16、実力試験の後
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(*'∀'人)
「勝てない……もう、魔力もストックの魔力石も残っていない。なんで……なんでお前はまだ撃てる!?」
「なんでって……今使ったのは、僕自身の魔力ではなく魔素からつくった魔力ですから。魔力が空になることはありませんね」
私がそう言うと副ギルド長は固まった。
(ああ〜この反応も見覚えがとてもありますね)
ひとまず、頭に血が上りさらに思考停止になってと、とても忙しい副ギルド長にこれが模擬戦である事を思い出させる。
「副ギルド長、僕の実力試験。負けを認められたという事は合格で良いんですよね?」
「そう……だな。君の実力ならAランクにもしたいところだが、Aは人を引率する経験等も必要な為飛び級はさせられない」
「目立ちたくないのでランクは低い方がいいです。僕は魔物狩りがしたいため本登録を望んだだけですから」
「ふむ……なら、Cランクにしよう。Dでは、君の実力から見てあまりにかけ離れ過ぎている。これ以上は下げることが出来ない」
そこまで自分が秀でているとも思えないのだが、副ギルド長がそう言うならまぁ、Cランクで良いだろうと私は了承した。
****
私と副ギルド長が通路を通って冒険者ギルドに戻ると、試験場前のベンチに先程観戦していた冒険者達と試験官をしたジゼが待っていた。
私達が扉を開け控え室に入るなり、皆ざわめき出す。
「おい……副ギルド長があんなにボロボロに……」
「あの子はまるで無傷だぞ!?一方的に副ギルド長をなぶったのか!」
「いや、副ギルド長が胸を貸したって事だろそうじゃなきゃ……」
「それはねぇよ。胸を貸すにしたってあそこまでボロボロは無いだろ」
「やっぱあの子魔王だって……」
そういえば副ギルド長は、ズタボロ姿のままだ白妃に回復させたら良かったかな……と彼の方を見る。
副ギルド長は、好き勝手に言う冒険者達をまるで気にせず、受付けのお姉さんに私のギルドカードの発行を頼んでいた。
(さすが副ギルド長……仕事は早いのね)
5分と経たずに受け付けのお姉さんは奥から戻ってきて、副ギルド長にカードを渡した。
「フィルさん。これがあなたの冒険者カードです。このカードに魔力を流して識別登録をしてください」
私は副ギルド長の言う通りにカードに魔力を通す。
魔力を通した時にカードが少し光ったが、その後にカードに目に見えた変化は無い。
「これでいいのですか?」
「ええ。識別登録出来ましたよ。では、この後は受付のルーシーに説明を受けてくださいね?」
副ギルド長が私の事を受付のルーシーさんに任せた。
それを見るとそれまで様子を伺っていた冒険者達が皆、副ギルド長の元へ来て質問攻めを始める。
「副ギルド長!なんでそんなボロボロになってんすか!?」
「あの子剣士だろ!?なんで副ギルド長そんなになってんだよ!」
「合格したって事は、あの子Eランクになったのか!?」
「いや、本登録の最初はFだろ?」
「でも、魔物狩りがしたいからとかなんとか言ってたじゃねーか」
「彼は、Cランクですよ」
副ギルド長がそう答えると実力試験の待合室は音が消えた。
その場にいた冒険者全員が絶句したからだ。
沈黙がしばらく続き、耐え切れなくなった一人が副ギルド長に話しかける。
「副ギルド長……冗談キツいっすね?」
「嘘でも冗談でもない。私はそういったものを好まない」
「有り得ません!Eランクならまだ狩人や兵士にも狩れる角兎やスライムなんかで済むが!DどころかCだなんて!」
「副ギルド長……いくらなんでも鬼でしょう」
「実力を評価した結果だ。私の姿を見ればわかるだろう。君達が騒がしいから彼がカードの説明を受けられずにいるじゃないか。いい加減、散りなさい」
そう言って副ギルド長は、少しふらつきながら奥へと消えて行った。
冒険者達は私を見て、お互いを見合うと怪訝な顔をしたまま去っていった。
一人残ったのは試験官をしたDランクのジゼ。
ジゼは、受付の前にいる私の所まで来てしゃがみ込み、私に目線を合わせて言った。
「お前はDランクの俺より確かに……強かった。それは、仕方ねぇ認める。だがな、俺より強いDランクも沢山いるし、ましてCランクの依頼にある魔物はそこらの比じゃねぇからな?」
「……心配してくれるのですか?」
私がそう言うとジゼは目を丸くし、徐々に頬が赤く染ってきたかと思うとバッと俯いた。
「クソッ。そんなんじゃねーし……それが現実だって教えてやっただけだ!じゃあな!」
吐き捨てるように別れの挨拶をすると同時にジゼは走り去っていった。
「意外といい人、多いんですね……」
「ふふっ。そうですよ。冒険者って力有り余ってなる人も一部居ますけど、ほとんどは人や村の為になりたくて冒険者になる人達なので、いい人は多いんです」
「なるほど」
冒険者は体格のいい者が多く、日頃の怪我で傷だらけな事も多いし武器も持っているので恐れられやすい。
だが、聞くところによると人格的には良い人が多いようだ。
仲良くなれる冒険者もいるかもしれないと私は心の中で微笑んだ。
続きが読みたい、応援したいと
思っていただけましたら
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