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32、宮殿の火災2

  燃え盛る炎は、水の護りにより全く熱を感じない。


  翡翠が作ってくれる水の護りを覆う台風のお陰で、私達が近づくと同時に火は鎮火され、煙も飛ばされていく。

  そのため、半径5mはしっかり周囲を見渡せるほど視界良好だ。



(翡翠!声はどこから聞こえたの!?)


『こっち!案内する!』



  翡翠の案内で燃え盛るメレス宮の中を目的の声がする方に走っていく。

  白妃もしっかり私の後を付いてきてくれているので心強い。


  魔法による石造りの建物だからか内部は思っていたよりは形は保っている。

  だが、家具も扉も絨毯などの布製品もよく燃えるし、宮殿となると廊下には絨毯が敷かれ、カーテンも多いためどこも燃えていた。


  窓の少ない石造りの建物は煙がこもりやすいそのせいで翡翠が煙を払ってくれたところ以外は煙が厚くまるで周囲が見えない、その点では悪の状況と言えた。


  翡翠の案内で、どんどん階を上がっては廊下を走る。

 


『フィリー!あの先に居るよ!』



  そう言って翡翠が先行し私も直ぐに追い着くと、そこには自分と同じくらいの年頃の子供が廊下で倒れていた。



(翡翠っ!台風止めて!この子を護りの中に入れるわ!)


『わかった!』



  翡翠が台風を止めるのと同じく私の張った水の護りも一時的に解く。

  周囲の火は鎮火され煙は払われているのに関わらずかなりの熱気と煙たさを感じた。


  私はすぐさま近づいて、風と水の護りの範囲にその子を入れる。



「君、大丈夫!?」



  四つん這いになり話しかけるも返事がない。


  全身煤けていて患部が分かりずらくなってしまっているが、恐らくかなり火傷もしている。



(白妃っ!)


『大丈夫。生きていますわ。私にお任せになって』


『じゃあ、あたいはその煤を落としてあげる!』



  2人が精霊魔法を使うと、少年は咳き込んで目をゆっくり開いた。

  先程は煤けていて分からなかったが、少年は透き通る金髪に金の瞳をしており優しそうな顔立ちをしている。



「…………よかった」



  私は、彼の無事に思わず泣いてしまい、驚きの表情をする彼の頬に涙の雫が落ちてしまった。



「っ!ごめんなさい!」


「っ!」



  慌てて謝罪とともに彼の頬に付いた自分の涙の雫を指で拭うと、驚かせてしまったようで少年の方がピクリと跳ね上がった。



『早く脱出脱出!!』


(他に人は!?)


『生きている人間はもう居ないよ!』


(っ!)



  その翡翠の返事に、この場所のどこかに死体が転がっているのだと実感させられゾクッとした。

  そして直ぐに脱出するため立ち上がる。



「あなたは立てる?」


「うん。大丈夫だ」



  そう問いかけながら右手を差し出したが、少年は問題なく立ち上がった。


  石造りなため倒壊の危険は少ないだろうが、燃え盛る建物の中に長居はしたくない。



(翡翠、皇帝達の居る側の窓まで案内お願い)


『わかった!こっち!』


「ちょっとごめんね!」


「えっ!あっ……」



  燃え盛る建物の中を歩くには、水と風の護りから出るわけには行かないので、少年の手を取って私は歩き出した。


  身体強化をかけている私の走りに彼がついて来れるとは到底思えなかったので、歩いて行くことにしたのだ。

 

  いろんなことが突然起こってまだ混乱しているのか、少年は黙って手を繋いだまま私の後をついて来た。


  窓は翡翠に壊してもらうつもりでいたが、いざ辿り着いてみると、火災のせいで既に壊れていた。



(翡翠、飛び降りるから着地の時の衝撃を和らげて!)


『りょーかい!』


「飛ぶよっ!」


「へあっ!?」



  少年は驚き、そして飛び降りる時には悲鳴を上げた。



「うあっ!ああっ。えええええええ〜」


「「「・*$¥¥/(!?=$+!?;〜!!」」」


 シュタッ


 

  少年の叫び声以外にも外で待機していた人々の叫び声が混ざっていたがなんと言っていたかさっぱり分からない。


  翡翠のフォローのお陰で、4階の廊下から飛び降りたのに階段を5段飛ばしで飛び降りたくらいの衝撃程度しか無い。

  少年も驚きの表情はしているが、特にダメージは無いようだ。


  私は、少年を抱いたまま陛下たちの元へ歩いて行った。

  近付くとその場に居る全員が驚きで固まった表情で私を見ている。

  術師達は火消しの手が止まっているが……良いのだろうか?良いわけ無いと思うが。



「……フィリス」


「……無事……だったのか」



  一番早く再起動したのは、私の力を前もって知っている公爵と話にだけは聞いていた陛下だった。

  2人の反応があってから周囲は歓声を上げた。


  私は陛下の前まで来てから、少年を降ろす。



「父上……うぅ……ひっぐ」


「…………」



  少年は堪らず泣き出し、陛下はただ黙って抱きしめていた。


続きが読みたい、応援したいと

思っていただけましたら

ブックマーク、評価★★★★★のほど

よろしくお願いします(´∀`*)

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