36、一生分の夢【2】
ブックマーク、評価ありがとうございます
m(*_ _)m
あと三、四話したら新章に入る予定です。
今日は、本当に怒涛の1日だった。
魔法士である事と闇の精霊魔法の件で皇帝陛下に城に呼び出され、いきなり飛び入りして来た婚約者候補であるダビッド殿下に一方的に嫌われた。
そして、話が粗方終わる頃にメレス宮での火災があり、燃え盛る宮殿からヴァシュロン殿下を救出。
そのどれが引き金となったのか、鍵となったのか。皇城で眠りについたその日、また長い夢を見た。
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小さな村で黒龍が暴れた。私は、その龍を宥め浄化し、その龍は感謝を表すため私の力となり尽くした。
けれど、私の婚約者であった村の男は、私が黒龍を使い国に謀反を企てていると嘘の密告をした。そして、私は国の役人たちに押しかけられ投獄される。
私は哀れにも「きっと密告したのは彼ではない」と信じ続け、拷問に耐え続けながら日々を過ごした。
長い長い年月、牢で拷問にあいながら過ごすうちに両眼も失明した。
それでも信じ続けて牢で過ごし続けたある日、村でいつも共に居た幼なじみの男が私を救いに来た。
幼なじみの男は教えてくれた。婚約者の彼は私を陥れようとする貴族たちに騙され、私を国に差し出した事。
そしてーー
彼は、自らが騙されたために私をそのような目に合わせたことを悔いて自殺した事を……。
私は、失明した両眼で泣き続けた。
今でも私は彼を信じ続けていた。1度も彼を疑ったりなどしなかった。死んで欲しくなどなかった。彼を……愛していた……。
幼なじみの男は、私に優しく寄り添い、村へ帰ろう。と、目の見えなくなった私を導きながら共に村へ帰ってくれた。
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目を覚ますと、昨日泊まった皇城の一室だった。目元には、昨夜見た夢のせいか涙が残っている。
涙を拭い窓の方を見れば、まだ外は薄暗く日が昇るまでまだ少し時間がありそうだった。
どうやら、いつもの習慣で早い時間に目が覚めたようだ。
せっかくですから、いつも通りに魔力操作の訓練はしておきましょう。
(翡翠、白妃……希闇もまだ居る?魔力作りするからもらって?)
『はーい!』
『お城なのに励みますね。わかりましたわ』
『…………』
(希闇?何かあったの?)
いつもなら返事くらい返してくれるのだが、希闇に返事がなく、私は希闇に尋ねてみた。
『そなたの夢に触れた。あれは……覚えている』
(覚えている?それってどういう事?)
『……あの黒龍は私だ。正確には……黒龍の魂の成れの果てが私なんだ』
夢は夢のはずだ。だが、私の見た夢に出た黒龍と希闇には繋がりがあるらしい。
(希闇が夢の黒龍?でもあれは夢でしょう?どういう事?)
『いいえフィリス、あなたが見た夢は多分あなたの魂に刻まれている前世の記憶よ?』
「前世……」
私は思わず心話ではなく口に出してそう呟いた。
もしかして、前に見た長い近代的な夢も私の前世なのかしら。
確かにまるで自分が経験してた事のように感じられていたけれど……まさか、前世で経験したことを夢に見ていたなんて……。
(では、私は2回生まれ変わっているの?)
『いえ……もっと重ねている気がするわ』
『そーそー。フィリーの魂はすっごく卓越しているというか老成しているというか〜』
『……恐らく数回では済まない。そして、普通なら何度も転生した魂は擦り減っていくがそなたの魂は回数を重ねる毎に輝きを増しているようだ』
希闇がそう言うと翡翠と白妃も頷いた。
希闇が私の元へ来て改まった様子で私に言う。
『黒龍であった我、希闇は再び月陽姫の力となろう。どうか……今度今生では幸せになって欲しいと思っている』
(月陽姫……?)
『前世でそなたはそう呼ばれていた。月陽姫とな』
(私の前世…………夢に見るのは何か理由があるのかな?魂に刻まれているから度々思い出すだけ?)
『それはわからないわ』
『なんだろね〜』
(今それを考えても答えは出ないか……。よし!ともかく今は今を生きなきゃね)
私は、気持ちを切り替えていつも通り朝の魔力操作の訓練を始めた。
続きが読みたい、応援したいと
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