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14、実力試験1

ブックマーク、評価ありがとうございます!

  衝動的に冒険者ギルドの大扉をくぐり冒険者になりたいと叫び、なんだか流れで実力試験を受けられる事になった。


  私は受付のお姉さんに、実力試験が受けやすいよう濃い青のボロのシャツと黒のスボンを借りて実力試験場へと踏み入る。



(色の選択肢があって良かった……濃い青じゃないと、ミラージュヘアでごまかせないもの)



  受付の隣の扉の先は石のトンネルだった。そのトンネルを進むと野外の石壁に覆われた試験場へと辿り着く。



(学校の体育館二つ程度の広さ……床は土、壁は石造りね。私の訓練場よりだいぶ脆そうだけどーー)


「実力試験を志願したのはお前だろう?そこの武器置きから得意とするものを取れ、特に得意不得意がなければ剣でいい」



  そう言って左のトンネルから現れた金髪茶色の眼をした若い男が試験場へと入って来た。

  恐らく彼が私の試験官なのだろう。


  私は言われた通り武器置き場へと向かい、普段訓練で使うのは剣なので、できるだけ近い形の剣を手にして男の元へ行く。



「ふんっ。特に得意な武器も無いんじゃねーか。やっぱ見掛け倒しのド素人なんじゃねーのか?」


「…………実力試験よろしくお願いします」



  平常心を見るためあえて煽っている事も考えて私は、冷静に彼に対応した。

  だが、それも気に触るのか苛立った様子で男は剣を構えた。



「よろしくしてやるつもりはねーよ。下手に出ても手加減してやらないからな?実力が足んねぇ事を思い知らせてやるよ」



  私が剣を構えると試験官の彼は、合図の掛け声も特に無く私に向かって剣を構えたまま走り出した。



(わかりやすくてありがたいわね)



  彼が私との距離残り半分というところで、私は身体強化をかけて走り、彼の後ろに回り込む。


 

「ッ!?消えた!?」


「おっと、急に立ち止まるなんて危ないですよ?」



  そう言って私は彼の首に剣を当てる。



(実際危ないじゃない。私は走る彼の後ろをピッタリ走って追うつもりだったのに急に止まるんだもの)


「おま!?何をした!」


「何って、走って後ろに周りこうして剣をあなたの首に当てているだけですが?」


「そんなわけ!走るのなんか見えなかっーー」


「そこまでだジゼ。お前の負けだ」



  そう言って試験場へと入ってきたのは、一つ結びの長い紺の髪に黒の瞳をした黒いローブの男だった。

  黒の瞳は、光の加減によるのか薄く金色を帯びている気がする。



「副ギルド長っ!こいつなんかズルしてっ」


「ズルなどしていませんよ。ジゼ、君の実力不足……いえ、我々が甘く見すぎただけですね。彼は、Dランクの君ではまるで歯が立たない」


「何を言ってっ!こんなチビにそんなーー」


「見た目で判断していては、魔物に食い殺されますよ?ジゼ」



  副ギルド長にそう言われると、試験官をしたDランクの冒険者ジゼは先程までとは違い、私を気味の悪い怪物を見るような目で見てきた。

  その目には、恐怖に近いものが滲んでいる。



(これからは、そういう眼に晒されることも増えるのかもしれませんわね。それで自由が手に入るならかまいませんが)


 

  副ギルド長は、ジゼが黙り込み一応の納得を見せると私の方へと近付いてきた。



「はじめましてフィルさん。私は、冒険者ギルドレストルーチェ支部の副ギルド長レンズ・フリーデスだ」


(……確かにこの方、眼鏡が似合いそうなのに眼鏡が無いわね。いやいや……ファミリーネーム?って事は貴族?確かフリーデスって……)


「……宮廷魔術師長も確かフリーデス」


「……祖父をご存知で。確かに私は、マイヘア・フリーデスの孫に当たります。ここは冒険者ギルドなのでそちらの自己紹介はするつもりがありませんけどね」


(まさか宮廷魔術師長の髪は……いやいや、そんな事考えている場合では無いのよ!)


「フィルです。魔物狩りがしたくて冒険者ギルドに来て、本登録はまだ出来ないために魔物狩りは出来ないと説明を受けました。ですが、諦めもつかずーー」


「ええ、そう聞いています。私としましては、もう少しフィルさんの実力を見せていただいた上で本登録をしても良いのではと思っておりますよ」



  フリーデスがそう言うと、私達の様子を見守っていたジゼも観客席に居たシゲも他の冒険者も慌てて騒ぎ出した。



「副ギルド長!!いくらなんでも特例すぎるだろ!」


「こんな幼い子を魔物狩りに出すつもりなのか!?どうかしてるぞフリーデス!!」


「これは本登録の試験ではなくただの手合わせだろう!」


「今のは何かのまぐれだっただけだ!次が無ければその子は死ぬぞ!?」



  恐らくここに居る者のほとんどは私の身を案じて叫んでくれている。

  けれど、私の望みを妨げるその声が私にはーー


 ーー煩わしく思えた。


  私は魔素魔力を作り、全方位に向けて圧で風が起きるほどの音波を飛ばして彼らの雑音をかき消した。


  強制的に黙らされて音波の風に煽られた人々は

 、副ギルド長以外全員あぜんと私の方を見た。


  そして誰かが呟く。



「……なんだよ、今の。あんなの……まるで魔王みたいじゃないか」



  なんて失礼なのかしらと思い、私が観客席に目を向けると、そこに居た全員が肩を跳ね上げる。



「次の実力試験の必要が薄れた気がしますが、続けましょうか。フィルさん。あなた、身体強化を完璧に使いこなしていますね?もし、魔術も使えますか?」


「……色々と確信を持って聞いているように聞こえますね?」


「ええ。私は、それなりに優秀な魔術師ですから……あなたの魔力の扱いが並の魔術師より遥かに優れている事くらいは見えますよ」



  隠し立てしても無駄なのだろう。副ギルド長は、私が魔力の扱いに慣れていることに確信を持っている。

  けれど、魔術師だと誤魔化したところで私は魔術はまだ習っていなくて使えない。


  だが、魔法士だとここでバレるのも困る気がする……どうしたものかしら?

続きが気になる、応援したいと

思っていただけましたら

ブックマーク、評価★★★★★のほど

よろしくお願いします(´∀`*)

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