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27、装備を揃えに1

  カルとラズベリーに出会ってから1週間、私は毎日ビエラを連れて冒険者ギルドへと通いカルを連れて三人で依頼をこなしていた。


  カルはGランク依頼の薬草詰みに、私は魔物討依頼を受けて森に入るのだ。



「フィルが魔収納使えるようになってからはほんとに依頼が楽になったぜ!」


「僕もそれは自分で実感してるよ」



 ****


  カルとラズベリーに会ったあの日、シャルトウルフの討伐品を街まで運ぶのが大変だった為、帰ったその夜にこっそり部屋を抜け出した。


  私が向かったのは無人の訓練場。



(ここなら魔法が多少失敗しても室内でやるよりは被害も少ないよね?)



  私は、収納魔術を知らないので、魔収納を魔法で再現してみる事にした。


  精霊達から魔収納のことを聞いた時、翡翠が『あれは闇じゃなくて自分の魔力にしまうの〜』と言っていたはずだ。


  私は、自身の魔力を取り出し闇収納のように魔力を固めてみる。



(これだけじゃ普段の魔力操作訓練と変わりない……さらに何かしないとなんでしょうね)


『ふむ』



  いつから居たのか希闇が私の右肩に乗りアドバイスをしてくれた。



『闇収納は闇で取り込むだろう?魔収納なら自身の魔力で取り込むのだ』


(希闇……夜はどこも影だらけだからっていつの間に……。魔力で取り込む……か)



  私は、手頃な取り込んでも良さそうな物を探して周囲を見渡し、花壇の花を一輪詰んだ。

  そして、今度はしっかりと対象物である花を自分の魔力で取り込むイメージをする。



(仕舞い込む……取り込む……。固形のゴミを掃除機がシュポッて吸い込むみたいな?大きい面積のものが小さくなって納まっちゃう感じ……)



  私が左手に持っている花に、右の手のひらをかざして自身の魔力で取り込むイメージをすると……。



(出来た……のかな?これで合ってるの?)


『大丈夫だ。それが魔収納であっている。取り出せるか?』



  私は希闇に言われて次はさっきの花を自分の魔力から取り出すイメージをする。



(出す……ドライヤーみたいにボァッて吐き出す感じで……)



  私がイメージを保ちながら右手をかざすと、魔収納に仕舞ったさっきの花が右手から飛び出して、ひらひらと地面に落ちた。


  ……手から花が……なんか、手品みたいになった。



『成功だな。魔収納はそれで大丈夫だ』


(うん……。ありがとう、希闇)



  こうして何だかちょっと締りない感じだったけれど、あの日のうちに魔収納は習得したのだ。


 ****


  魔収納を使えるようになってからは、依頼の討伐品は私の魔収納に仕舞って運ぶようになった。

  手持ちで運び帰るのはカルの依頼品である薬草だけなのでとても移動もとても楽。

 

  本当はカルの薬草も運ぶと申し出たのだけれど、魔収納は容量が限られているのだからこの程度の事で頼れないと毎度、断られてしまう。



  冒険者として依頼を遂行する時に出し惜しみする事は危険だと学んでからは、隠すのを諦めビエラにも魔術が扱えることは伝えた。


  公爵家及び、騎士団には魔術の事を伏せて欲しいとお願いしてあるが、今のところお願いした通り黙ってくれているようだ。


  ビエラ曰く「お嬢様の身の安全が確保されることが最優先です。私の前ではお気になさらず実力を出してくださいませ」との事だ。



「フィルは本当にすげーな。Cランクの魔物を難なく倒すし、魔収納にじゃんじゃん仕舞えるし……一日の収入だいたい金貨100枚はいくだろ?」


「まぁ……ね」



  すでに私の所持金は金貨900枚を超えている。


  冒険に出る際に街で昼食を買っていく以外にお金を使う事がなく、買う昼食も銅貨5枚も出せば贅沢なものに出来る。

  使う機会の無い所持金は膨れ上がるばかりだ。



「そろそろ武器防具を新調しろよ。はじめて会った時のまんまじゃんか」


「武器防具か……そうだね」



  カルは私が金貨30枚を渡したあの日に、即決で胸当て等防具各種とコート、新しい剣を新調した。

  装備だけ見れば本登録の冒険者のようだ。


  私は、髪色を誤魔化せる藍色の防具が無かったため防具も購入せず。

  今のところ剣も問題なく使えていて、わざわざ新調する必要も無いかと思い購入していない。



「フィル坊来てくんないかな〜ってラズベリーさん言ってたぜ?なぁ!これから行かねぇ?」


「これから?」


「いいと思いますよ。武器も防具も身を守る大切な物です。フィルは軽装過ぎますから、森へ行く前に整えましょう」



  三人でいる時はあまり口を挟まないビエラがそう言うので、私達は武器防具屋ナバラーズへ向かった。


 ****


「ラズベリーさ〜ん」


「おやおや!やっと来たのかいフィル坊!来るのずっと待ってたのよ〜」



  店に入り声をかけると、棚の武器を手入れしていたラズベリーさんがすぐに反応して近付いてきた。



「どうだい?かなり貯まっているんじゃないのかい?もう、すっからかんになるくらい買ってっておくれよ!」


「さすがにそれは」



  盛大に買い物をして無一文になってくれというラズベリーさんに苦笑しつつ、私は今回来店した目的を伝える。



「ラズベリーさん。僕も一通り装備を見直そうかと思って来たんだ。武器も防具も新調しようと思うんだけど……どう?藍色の防具はある?」


「クスクス本当に藍色が好きなんだねぇ〜。あるよある。言われていたからちゃんと用意しておいたさ。今、持ってくるよ」



  そう言ってラズベリーは店の奥へと入って行った。


  店内に並べられている品を眺めながらラズベリーさんが戻ってくるのを待っていた。

  しばらくして、ラズベリーが色々なものが詰まった重そうな木箱を持って戻って来た。



「うんしょっと……さぁ、見てもらおうかね!」



  ラズベリーは、持ってきた木箱から次々と商品を取り出した。


 藍色リザードマン皮の革服が丈違いで二つ

 黒の普通の革服が丈違いで二つ

 藍染のコートが丈違いで二つ

 黒の革ズボン二つ

 藍の革ズボン二つ

 肘当て膝あては黒の普通の物

 靴は黒皮の物と藍染の革の物各一つ



「す、すごいね……」


「もぅ、色指定だけして何が欲しいとは言わないもんだから片っ端から用意したわよ!一応、上から下まで藍色一色に出来るように揃えてはあるけど……」


「いや、さすがに全身藍色になりたいわけでは……。ズボンと靴は黒でいいかな」


「あら、上半身は完全に藍色でいいってこと?わかったわ」



  ミラージュヘアを完全に藍色に染めるためなら肩周りまで藍色に統一していれば充分だ。

  コートが藍色なら髪を後ろに垂らしていても完全に藍色を写したままで居られるし問題ない。



「じゃあ、革服、コートが藍色。ズボンと冒険者靴が黒ね?丈は長いの短いので用意してあるけど両方買う?」


「はい買っておきます」


「うふふ。金額も聞かずに即決なんて随分余裕がありそうね〜。まぁ、とりあえず試し着してみてちょうだい!」



  そう言われると金額が気になるが……ひとまずラズベリーに勧められるまま更衣室へ向かった。


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