18、闇収納
翌朝起きると手の中に冒険者カードがある。
それを見て、無事に冒険者登録出来たことを思い出しベッドに寝たまま薄笑いを浮かべた。
私はベッドから降りて冒険者カードを眺め、クローゼットに入っているであろう冒険者服に目をやった。
「冒険者カードと冒険者服。あとは、武器と食料があれば生活出来ちゃうんじゃ無いかしら?お金は冒険者として働いて稼げるもの」
『4歳で自立!フィリー格好いい!』
『旅にでも出るのですか?もちろんお供しますけど』
私が自身の自由を具体的に思い描いて呟いていると翡翠と白妃がそう返事をしてくれた。
(冒険者として旅かぁ……行きたいですね。でも、私はまだ貴族社会に出てもいませんしここでやらないといけないこともまだありますから)
『なら、いつでも旅に行けるように準備だけでもしておくか?』
そう言って現れたのは希闇だ。
(旅の準備?どういう事?)
『自身の魔力でできるだけ濃い闇を創れるか?創れたらできた闇に冒険者カードを入れるんだ』
(闇に!?)
希闇の言い出したことに驚いたが、ひとまず言われた通りに魔力でカードが入るくらいの拳サイズの闇を宙に創り出す。
(カード無くならない?大丈夫?まぁ、再発行とかできるかもだけど……)
『無くなりはしないから安心してくれ』
そう言われてそっと冒険者カードを闇に入れ、手をひく。
『闇を1度閉じてまた闇を創り出し、冒険者カードを取り出すんだ』
私は希闇の指示通りに闇を1度閉じて再び闇を創り出す。
そして、闇に手を入れるとカードの方が私の手にスっと近付いてきて手に納まった。
私はそのまま冒険者カードを闇から取り出す。
「できた……」
(え?もしかしてこの闇、何でも仕舞えるの?)
『生き物は無理だな。ずっと闇の中にいたら気が狂いだすだろう。だが、それ以外なら大丈夫だ。時間も流れない』
(時間も!じゃあ、食べ物を入れて置いても腐らないのね!本当に便利!こんな闇魔法があったなんて)
『誰でも可能な闇魔法ではない。闇は私が管理している』
(闇の精霊と契約している者でなおかつ魔法士でないと使えない……と?)
『魔術士にも闇を創ることは可能だが、こういった使い方をした者は居ないな。闇の精霊との契約が必須なので誰も気付いていないのだろう』
闇の精霊と契約している者で魔法か魔術で闇を創り出せるならこの闇収納が可能らしい。
だが、現状でその使い方をしている者が居ないということだから人前ではやらない方がいいだろう。
(いつでも物を仕舞えたら便利なのにね?)
『収納魔術はありますわ。魔道具士の作るものにも魔収納バックというのがありますし』
『そーそー。あれは闇じゃなくて自分の魔力にしまうの〜』
(あるんだ?じゃあ珍しくもないのね)
なら、私が使っても問題無いかしら?
『闇でやるのはフィリーだけだけどね〜』
『それに、魔収納は時間が流れますし術者が死ぬと保管していた物が外に出るので物取りに狙われます。魔収納バックは本人以外も取り出せてしまいますね』
(闇収納は違うって事?)
『闇収納は私が管理しているのでたとえ、そなたが死しても闇に保管したものが外に出ることは無い。取り出す事も闇を創り出したそなた以外に出来ぬ。それに闇ならば保管出来る容量に制限は無い』
私は、死しても云々は深く考えないようにして、管理の厳重な専用保管庫が手に入ったと思う事にした。
一般的に魔収納が使われているのなら、それも覚えておきたい。
食べ物や容量要る物、貴重品は闇にしまう方がいいだろうが、依頼品や討伐物を取り出す必要がある時はそちらの方が都合が良いだろう。
(本当に旅にも行けそう……そうだ、冒険者服も入れてしまいましょう!)
私は、クローゼットを開けて冒険者服を取りだし、しまえるだけの大きさの闇を創って服を仕舞った。
そして私はいつもの日課にしているリリアが来るまでの魔力操作訓練をして、朝食まで素早く済ます。
新しい魔法を習得したいなら訓練あるのみ!
私は訓練着に着替えると魔収納の訓練のために魔法訓練場へーー
(………帝都公爵邸ではなく領地なのでした。なんてこと……自由に魔法訓練が出来ない事がとってももどかしいですわ!……あ)
「そうだ!今日も下街へ行きましょう!」
私は、護衛に付いてきてもらうためビエラの居る訓練場へと駆けた。
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