22、協力者
この辺りは連続しないと話がまとまらないので今日は2話投稿しました(〃ω〃)
食堂で公爵に素直な思いを伝えて、お互いのわだかまりを解くことが出来た。
ここ数ヶ月、ずっと悶々としながら勉学や運動、魔力操作の訓練に没頭していたので心が晴れやかなのは本当に久しぶりの事だ。
(なんでもない大丈夫なんてずっと思ってたけど、思ってた以上に気にかかっていたみたい)
「なぁ……フィリス」
「なんでしょうお父様?」
「私が力になれる事があれば言うといい。必ず叶えられるとは約束できないが、できる協力はさせてもらう」
「お父様……」
恐らく、今までも口に出さなかっただけでそう思ってくれていただろう。
魔力操作の訓練をしたいと収魔ブレスレットを外す許可を得る際に、直ぐに許可をして他の事も手配すると約束してくれた時から感じていた。
でも、それをあえて口にしてくれたことで公爵は自分の味方で居ようとしてくれているのだとやっと自信を持って思えた。
(魔法を使う訓練もしたいと思いきって言ってしまおうかしら……)
魔法を使えるようになるのは5歳。既に4歳なのだからそのくらい我慢しろと言われるに決まっている。
でも、既に魔力操作はまるで問題なく、あとは圧縮を重ねたり、回復速度を上げる毎日の積み重ねの部分だけだ。
どちらも呼吸する如くながら作業で行っているので、ちゃんと魔法の訓練を別にやりたいと正直思っている。
「やりたい事があるなら言いなさい」
「えっ?」
協力すると言われて口を噤んだので、何かしら要求があると思われるのは分かる。
だが、なぜ要求が物ではなくやりたい事であるとわかったのか私には不思議だった。
「魔力操作の訓練を許可してからも物足りなそうな様子だと聞いていた。お前の才能はそんなものではないのだろう」
公爵は魔力操作の訓練を許可する前から影に日頃の様子を伝えさせて、日々の成長や様子を聞いていた。
仕事が忙しく屋敷に戻ることは滅多にないが、一人娘の私の事を常に気にかけていたのだ。
「もっとやりたい事があるんじゃないのか?それも、曖昧な想像ではなく具体的な未来構想として」
「そんな……ただの4歳児を買い被りすぎですよ」
「とっくにただの4歳児だなどとは思ってはいないさ」
自分の事を読まれすぎて怖くなり適当にはぐらかそうとすれば、公爵は笑ってそう言った。
ひとしきり嬉しそうに笑うと、公爵は真面目な顔になって私に向き合った。
「全てを話せなどとは言わない。お前は話せること話せない事をちゃんと自分で判断してるようだからな。ただ、協力できる部分はさせてくれ、私はお前の味方でいたいと思っている」
「お父……様」
その言葉に彼女は目頭が熱くなって今にも泣きそうになったが、グッと堪えて目に涙を浮かべたまま公爵に向き合った。
「私、魔法を使いたいです」
「魔術か……」
「5歳になれば始められる事はわかっています。でも……実は、魔力操作の訓練はずっと前からしていてもう出来るのです」
「ずっと前?偽の収魔ブレスレットを作る前か……東屋で魔術を使った事があったな?」
「やはりご存知でしたか……。それより前、3歳の頃から魔力操作の訓練は始めていました」
「3歳から魔力操作を!?」
公爵は信じられないという顔をしたかと思うと俯いて眉間を指で摘んだ。
「どうやら私が思っていた以上にお前は魔術の天才らしい……。では、東屋で魔術を使った時はまぐれで魔術が発動してしまった訳ではなく、自ら操作して扱ったものだったと?」
「そうです。それにあれは、魔法は魔法でも身体強化です」
「身体強化……だと、身体強化は単純な魔術よりさらに高度な魔力操作が必要なはずだが」
「そうなんですか……でも、私には必要だったのです」
「必要……?」
「身体強化でもしないと、まともに武術を学べませんもの!」
私がそう高らかに宣言すると、公爵はしばらく停止した後大笑いし始めた。
「……くっ。はははははっ!フィ……フィリス、お前は文武両道を目指すために魔術まで磨いていたと言うのか!くっははは!」
「そ、それだけではありません!初めは確かに身体強化が目標でしたが、今は魔法自体が楽しいのです!」
「わかった。わかった。そうか……で、魔力操作の方は完璧なのに魔術の使用は禁じられているから、それがとてももどかしいと?」
「……はい」
公爵は、相手の言いたいことをすぐに読み取って解釈する。そういうところが彼が宰相として有能に働いていられる所以なのだろう。
「わかった。いいだろう。なら、お前用に訓練場を作ってやる」
「訓練場を?」
私は、思わず首を傾げた。
「そうだ、共有の訓練場では誰と鉢合わせるかもわからんし誰に見られるかもわからんからな。フィリスしか入れない訓練場を作ってやる。もちろん私は入れるがな」
自分だけが入れる魔法訓練場。この上なく欲しいものだ。
遠距離移動の精霊魔法を使ってまでどこかで魔法を使いたいと思っていたのが、まさかこんな形で叶うとは本当に夢のように思えた。
「いいの……ですか?」
「できる協力はすると言っただろう?訓練場は魔術使用にも耐えられるようにしっかり作らせるから安心しなさい」
「ありがとうお父様!!」
「訓練場造りは急がせるがしばらくかかるだろう。それまで待てるか?」
「はい!お父様!!」
先程よりさらに強く公爵の事を抱きしめながら喜びを感じていた。
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