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25、武器屋と討伐品の収入

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「んじゃ、これが順番札な?この量だからなぁ……まぁ、他の査定仕事もあるんで一時間ぐらい時間潰して戻って来てくれや」


  シャルトウルフの討伐収集品を買取カウンターに居たシゲさんに渡すとそう言われた。


  そうは言われてもこの依頼でお金が入らなければ、手持ちのお金が無いので特に買い物に行くこともギルド食堂で食事する事も出来ない。


  正確には公爵家から私のお小遣いは出ているのだが、私は自分の冒険に家のお金を使う気は一切ないのだ。



「なぁ、一時間だろ?ただ待つのもつまんないし店見に行こうぜ?」



  じっとしてられない性分なのかカルディナールがそう言う。



「店を見にって……この依頼で収入得ないとお金無いんだよ」


「金なくたって店見るくらい出来るだろ?どうせこの後、収入が入るなら完全な冷やかしでもねーんだし」



  ウィンドウショッピング……その概念は無かったなぁ。

  貴族の家に産まれてから、店は必ず何か買うために呼びつけるものになっていた。

  そのせいで、店に行く場合も何か買わなくちゃいけないと完全に思い込んでた。


  まぁ、店側は冷やかしに合うの嫌だろうけどカルディナールの言う通り完全な冷やかしとも言えないと思えば……。



「行きたいかも」


「んじゃ行こうぜ!俺、武器屋見に行きたい!!武器屋なら見るだけでも楽しいからな!」


「僕も見たい!」


「すっかりフィルはカルディナールとお友達ですね?」



  終始、私達のやり取りを一歩下がって眺めていたビエラがそんな事を言った。



「ふぇ!?カルディナールとは会ったばっかで……」


「んだよ。会ったばっかでも友達になれば友達じゃないのか?俺はお前が良ければ友達でいいぞ?恩人でもあるけどな」


「友達……」



  カルディナールと友達になるとしたら下街ではじめての友達。

  平民としてもはじめての友達だ。



「友達にフルネームで呼ばれるのも変だな。俺のことはカルって呼べよ。フィルは……フィー……ルー……ん〜そんままでもいいか」


「うん!カル!」


「よし!行くぞフィル!武器屋ならこっちだ!」



 ****


  カルに案内されてきたのは、下街探索の時にも見かけた石造りの壁の武器防具屋さんだ。

  奥で武器を作っている最中なのか建物の奥の方でカンカンと槌を打つ音がする。



(街探索の時は結局、冒険者ギルドにしか入らなかったから下街のお店に入るのはこれが初めてね)



  カルが扉を押し開けるとドアに付けられているベルがカランコロンと鳴った。



「はいはい。いらっしゃい。ってまたあんたかい?無事に冒険者になって稼ぎを持ってきたのかい?」


「ゔ……冒険者にはなれたけど稼ぎはまだ……。けど!すぐに稼いでやるさ!」


「なんだい、また冷やかしかい。いいよいいよ。好きなだけ見て、気に入ったのを買うためにうんと稼ぐんだよ?……おや?後ろにいるのはカル坊のお連れさんかい?いらっしゃい」



  棚の整理をしながら出迎えてくれたのは体格は細身なのになんだか威勢のいいベージュの癖髪を片側に結んだ焦げ茶の眼をした女性だった。


  奥で槌を振るっているのは別の人のようで槌の音は変わらず奥の方からカンカンと聞こえてくる。



「あの……僕もまだお金が無いんですが……」


「いいさいいさ。カル坊に言った通りさ。武器屋なんて金無しで見に来て、それから気に入ったのを買うために稼ぎに出る。だいたいそんなもんさ。好きに見ていきな?」



  私は彼女の言葉に甘えて、棚や壁や樽なんかに並べられている武器を端から見ていった。


  棚には長剣から短剣などが並び、壁には高そうな装飾まで細かい剣や大きい斧や槍が並んでいる。

  樽にはちょっと古そうな剣や槍なんかがごちゃっと詰まっている。



「ここにあるのは?」


「武器は新しいのを買うと持ち替えるからね。古くていらない方は下取りするのさ。それを手入れして安く売る。初心者なんかはそんなんでも充分だからねえ」



  樽に入っている武器はどれもちゃんと手入れし直されていてそこまで状態は悪そうに無い。



「結構、状態良さそうだけど……」


「まぁ、よほど状態の悪いもんは溶かして製鉄し直しちまうからね。下取りの直しもんと言えどちゃんと使える武器だよ?」


「でもやっぱ金があれば新品が欲しいよなぁ〜フィルもそう思うだろ?冒険者になって貯めたはじめての金で買うのがボロってなんか残念じゃんか」



  そう言ってカルは私の返事も聞かずに壁にある大きめの剣を見に行った。



(ん〜再利用とはいえちゃんと手入れして使える物らしいし、こっちの方は新品のより断然安いのよね……武器は消耗品だろうし魔収納に予備を入れたりとかどうかな?)



  私は新品の武器をキラキラした目で見て回るカルとは違い、樽の中の武器を色々眺めて長さや重さなどを吟味した。


  だいたい欲しい武器の目星が付く頃には、買取窓口で言われた予定の時間を既に回っていた。



「もう時間回ってる!シゲさんの所行かなきゃ。依頼窓口の方で報酬も貰わなきゃだし」


「俺はいいよ。着いてってもしょうがねーし、まだ武器見ていたいしな」


「じゃあカルはまだ暫くここにいるの?」


「そのつもりだけど?」


「わかった!すぐ戻るから待ってて!」


「なんーー」



  カルの返答も聞かずに、私は冒険者ギルドへと向かった。



 ****


  冒険者ギルドに入ると、すぐに買取窓口で頬杖ついているシゲさんが目に付いた。



「シゲさん!」


「おう。遅かったな?査定終わったぞ番号札出せや」



  特に機嫌を損ねた感じも無くシゲさんは明るく迎えてくれた。



「ごめん。武器防具屋を覗きに行ってたんだ」


「そりゃいいね。早速、いい武器や防具が買えると思うぞ?これが、今回のお前の収入だ」



  シゲさんが番号札と引き換えにカウンターに置いた袋はずっしりと重そうで、中でジャラジャラとお金が擦れる音がする。

  それをシゲさんが目の前で取り出し十枚づつ山にしていった。



「シャルトウルフの毛皮は、すごく状態が良かったから皮一枚に金貨3枚、牙は一本あたり銀貨二枚。合計金貨61枚と銀貨2枚だ」



  買い物はまだ1度もしたことが無いが、確か一般の相場で銅貨一枚で飲み物が買えて、銅貨三枚でパンが買える。

 

  この領地の事を勉強した時知った範囲では、一般の平民の収入は平均で月に金貨15枚。

  私は一日で……いや、一日とかけずに平民収入四ヶ月分は稼いだ事になる。



「すごい……」


「これに依頼報酬も付くなら装備買い揃えるのに十分だろ。良かったな!ほれ!依頼報酬も貰ってさっさと武器防具屋にでも行ってこい。お前の装備じゃとてもCランクに見えやしねーよ」


「わかったありがとうシゲさん!」


「次も期待してんぞ〜」

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