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18、無事の帰還

 闇の精霊希闇のおかげで、誘拐されたその日のうちには屋敷に戻ることができた。

  だが、世間にはまず知られていないであろう闇の精霊魔法による、遠距離を瞬時に移動してしまう手段で帰ってきた。



(……知られるわけにいきませんよね)



  遠距離を瞬時に移動。


  多量の魔力が必要な事や契約者一人くらいしか移動できないとしても、その事実だけで話の尾ひれは勝手に付いて軍事利用等を疑われるかもしれない。

  人にその力を知られるのは、あまりに身の危険がありすぎる。



『フィリーー!』



  無事帰還したが帰ってきた方法をどう誤魔化そうかと考え込んでいると、翡翠が私の元に飛んできた。



『よがっだ〜。ずっとどこ居るんだか分からなくて、ついさっき部屋の中にフィリーを感じて……グスグス』



  翡翠は泣きじゃくりながら庭で別れたあと闇の精霊に会いに行ってしばらくした頃、私の消息が分からなくなり心配していたと言う。



(心配かけてしまってごめんなさい。私は大丈夫よ。闇の精霊が助けてくれたの……翡翠のおかげだわ)


『あたいは何も…ぐすん。白妃は光がないから今すぐは来れないけどあたいから言っとく』


(ありがとう翡翠)



  ひとまず、精霊たちにはこれで無事を伝えられたが、家族に闇の精霊魔法のことは伏せてどう説明したら良いか。

 


(翡翠……闇の精霊、希闇って名付けたんだけど。彼の精霊魔法のおかげで戻って来れたの)


『あいつ希闇って名前がついたんだね!契約したんだ!』


(うん。それで、人間にとってはその精霊魔法は知らない方がいいと思うから伏せたまま無事を知らせたくて……。でも、絶対に理由は聞かれると思うの)


『精霊隠しにあったとか言っとけば?』


(精霊隠し?)


『そーそー。突然子供が消えた〜とか言って、本人にもわからずパッと戻ってくる事』


(夢の中の話でいう神隠しか……)


『ま、実際は精霊が人間の子供と遊んで精霊界に連れて来ちゃって、怒った長老が記憶消して送り返してるだけなんだけどね〜』



  どうやら神隠しと違って原因はわかっているようだが、要は突然消えて戻ってきたが本人には一切の記憶が無い。というのは共通のようだ。

  結局、知らぬ存ぜぬで通せばいいということになる。



『適当に部屋の床に倒れてればいいんじゃない?』


(適当にって……起きているのが見つかってしまうわ)


『なら寝とけばいいよ。キアン〜!フィリーを寝かせてー』


『わかった』



  翡翠が希闇を呼べばすぐに返答があった。


  直後に私は急な眠気に襲われ、その場で眠りについた。



 ****


  次に目覚めた時は、自室のベッドだった。

  リリアが着替えさせてくれたのか服も寝巻きに変わっている。



「夢……だった?」



  私の呟きが聞こえたのかリリアが部屋に来て、ベッド脇に駆け寄ってきた。



「っ!フィリセリア様!良かった……」


  そう言いながらリリアは安堵のため息をつきながら手を握った。

  だが、次には声を荒らげ始めた。



「もう!本当にどこに行ってたんですか!それとも隠れてたんですか!?」


「え?」


「庭へ息抜きに行くと言ってからいつまで経っても戻らないからどれほど皆で探したか!結局、部屋に居るし!何故か床で寝てるせいでドレスも皺になって!」



  どうやら誘拐にあった事すら知られていなかった様子。

  こうなると午後に姿を消し、夜に自室で見つかったという事実だけ残る。



  あれだけ恐い思いをしたのに、私がおふざけしただけだと思われてるってことですよね……?



  とても釈然としないが、勝手に誤解してくれていれば闇の精霊魔法の事は知られずに済む。

  誘拐の事自体が知られないのは犯人達のことを調べてももらえないという事で問題だが、精霊魔法の事を知られるのはさらに大問題なのだ。

 


「………」


「聞いてますか!フィリセリア様!声をかけても起きないので勝手に着替えさせてもらいましたよ?寝入って全然起きないんですものーー」



  せめてもの抵抗にひたすらリリアの質問には無言で応じ続けた。

  苛立ちで単に口を聞きたくなかったのもあるが、元々知らぬ存ぜぬを通す作戦だったのだ。初志貫徹である。



  屋敷の中では、私が日中に悪ふざけで姿をくらまして自室で夜見つかった事がしっかりと共通認識になっていた。



  日頃、自身に厳しく信じられない集中力で勉学に取り組み、各訓練に挑む彼女は使用人達にとって得体の知れない生き物のように思えてきて居た。


  だが、彼女が珍しく年相応な事をして罰悪く口を詰むんでいる様子を見た使用人たちは、やはり幼い子供なのだと微笑ましく彼女を眺めた。

  そんな使用人たちの反応も彼女がさらに唇を尖らせる原因なのだが、その様は愛らしさを増すだけだった。

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(´∀`*)

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