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21、仲直り

 誘拐から2ヶ月と経った。その間、特に問題が起きることも無く私もより一層魔力操作の訓練を励み上達していった。

  だが、公爵と私の心の壁にも変化はなく、元々接点が少なかった事もあり全く顔を合わせることなくこの2ヶ月を過ごしていた。



(もう素直になってもいいんですけどね……顔を合わせる機会もありませんし、会ったところで会話なんてありませんもの……)


『まーだ気にしてるのか〜』


『仲直りしたいという事でしょう?でも、精霊魔法の事を説明しない以上、わだかまりは消えませんからねえ』


『あんまりフィリーがグチグチ言って暗くなってると、またキアンがしょげるぞ?』


(ゔ……そうですね)



  希闇はあの一件を自分がなんの配慮もせず屋敷に直に送ったせいだと言い、私がため息を着く度に責任を感じている様子だった。


  けれど、遠距離移動の精霊魔法の事は言わずに居て気まずいからと軽々しく言っていい問題では無い。

  その事は、私も重々わかっているため今のわだかまった状態になっている。



『もう全部言っちまえば?そしたらスッキリするんだろ?』


『精霊魔法の事を伏せていて心苦しい事も含めて、真剣に向き合って話せばわかってもらえるのでは?』


(心苦しい事も含めて真剣に……)


『当たって砕けろって事だな!』


『砕けるのは2人の心の壁ですわね』



  2人の言葉で心を決めた私は早速リリアを通して公爵に面会をしたい旨を伝えてもらった。


  公爵の日程の都合もあり、面会は2日後の夕食時にという事になった。



 ****


  私は、面会のために食堂へ向かう。まだ、どう思いを伝えたらいいかも纏まらず足取りは重たいままだ。

  食堂へ入る前に1度、溜息にも近い深呼吸をして中に入る。

  食堂に入ると、何時ぞやと同じく公爵が先に席について待っていた。



「お待たせ致しました」


「いや、待ってはいない」



  以前、夕食を共にした時より幾分か柔らかい返事が返ってきた事に少しだけ安心する。



「まずは、食事をしよう。話はゆっくりで良い」



  公爵にそう促され、静かに食事を始めた。



「……」


「……」



  以前食事をした時は、勉学や運動の進捗を聞いたり答えたりしていたが、今はそれすら無い。

  2人とも話し始めるきっかけが見つからないまま無言の夕食を続けた。


  夕食を一通り食べ終え、デザートと温かい紅茶が並べられてから公爵が口を開いた。



「話とは……あの一件のことか?」


「……はい」


「話してもらえると?」


「それは……」



  ここで言葉を濁しては、結局あの時と変わらない。精霊たちの言葉を思い出して、一息置いてから私は改めて話し始めた。



「手段は話せません。知られればきっと国どころか世界が混乱すると思います」


「っ!……それほどなのか」



  それほどの規模の話とは思ってもいなかったようで公爵は言葉を詰まらせた。

  だが、無理に聞き出すようなことはなくひたすら私の言葉を待った。



「お父様の事は信じて話してしまいたいとも思いました。けれど、どこに耳があるかもわかりませんし、誰かに知られたら私は……」


「……間違いなく多くの者に狙われることになるだろうな……。警戒して当然だろう。世界規模で揺るがすほどやもしれないとなれば……」


「……言えなくてごめんなさい」


「いや、いい。それは言わぬ方が利口だろう。それと、謝罪すべきは私の方だ」


「そんなお父様はーー」


「フィリスの口外出来ないそれは、まだ誰にも知られていない。となれば、フィリスが拐われた原因は間違いなく親族が他の貴族にお前のことを言いふらしたせいだ」


「……」


「それを口止めしなかった私にも責任がある。本当にすまなかった」



  確かにそれがあの誘拐の原因だろう。直接の原因では無いだろうが私の存在が外部に漏れたことが今回の誘拐を招いた。

  けれど、広まった噂は既に回収など出来ず今さらどうしようもない事だ。



「お父様は私が奇っ怪な事をしていたというのに深く聞かないで居てくれました。影を付けて、私を見守ってくれていました。屋敷の誰も気づいてなかったのにお父様だけは心配して駆けてきてくれました」


「……」



  公爵のしてくれた数々の事を思い起こし、言葉にすればただひとつの感情しか湧いてこなかった。



「私は……お父様に、感謝しています」


「フィリス……」


「お父様は私に少なからず申し訳なく思ってくれていて、私はお父様の数々の配慮に感謝していて……もう、いいじゃないですか」


「……許してくれるのか?」



  それでも公爵の瞳は自信なさげにに揺れていた。

  私は、返事の代わりに席を立ち、公爵の元へ歩いて行き、抱きついた。



「許してますから、安心してください」



  私がそう言うと公爵は、安堵のため息をついて私のことを抱きしめ返した。

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(´∀`*)

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