6、4歳の誕生日と魔法2
文武両道な令嬢になるため体力づくりにも励んできたが年齢的な事も大きくなかなか進展しないままだ。
人よりも武を身につけるには身体強化しかないだろうと思い、今日まで魔力操作に励んできた。
(魔素を魔力に変えることはできるようになった。この魔力を扱えるようになれば身体強化も出来るかもしれない!)
私はいつものように魔素をまとめて魔力に変えた。
そして、両手を自分の胸に当ててその魔力を自分の身体に取り込ーーめなかった。
(あれ?え?取り込めないのこの魔力?)
何度も自分の身体につくった魔力を取り込もうとするも全く入っていく気配がない。
(もしかして……魔素でつくった魔力は自分自身には使えない?てこと……ですの?)
身体強化のために魔力操作を訓練してきたのにせっかくつくった魔力は身体強化には使えそうにないと知りガクッと肩を落とした。
溜息をつきながら、しばらくショックを受けていたもののつくった魔力に意識を向け直して気持ちを切り替える。
(いえいえ、無駄になったとは決まってませんわ。この魔力もなにか使い道はあるかも知れませんもの……)
しかし、目標としていたのは身体強化。
そして、今まで魔力操作の訓練をし続け上達していっていることは確かである。
(自分の魔力でならできるのかしら……)
つくった魔力はとりあえず収魔のブレスレットに吸わせて、それからブレスレットを外した。
魔素を使った魔力操作方法を考え出してからはブレスレットを外しての訓練を1度もしていなかったので外すのは久しぶりの事だ。
(……僅かな火種になっている魔力が以前より感じやすい。訓練の成果は出ているんだわ……)
ブレスレットに吸われなくなった魔力は徐々に大きくなっていく、その速度は以前より早い気がする。
ある程度の量で安定してきた魔力を両足に集まるように魔力操作していく。
魔素で魔力操作の訓練を続けていたおかげで身体の部位に自分の魔力を移動することは難なく出来た。
(魔素を操作するより自分の魔力を操作する方がずっと楽ですね。これなら自在に扱えそう!)
私はゆっくり東屋の外へ出てその場で軽く跳ねてみた。
(ふぁわわっ!!)
私は軽く跳ねたつもりだったのだが、すごい勢いで身体が跳ね、目下に東屋の屋根が見えた。
東屋の屋根より2mくらい高く跳んでしまったため目立ってしまっただろうと周囲を確認するも庭に人の気配はなく見つかりはしていないようだと一安心した……。
(いやいや、一安心してる場合じゃない!落ちる!落ちるっ!)
身体は重力に従って元の位置に落ちていったがその付近の花の花びらがブワッと飛び散っただけで自身にはほぼ衝撃を感じなかった。
私は落ちていく時の恐怖でバクバクと鳴り響く胸を抑えながら身体強化の凄さを感じていた。
(これ……両足に身体強化がかかってなかったら大怪我してますわ……絶対。……でも、これで自分の魔力を使っての身体強化が可能な事とあんな高いところから落ちても身体強化をしていれば大丈夫だということがわかりました……)
私は、自身の魔力で目標としていた身体強化が出来た事と多少の危険は自分で何とか出来そうだという安堵で徐々に目が輝いてきた。
(魔法……凄いですわ!これを極めたら文武両道な令嬢を目指す以上に今後に役立つかもしれません!もちろん文武両道も目指しますけれど)
だが、身体強化は武を身に付けるための手段として求めていたもの。
日中にブレスレットを外しているところを見られてはならないので結局、日頃の訓練の際には身体強化を使う事が出来ない。
「これでは何も進歩していませんわ……いっその事、収魔のブレスレットを外して過ごしていいという許可がお父様から得られたら良いのですが……いえ、思うだけでは叶いませんわね!」
(今度、お父様が王宮勤務が無く屋敷にいらっしゃる時にお願いしに行きましょう!)
身体強化を日常的に訓練で使えるようにするため収魔のブレスレットを外して過ごす許可を父に願う事に決めた。
(却下されれば仕方ありませんけれど、願いもしないで諦めているのは違いますもの……)
今のところは勉学にいつも通り励み、体格に合わせた運動と魔力操作を続ける事。
それは今後も続けようと心に決めた上で先程もうひとつやりたい事が増えた。
「魔素でつくった魔力の活用……」
一般的には10歳の収魔のブレスレットを外せるようになる段階で自分の魔力を扱えるように訓練し始めて魔法を使うようになる。
だが、私は4歳にして自身の魔力ならば自由に扱えるほどに魔力操作を身につけており、周囲の魔素で魔力を作る事ができる。
(魔力操作ができて魔力がそこにあるなら……条件は揃ってるはず。私ならもう魔法を使えるのでは……)
だが、今日は馴れない事をしたのもあって疲れている。
それに、あまり長時間一人でいるとリリアが探しに来てしまうかもしれないので収魔のブレスレットを元通り付けて、リリアの待つ自室へ戻って行った。