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17、冒険者カードと帰宅

 私は、実力試験も終えて無事に冒険者カードを受け取りその説明を受付お姉さんのルーシーから受けていた。



「では、冒険者カードの説明を始めますね?まず、冒険者カードは月に何回依頼をこなさないといけないという決まりはありません。

 身分証としても使われるものなので依頼を全く受けなくても所持し続けることは可能なのです。

 なので、マメに依頼を受けないといけないという事はありません」


「そうなんですか?じゃあ無期限でずっと持っていられると?」


「Fランクまではそうです。でも、Eランクからは約2年ごとにカード更新試験があります」


「Eランク……魔物狩りができるようになるランクですね」


「そうです。過去に討伐依頼をこなさず鍛錬もせずに久々の魔物狩りに出て死亡という事が相次ぎ、そのような規則となりました。実力無く魔物討伐依頼を受けるのは大変危険ですから、そのような実態ならば免許を取り消そうということになったのです」


「確かに魔物狩りをしない期間があまりにも長いと、体力が落ちてしまって素人と変わらないかもませんね。では、更新を忘れてしまったら自動で免許取り消しに?」


「ええ。予めカードに発行から2年の期限がわかるようになっていて、更新を過ぎてギルドで使おうとしたらわかるようになっているのです。ギルド員として依頼受けや魔物部位売買などに使用しないならそのままの所持で大丈夫ですよ。単に身分証明書としても使いますから」


「うっかり2年の期限を忘れて更新をしなかったら?」


「安心してください。単なる更新忘れならば、実力試験を受け直せばいつでも再発行可能ですから」



  どうやらEランクから上の冒険者カードは運転免許証のような物のらしい。

  運転しないペーパードライバーでも免許所持はできるしペナリティは付かない。

  けれど、全く運転していないのはいざ運転する時に危険なので、ある程度の実力がある事を定期的に確認させてもらうという事なのだろう。


  運転免許証と違うのは期限切れでも身分証明書として使用するので、期限切れギルドカードを所持し続ける事を公に認めているというところだろうか?



「でも、月に決められた回数の討伐依頼を達成していれば更新試験は免除ですよ。実力が確認取れていれば問題ないので試験の必要ありませんからね」


「ちなみにCランクの月討伐回数は何回ですか?」


「Cランクの方は、Cランク討伐依頼を3回もしくは、Bランク依頼を1回で更新試験免除ですよ。1つ上のランクまでは受けることが出来るのです。頑張ってくださいね?依頼は入口から見て左の壁に貼り付けられていますから」


「はい!ありがとうございました」


「そうそう、冒険者のペナルティについてですが、二つあります。一つは、犯罪行為の禁止。これは一発免許取り消しになり得ます。二つ目は、依頼不履行時の罰金です。ペナルティから逃げても冒険者資格剥奪ですからちゃんと守ってくださいね?」


「わかりました。犯罪行為なんてしないし、依頼も頑張って達成するようにします!」



  受付お姉さんのルーシーは、満足そうに笑って送り出してくれた。



  私は、新人登録の受付から離れ冒険者ギルドの中央へと戻って来た。



(依頼ボードは、あっちね。少し見たいけど……なーんか忘れているような……)



  そう思いながら顎に指を当てながら少し斜め上を見ると、天井窓から茜色に染まりかけのピンク色の空が見えた。


  それを見て私は、目をぱちぱちする。



「うそ……そんなに時間経ってたの?」



  早朝に屋敷を出て街を散策してから冒険者ギルドへ、それから実力試験を受けて今に至るまでにだいぶ時間がかかっていたようだ。



「ランチだって食べてないのに……」



  夢中になって街を歩き回ったり、冒険者ギルドで模擬戦したりしているうちは意識していなかったが、気付いてしまうとお腹が空いてきた。


  だが、既に夕刻ともなれば急いで屋敷に戻らなくてはならない。

  私はギルド食堂が準備を進めている夕食の支度の誘惑の香りを恨めしく横目で見て、唾を飲み込み振り切るように冒険者ギルドを飛び出した。



 ****


  冒険者ギルドの外へ飛び出すと、夕日に染る空が鮮やかに輝き私をさらに慌てさせる。


  私は急ぎ、屋敷へと走り出した。


  公爵邸に着いたのは、夕日が落ちかける一番赤く染る頃、ギリギリ日没には間に合った。



「おじょ……フィル!!どうしたのですかそのボロ着は!?」



  その声に振り向くと屋敷の傍にビエラの姿があった。



「追い剥ぎにでもあったのですか!?私がちゃんと護衛していなかったばかりに……ご無事でよかった」


「ああっ!そうだ、護衛についてきてもらってたの……」


「忘れていたんですね?それはいいんです……。元々、意識させない為に離れて護衛していたんですし。それより何があったのです?元の服はどんな輩に奪われたのですか?」



  そう言われて私は自分の服を見下ろす。


  着ているのは実力試験の時に借りた貸し出しの冒険者服。



「ああっ!置いてきちゃった!」


「フィル一人で犯人達を連行するのは大変でしょう。置いてくるのは仕方ありませんよ。私が後でーー」


「違う違うのビエラ……さん!あのね?」



  私は、誤解を膨らませるビエラを止めて冒険者ギルドへ向かってから今に至るまでの事を説明した。



「それで試験の時借りた服をそのまま着て来てしまい、元の服は冒険者ギルドに置いてきてしまったと……」


「そうなのです」


「……わかりました。では、元の服は私が取りに行って参ります。お嬢様は、お屋敷に戻り「平民の気分を味わうために冒険者ギルドで服を借りた」と言ってください」


「あの……出来たらこの服は欲しいのですが」


「では、買い取って参りますから安心して屋敷へお戻り下さい。今回のように私を撒くような事がなければ、またお忍びにお付き合い致しますから」


「ありがとうビエラ!」



  私がつい嬉しくなりビエラに抱きつくととても驚いた様子を見せたが、私の肩に手を当てると微笑みながら屋敷へ戻るよう促してくれた。


  その後、屋敷に戻ってリリアがボロ着に驚き、ビエラの言っていた通りに言い訳をしてボロ着をちゃんと保管するよう頼んだ。


  ランチを抜いていたので夕食は一段と美味しかったように感じる。



「私の冒険はこれから始まるのね」



  などと意味深な事をわざと呟きながら、嬉しさいっぱいに冒険者カードを握ったまま、その日は眠りについた。

続きが読みたい、応援したいと

思っていただけましたら

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よろしくお願いします(´∀`*)

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[気になる点]  名前を偽った場合、冒険者カードランクはどうなるんだ?
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