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52、ランク上げと彼の人の帰還予告

  今、私達はギルド長に呼ばれてレストルーチェ支部の2階の部屋へと向かっている。


 コンコン



「ギルド長。Cランク冒険者フィル並びにそのパーティメンバーをお連れしました」


「おう。入れ」


「失礼しま……、え?ブラビアさん?」



  ギルド長の席に座っている男は、レストルーチェ公爵家の騎士団長ブラビア・ソニールズによく似ていた。


  ブラビアが髭を多く生やして、グレーの目をしていたら瓜二つだ。



「あ?あいつを知ってんのか?」


「(は?フィル、領主様のとこの騎士団長様と知り合いなのかよ!?)」



  カルがギルド長の前にも関わらず、私に近付いてきて耳打ちする。



「(いや、あの……)」


「ま、あいつは領主様の屋敷の騎士団長なんざやってっから、そりゃ目立つか。俺はあいつの双子の兄、ブラジマだ。家名はねーぜ?ありゃ、あいつが公爵様から賜ったもんで俺のじゃねーからな」


「はあ……双子のお兄さん」


「『お兄さん』なんて言われるとなんかむず痒いな。んで、なんで呼ばれたのか分かんだろ?」


「今日の収穫が多かったからか?」


「多かったからなんてもんじゃねーだろアホが」


「アホ言うなよオッサン!」


「ちょっ、カルっ」


「オッサン言うなアホ!」


「もぉ……」



  ギルド長に対して失礼な物言いをカルがするから注意すれば、ギルド長のブラジマも同レベルな言い返しをするので呆れる。



 コンコン



「レンズです」


「おー、入れ」


「……また新人をからかったんですか?」



  レンズ・フリーデス副ギルド長の目線の先には、未だにブラジマを威嚇するように睨むカルが居る。

  彼の物言いからして、こういった事は日常茶飯事のようだ。



「ご愛嬌っつーやつだ。ま、いいじゃねーか。んで、こいつらが半年分以上のグリダ草を1度の採集で終えて来て、更に魔物を狩りまくってきた大型新人だ。こいつらの内、フィルってのはお前が言ってたやつだろ?」


「ええ。お久しぶりですねフィル。相変わらず、活躍なさっているようで」


「はい。お久しぶりです副ギルド長」



  レンズ・フリーデスは目で『私の祖父には会いに行ってくださらなかったのですか……』と言うが、私は目線をそらして気づかなかった事にする。



(あなたのお爺様には会いましたし、なんならお手製のカツラまで贈りましたよ……フィリセリアとしてですけど)


「おいフィル。お前、Bランクになるように言われてんだろ?まだその気になんねーのか?」


「Bランク……でもーー」


「俺としちゃあ、お前がそいつらと今後もパーティ続けるつもりでいるなら皆まとめてワンランク上げていいと思ってんだ。お前がBランクになるならな」


(そんな、2人の出世が私にかかってるみたいに言われてもっ!)



  2人の顔を見れば『ランクは上げて欲しいけどフィルを困らすことは出来ない』と思っているのが明白だ。



「フィル君がランクを上げたいと思わないのは、護衛依頼を出来ない事情でもあるからですか?」


「ええ。まぁ、諸事情で日帰りの依頼しかこなせないので……」


「ふむ。では、その点は免除でいいでしょう。護衛依頼の経験無しでBランク昇格にしましょう」


「え!?あの……でも、高ランクになるとギルドからのお願いが来たりとかもあるんですよね……?それはちょっと……」


「その点も問題無いでしょう。既にレストルーチェ公爵のお抱え冒険者なのですからギルド側から無理に依頼する事はありませんよ」



(日帰りのみで良くて、ギルドから強制依頼される心配もなくて、ランクを上げられる?)


「なら……問題ないかも」



  そこからは初めからそのつもりでしたという感じで、ギルドカードを預かられたと思ったらすぐに新しいものを3人とも渡された。



「なんなら、複数パーティ合同護衛依頼でもこなしてくれりゃあ実力さえあんならAにしたっていいんだがなぁ〜」


「え、Aは……」


「がははっ。ジョーダンだ!Bに上げたその日のうちにってこたぁねーよ!ま、そのうちな!」


「欲を言えば、今後もレストルーチェ支部を贔屓にしていただきたいですね。これからもよろしくお願いしますフィル君。カル君、レン君も期待していますよ」


「は、ハヒッ(噛んだ……恥い)」


「精進致します」



 ****


  私達はギルドを出て直ぐに、森で待つ飛竜に乗って帝都へと帰った。

  帰る頃にはさすがに日が暮れて来ていて、私達は慌ただしく解散する。



「じゃあまた次のパーティ活動の日に!」


「おう!またな!」


「ではまた今度!」



  私は問題なくBランクに上がれた事、問題なく飛竜による遠征が出来たことで浮き足立った気持ちだった。


  だが、夕食の席で父様から告げられた言葉でその気持ちが一転する。



 ****


  夕食を皆食べ終えた後は、家族共通の連絡を伝えるのが恒例となっている。


  久しぶりに家で夕食を終えた父様の表情は暗かった。


「ダビッド殿下が遠征を終えられて、帝都へお戻りになる」


「遠征、無事に終えられたんですね」



  なるほど、問題の皇子が帰ってくる事になるから暗い表情をしていたのだと思った。


  だから、私も『ダビッド殿下とうとう帰ってくるのね 』といった落胆とともにそう返事を返したが、父様の表情が暗かった原因はそれだけではなかった。



「無事……では無いな。聞くところによれば、帝国に帰ってこられるのは数名と殿下のみとの事だ……」


「え……。ああ、事後処理や村人の手伝いに大半をーー」



  私の言葉に父様は首を横に振る。



「残りは皆死んだのだ」


「そんな……そんなに酷いものだったのですか!?」


「事前に聞いていた情報では、そこまで騎士団に被害が出るほどの規模では無かったのだが……」


(殿下の指揮が悪かったの?魔物の状況が急に変わったの?感染病や他の不測の事態が起きたの?)



  さらに聞けば、救援を求めて来た村もほとんど救えずに壊滅してしまったらしい。

  残った村人達は、近くの大きめの町で預かってもらえたようで事後処理や村人の世話はそちらで行ってもらっているとの事。



「殿下がお戻りになるのは、2週間後くらいになる」


「わかりましたわ」


(……ダビッド殿下もそのような状況から帰ってくるのでは、かなり気落ちしている事でしょうね)



  でも、自分の未来に訪れる何かはそれを遥かに超える悲劇の可能性もある。

  他人事にして呑気にはしていられない。


  私はより一層、剣術、魔法、魔術、魔法の研究、今出来る訓練全てに力を注いだ。

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