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13、冒険者ギルド

「冒険者になりたいのです!!」



  木製の1階ほどの高さのある大両扉を開けて、冒険者ギルドへと入り館内を見回していた私を心配し、話しかけてくれた冒険者のおじさん。

  その冒険者のおじさんに私はそう叫んだ。



「え?いや、そんなん俺に言われても……あ〜もう、登録窓口の職員に任せるか。そういった要件であれば、あちらの窓口へどうぞ……」



  冒険者のおじさんが手を向けたのは、ギルドの右手、食堂の階下だ。

  確かに、そちらにも受付らしいものが一つだけある。



「親切にありがとうございます。失礼します」



  私は嬉しさいっぱいにお辞儀をして冒険者のおじさんにお礼を言うと、そちらの窓口へと進んだ。

 


  案内された窓口には、学校机分の広さの受付が一つだけ、あとは受付の横に木製扉、そしてベンチが並んでいる。



(病院の待合室みたいな間取りね?)



  そう思いながら、 私は窓口へ行くも屈辱的な目に遭った。


  窓口に着くとそこは壁。受付は私の頭上。


  受付口は私の頭よりも高い位置だったのだ。



「あの……椅子をお出ししましょうか」



  頭上の窓口から職員のお姉さんが、窓口からは姿の見えない私に身を乗り出して、そう話しかけてきた。

  私はそれがとても恥ずかしく悔しくて断った。



「結構です!大丈夫ですから!」


(んもう!バレたってかまわないわ!翡翠、私の身体を浮かせて!)


『クスクス…はいよ〜』



  私がそう言うと翡翠はすぐさま風を使って私の身体を受付に届く高さまで持ち上げてくれた。



「ええっ!?」



  いきなり自分と同じ目線まで上がってきた私に受付のお姉さんは、とても驚いたが職務中だと思い出したのか直ぐに落ち着きを取り戻した。



「クホンッ……はじめまして、冒険者ギルドへようこそ。こちらは冒険者登録窓口ですがお間違えありませんか?」


「冒険者登録!!はい!冒険者になりたいです!」


「基本的に冒険者には身分性別問わずなれますが、年齢制限はあります。まず、5歳になっていれば見習い冒険者登録としてGランク固定、10歳ではじめて冒険者本登録Fランクからとなるのです」



(私が5歳に見えないから登録出来ないぞという話?まぁ……カウンターに届かない程の背だしなぁ)



「この年齢制限は、年若い冒険者希望者が魔物狩りに出てむやみに命を落とさないようにという配慮で設けられたものです」


「え……じゃあ本登録後でないと魔物狩りは出来ないの?」


「そうです。そして、本登録は実力試験があり試験で認められなければ本登録といえど、魔物狩りのあるEランクに上がる事が認められません」


「……それより実力が高かったら?」


「本登録の実力試験の際に、Eランクより遥かに上回る実力であると認められる場合は極稀にBやCやDのランクからのスタートになる事もあります」



  なるほど、冒険者にはGFEDCBのランク付けがある。恐らくAより上もあるのだろう。


  Gは、見習い冒険者の固定ランクで魔物狩りは絶対に無い。

  Fは、本登録冒険者の初めのランクでこれも魔物狩りが無い。

  Eから魔物狩りが以来に含まれ、さらに実力のある者がDやCやBになる。



(私は、冒険者なら魔物狩りが堂々と出来ると思って来たのに……何とか本登録からになったりしないかな?年齢はせめて5歳とサバ読むか……)


「あの、5歳なんですけど本登録する事はどうしても出来ないんですか?僕は、魔物狩りがしたいんです」


「いけません。危険すぎます。小さな子供に魔物狩りなんてとても出来る事では無いのです。武器も持てないうちにそんなーー」



  私が懇願し、受付のお姉さんが私には無理だと否定していると先程ここへ案内してくれた冒険者のおじさんが口を挟んだ。



「いや、武器を持てねぇって事はないだろ。この坊や正面の大扉を一人で軽々開けて入って来たんだぜ?見た目通りの坊やじゃあねぇだろうよ」


「そ……うでしたね、確かに開けてました」



  まるで普通の人には開けられないとでも言いたげな反応を二人とも見せる。

  私はそんな二人の反応に首を傾げながら、話を聞いていた。



「試しに実力試験だけでも受けさせたらどうだ?俺はすげー気になるんだが」


「そんな、期待だけ持たせるような事……」


「なに、しっかり厳しい世界なんだと知ればわかってくれるだろうよ。じゃなきゃ坊やも退けねえって」


「……では、せめて副ギルド長に尋ねてきます」


「おう!俺らが観戦したがってるって事も含めて頼むわ」



  冒険者のおじさんが、私の実力試験を受けられるように受付のお姉さんを説得してくれたようだ。

  二人の話が纏まると受付のお姉さんは、私に一時退出する旨を伝え、ベンチに座って待つように言った。



「ありがとうおじさん!」


「おじっ……ああ。俺は、シゲってんだ。おじさんは軽く傷つくんでシゲって呼んでくれるか?」


「はい!シゲさん!」



  それから受付のお姉さんがかえって来るまでの間に私は、あの大扉の事をシゲさんに聞かされた。



「あの両開きの大扉は、普通は開くことがないんだ」


「?開かずの扉?」


「いや、そういうもんじゃないんだが……あれは物凄く強い魔物が出た時や魔物大量発生なんかの緊急事態の時に開け放つ扉でな?」


「えっ!?そんなの開けちゃったの!それは驚かせちゃうよね……ごめんなさい」


「いや、開くのは構わないんだが……その、普通は冒険者四人がかりで開けるもんなんだ。一般人なら十人は必要だろう」


「あ……」



  私は、並外れた力を見せつけた事になっていたらしい。

  そういえば、冒険者ギルドに走って来てからそのままギルドの大扉を開き入って来たので全身に身体強化をかけっぱなしだ。



(身体強化しているから大扉の重さなんてまるで感じてなかった……)



  そんな大扉を四歳ほどの小綺麗な格好をした幼児が軽々と開けて入ってきたものだから皆目を丸くしていたのだ。


  ギルドに入ってからの変な空気の真相を聞き終えた頃に受付のお姉さんが戻ってきた。



「副ギルド長が実力試験を受ける許可を出しました。あなた……そうだ、名前は?」


「えと……フィルです」


「フィルね。こちらの扉から入って試験官に試験してもらってきてちょうだい。あ、でも綺麗な服着てるのよね……ちょっとまってて」



  そう言って受付のお姉さんは、私に若干使い古しに見える服を上下揃いで何着か持ってきて、着替えのために部屋にも案内してくれた。



(平民らしいボロのシャツにズボン……これ、そのままくれないかしら……)



  そんなことを考えながら上下服を着替えると、私は実力試験場へと足を踏み入れた。

続きが読みたい、応援したいと

思っていただけましたら

ブックマーク、評価★★★★★のほど

よろしくお願いします(´∀`*)

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