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33、宮殿の火災3

  少年の無事に周囲は歓喜し、すっかり消化の手が止まっているが背後ではメレス宮が轟轟と燃え上がったままだ。

 


「あの、恐れながら陛下。メレス宮は未だ鎮火されておりません」



  私がそう陛下に近付き告げると、陛下は周囲の状況を見た。

  術師達も水魔術の手を止めて私の方を見て固まったままで、騎士達は少年の無事に良かった良かったと歓喜している。



「何をしている!早く火を消し止めんか!!」



  陛下がそう叫ぶと、皆慌てて持ち場につき消化作業を再開した。


  だが、先程よりさらに燃え上がる炎は騎士がバケツで水を運ぼうと、術士達が水魔術を施そうと、全く衰える様子が見られない。


  土魔術で作られた宮殿の壁には隙間が無く、外からいくら水をかけようと、建物の中で燃え盛る炎にはなんの効果も与えないのだ。



(外からではダメね……雨を降らせても時間がかかりそう。建物の中で……そう、スプリンクラーがあったら!)



  私は案を思いつくと、翡翠にすぐさま指示を出した。



(翡翠!私が魔法で水を出すからそれを風で建物の隅々まで誘導して欲しいの。建物の中に水の蛇を通してそれを建物の中で拡散させたいのよ)


『よくわかんないけどわかった!フィリーが出した水を建物中に誘導すればいいんだね!』



  要は、建物の中に水そのもののホースを巡らせてそれを四方八方に飛び散らせればスプリンクラーの代わりになるだろうと考えたのだ。


  魔素魔力では、予め効果範囲や発生地点を把握しなくてはならない。

  それに、この作戦は、水を巡らせたあと拡散するためにさらに魔力の遠隔操作が必要だ。

  なので、私自身の魔力を使って水を出し続ける必要がある。



(魔力の遠隔操作はぶっつけ本番、けれどきっと出来るわ!)



  私は、自分の中の圧縮してある魔力を引き出しながら水の玉を作り出しそこから水の柱を建物に向けて送り出した。



(翡翠!誘導お願い!)


『あいよー!』



  翡翠が送り出した水に風を纏わせてスクリューさせながら、そのまま建物の中へ飛んで行った。



「フィリス、次は一体何を……」


「…………」



  公爵が私に何をするつもりなのか尋ねてきたが、初めての魔力遠隔操作で集中している私には答える余裕が無い。

  私の真剣な様子に、今は話しかけられる状態ではないと判断した公爵は、心配そうに私の側に近付き燃え盛るメレス宮へ目を移した。



『フィリー!これで全部回ったよ!』



  翡翠の報告があったのは、水と翡翠を建物に送り出してから数分後だった。

  私は、その報告を聞いて翡翠に返事をする。



(ありがとう翡翠!纏わせた風を解いて戻って来て!)


『わかったー!』



  翡翠が纏わせていた風を解いてくれたのだろう。

  自分の魔力で作ってある水が減らされる感覚がした。

  恐らく、風に包まれなくなった水が炎の熱で蒸発しているのだろう。


  水が蒸発し、魔力で作り足しを繰り返していては埒が明かない。急ぎ、巡らせた水全てに集中する。



(自分の魔力だから、繋がっている今は全ての水を感じ取れる。できる。)


  私は巡らせた水を完全に把握すると、その巡らせた全ての水を全方位に向け、一斉に噴射した。


  勢いよく水を足しながら噴射した。


  ただ勢い任せで水量を増やせば建物が水で爆発したようになっただろう。

  だが、しっかりスプリンクラーを想像しながら行ったからか、建物内部が水のシャワーを満遍なく浴びるだけで済んでいる。


  建物全体が水を浴びせられたようにびちょびちょだが、そこは仕方ないだろう。


  おかげで先程まで、燃え盛っていた建物は遠隔スプリンクラーを放ったと同時にジュウーと音を立てて一瞬にして鎮火した。



(これでーー)



  私は、無事鎮火した事を見届けるとその場に倒れた。



 ****


  目を覚ますと、ベッドに寝かされていた。


  ベッドに寝たまま周囲に目をやれば気品ある調和の取れた群青色と白の落ち着いた色合いの部屋であることが分かる。


  私は、どうやら皇城の一室を借りて寝かせてもらっていたらしいと気付いて身体を起こす。

  服も着替えさせてもらったようで、着てきたドレスではなく寝間着になっている。



(……さっきの今、ではないようね。どのくらい時間が経ったのかしら?)


『さっきは、昼頃で〜今は夜だよー』


『魔力を使い過ぎたようですね。お陰で、回復速度も容量も増したようですけど』


(えっ!使い切ると容量が増えーー)


「あ、良かった。お目覚めですね」



  私が翡翠、白妃と心話をしていると侍女の方が私の休んでいた部屋へ入って来た。



「陛下にお伝えして参ります。しばらくお待ちくださいませ」


  侍女は、そう言うと綺麗なお辞儀をして部屋を退出した。

  この後、陛下との面会となるのだろう。


  あの少年の事は説明があるのだろうか?


  そう思いながら今一度ベッドに体を預けて、ため息をついた。

続きが読みたい、応援したいと

思っていただけましたら

ブックマーク、評価★★★★★のほど

よろしくお願いします(´∀`*)

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