26、久しぶりの面会
公爵が皇城へ戻った後も夢中になって魔法の訓練を続けた。
公爵に魔法を見せる時に火と水と氷は使ったが、他の属性も試してみたかったのだ。
結果的に、風も雷も土も問題なく扱えた。これで、基本4元素の火水風土全て使えるということになる。
そして、どれも先程と同じく広範囲で使えるほどの規模だ。
魔素魔力は元々周囲から集めているだけあって拡散しやすいようで、広域魔法に向いている。
対して、自前の魔力は自分を中心に発動する感じね。どの属性も自分から外へ向けて発動する。
(自前の魔力は自身から放ってるって感じなのよね。あっ!自分と放った魔法を魔力で繋いだままにしておいたら面白いかもしれないわ)
様々な魔法を試していると次々と試してみたいことが湧いてきて切りがない。
夢中になって魔法を試していると訓練場に訪問鈴が鳴った。
公爵に迎えが来た時にも鳴ったものだ。
今は、魔法訓練施設に私しかいないので間違いなく私への来客だろう。
しかたないと思って、思いついた魔法を試すのを中断して玄関へ向かうと苛立ちの表情をしたリリアが立っていた。
「いつまでここに居るんですかっ!!ずっと、外で控えてたのに全然出てきませんし!もう外も暗いのですよ!?夕食のお時間です!」
「ひゃい!?え……ずっと待ってたの?」
「そうですよ!!ずっとです!出来たばかりの施設の視察という事で訪れて少し中を見学と言って公爵様と中にはいられたかと思えば……」
「あ……あちゃ」
「あちゃじゃないですよ!どれだけ待っていたと!公爵様はお帰りになられたのにフィリセリ様は全然出てこられないので探索でもしているのかと気長に待っていましたが!」
「ごめんなさい!つい……夢中になってしまって」
魔法の訓練にとは言えず言葉を濁して謝罪したが、なぜ遅くなったかはどうでも良いようでリリアはすんなり許した。
「いいです。待つのも私の仕事のうちですし?はじめての来訪だったので楽しいのは仕方ないです。さぁ、夕食へ行きましょう」
施設としては全く探索していない。
それに初回だから今回特別遅かったというわけではなく、今後もすぐ夢中になりそうな気はするが余計なことは言わないでおいた。
****
夕食を取りに食堂へ行くと食堂の中でカチャカチャと食器を用意している音がする。
食器の用意は食事する者が席に着いてから始めるもの。
私は、まだ食堂へ来たことを知らせてもいないので私の分を用意している訳では無いはず。
リリアに扉を開けてもらって食堂へ入ると、席にはここ2ヶ月以上会いたくても会えなかった人が居た。
「あら、フィリスもこれから夕食だったのね?」
「っ!お母様!」
母様の姿を認めるなり、すぐに駆け出して抱きつきたいのを食堂は駆けるべきではないと自制して歩いて近づく。
「お久しぶりです。お母様……お元気そうでよかった」
「フィリスも元気そうで……良かったわ」
お母様はそう言って優しく微笑むと私に席へ座るよう促した。
「ファディールも産まれて2ヶ月以上経ったから、乳母だけに任せて時々休んで良いということになったの。それで、今日の夕食は息抜きにこちらへ来たのよ」
「言ってくだされば予定を合わせて同席する事も出来ましたのに……」
「うふふ。同席は叶ったのだからいいじゃない。最近は、より一層頑張っていると聞いているわ。無理はしていない?」
「はい!今は、やりたい事も見つかってとても楽しいのです!」
「そう……それは良かったわ」
その後、食事が運ばれてきてからもお母様に促されるまま近況報告をして、その度にお母様は嬉しそうに頷いてくださった。
終始自分の話ばかりをしている事に気づいたのは、最後のデザートが運ばれてくる頃だった。
「そうだ。ファディールはどうしていますか?元気に成長していますか?」
「ええ。元気よ。まだ、首は座らないけれど最近はこちらの声掛けによく笑って応じてくれるわ」
「ふふっ。社交的なようで、公爵家の嫡男として優秀ですわね。はぁ……私もファディールに会いたいです」
「もう少し成長したら会わせてあげるから、楽しみに待っていてちょうだい?」
「はい!お母様」
久しぶりの母様との夕食は、とても楽しい時間になった。
やっぱり家族と過ごすあたたかい時間は、かけがいのないものだなと思った時間だった。
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