺麗だったわ」


「心安らげたようで何よりです。それで……あの、旦那様が……」


「お父様?」



  どうやらそわそわしながら待っていたのは単に私の帰りが遅いのを心配した訳では無いようだ。

  だが、父様は今日も皇城務めの日で昨日も一昨日も屋敷には帰ってこなかったはずである。



「はい。先程、皇城から戻られましてフィリセリア様と夕食をお取りになると仰せなのです」



(まさか4歳の誕生日だから?いやいや、5歳の誕生日以降でないと祝う風習は無いはずよ?それにそんな事を気になさるような方じゃないもの……)



  貴族の子どもは身代金目当ての人攫いにも親を殺して子どもを庇護する事で遺産を得ようとする意味でも狙われやすい。

  そのため親族以外には知らせず、祝いも行わないのが恒例だ。


  ただ祝いの席を設けるだけでも何かあったのかと勘ぐるのが貴族社会というものだからである。



「食事の席を共にとなるとこの格好ではなりませんね」


「はい。庭の散策へとの事でしたのでお召し替えをせねばとお待ちしておりました」



  私は、リリアがそわそわしながら待っていた理由を知るとすぐさまドレスを新しい物に着替え、食堂へと向かった。



 ****


  食堂へ足を運ぶと、公爵は既に到着していたようで1人席に着いていた。



「お待たせしました。お父様」


「かまわん。ところで、ファリシアが食欲が無く夕食の席には出られないとの事だがいつもの事なのか?」


「はい。お母様は近頃、体調がよろしくないので食事の席にいらっしゃらないことの方が多いです」


「……そうか」



(やはりお父様もお母様の事は気にかけていらっしゃるという事かしら……)



  そのような会話をしている間に給仕によって2人分の食事が並べれられはじめた。

  見たところ普段と変わりない食事が並べられているようだ。


(やはり、誕生日だから特別にという訳では無いのね……。ううん、ガッカリするなんて変よね。たまたまお父様の気まぐれと私の誕生日が重なっただけよ)



  全ての食事が並んで夕食が始まってすぐに公爵が目線を向けないまま私に話しかけてきた。



「食事をしながらで良い、フィリスに話がある」


「なんでしようか?」


「単刀直入に聞こう。なぜ、外してはならぬと知りながら収魔のブレスレットを外す?」



  心臓が跳ね上がり、私は思わず食事の手を止めた。



「一人でいる時に限り外すのだから外してはならない事はよくわかっているはずだが?」



  私はバクバクと鳴る心臓を無意識に左手で抑えた。



(確信を持っているようなお声……どこかで見られていたの?嘘をついたらより叱責を受けるだけだわ……)



「お披露目前の子供だ。屋敷の庭とはいえ一人で出せるはずが無かろう。夜も影の者を護りとして控えさせている」


(!!そんな事、知らなかった……。でも、そうね。警戒してお披露目をせず、周囲に知らせない貴族の子供を自由にしておけるはずがないわ)



  私は気持ちを切り替え収魔のブレスレットを常時外していてよい許可を得るには、今話すしかないと考えた。


  胸を抑えていた左手を胸から離し、スカートを握るように両手を固めて公爵の方に顔を向ける。

  だが、公爵はこちらに顔も向けず先程と変わらず食事を続けていた。



「……お父様。私は、収魔のブレスレットを外して魔力操作の訓練がしたいのです」


(本当は魔力操作は既に出来る。けれど、ブレスレットを時々外しているところしか見られていないなら魔力操作を既に身につけているのは不自然だわ)



「フィリスは文武両道を目指しているのでは無かったのか?報告で勉学は今まで通り遅れもなく、体を動かす事も継続して行えていると受けている。その上で魔術も身につけ始めたいと?」


「そうです」


「今まで通り遅れを出さずにできるのか?」


「勉学や運動の傍らで魔力操作の訓練をと考えておりますので、遅れは出ません」


「随分と確信を持っているように答えるのだな?」



  そう言われて私はビクリと跳ね上がりそうになったがとどまった。



「できます!やらせてください」


「ックク。本当によくやるもんだ。良いだろう。収魔のブレスレットを外しての魔力操作の訓練を認める」


「あっありがーー」


「だが、対外的に収魔のブレスレットを外して過ごすのを見られるのは良くないのだ。今つけているブレスに似せた偽物を作らせる。それまでは外しての訓練は諦めなさい。誰に見られるかわかったものでは無い」


「わかりました」



  まさか公爵がこんなにも協力的だとは思わず目を丸くしながら信じられない思いと嬉しさで私は固まり続けた。



「それと、魔術士をつけよう」


「魔術士……ですか?」



  魔術を使うだけなら平民でも貴族でも誰でも出来る。

  ただ、魔力総量は血筋によるところが大きいため貴族くらいしか魔術を使わない。

  平民では魔力総量が少なすぎてこれといって魔術が使えないからだ。


  その中でも魔術士は、特に魔力総量が多く魔力操作の上手い人。

  魔術のベテランな人達だ。


  ちなみに多くの人に尊敬される程、魔術の扱いが長けていて弟子を持っているような人は魔術師と呼ばれる。



「魔力操作を訓練するというなら魔術を扱えるようになりたいのだろう?魔力操作のみで満足するのではあるまい。なら、魔術を使う時に監督出来るものが居た方がいい」


「ありがたいことですが……魔術士様はお忙しいのでは?」



  魔術士は貴族の中でも特に選りすぐりの魔術特化な方々。

  魔術兵や魔術研究所職員、魔道具士、魔薬師などの仕事を他の職種から見れば多くはない人数で行っており、とても忙しいはずだ。



「なんとでもなる。魔道具士、魔薬師は常に忙しくしているが魔術研究所は今、急ぐ課題は無い。魔術兵も今行っている魔物退治が済めば一段落だろう」


(さすがお父様、主要部署の動きは全てご存知という事なのでしょうね……)



「すぐにとはいかないが魔術士は呼んでやる。それまでは勝手に魔術を使おうとするな。偽造ブレスレットが出来てからもだ。いいな?」


「はい!お父様。ありがとうございます」



  公爵は食事を終えそのまま席を立った。


  私は、話に集中していて全く進んでいなかった冷めた夕食を急いで食べる。

  魔法の訓練を公爵の公認でできることに気持ちがうきうきしているからか冷めた夕食はとても美味しく感じた。

続きを読み続けたい応援をしたいと思っていただけた方。

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