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50、飛竜と採集依頼1

  気温の高い日も増えて、日差しは少し強いように思うが、晴天の空には涼しい風が流れている。



(良かった。初の遠出にぴったりの天気だわ)



  今日は久しぶりの冒険者活動の日。


  そして、2人に初めて飛竜達をお披露目する日だ。


  私がいつも通り早朝にギルドへと赴くと、2人は既にギルドに来ていた。



「おはようございますフィル。おや、髪型を変えたのですね?いいと思いますよ」


「おっ?フィルか?髪短くなってサッパリしたな!いいじゃんか」


「ありがと2人とも」


「んじゃ、フィルも来た事だしいつもの森の依頼でも探してーー」


「待ってカル」



  会ってすぐに髪型を褒めてくれる2人に礼を言うと、すぐさまカルが近場での依頼を探し出したのでストップをかけた。



「なんだよ?」


「ふっ。この前の話、覚えてる?」


「まさか、もう遠征用の足を見つけたんですか?」


「まじか!あの馬より早いのを探しておくって話か!」


「その通りですとも!」


「どこだ!?でも……んー?表にもそれらしいのは居ないぞ?」


「ここには連れてきてないよ。待機させてある場所は近いんだ。2人とも1緒に来て」



  私は2人を連れて、帝都郊外にあるレストルーチェ公爵邸へと足を向ける。


  徐々に帝都の中心部からは外れて行くのだが、それでも明らかに貴族街側である事にカルは、緊張している様子だ。


  お披露目会の際に訪れた事のあるレンは、どこに向かっているのかすぐに気付き、私の元へ走り寄って来た。



「フィル、もしかして待機って邸宅に?」


「うん。実はね……」



  私はレンに父様からフィルとして冒険者活動をする事を認めてもらった事、公爵家のお抱え冒険者として取り扱ってもらえる事になったことを話した。



「ごめん……公爵に隠していたとは知らず。僕ーー」


「大丈夫。結果的に認めて貰えたし、僕のことお父様に伝えていたのは君だけじゃないし。むしろ、ありがとう」



  公爵家に着くと、門番には予め父様が冒険者フィルの事を伝えていたようで素通りさせてもらえた。


  そのまま、真っ直ぐに飛竜達の待つ厩舎へ向かう。



「ちょっ!ちょっと待てよ、フィルっ!ここってお貴族様の御屋敷じゃねーのか!?なんで入れんだよ!てか、なんで入るんだよ!?」


「んー。簡単に言うと、僕がここの貴族様のお抱え冒険者で、これから移動に使う生き物がここの厩舎に居るから?」


「なんでそんなことになってんだよぉっ〜!ちくしょ〜。なんかレンは冷静だし……あっ!さっきコソコソ話してたのはそれ聞いてたのか!ズリィ〜!」



  貴族の邸宅敷地に入っている事に混乱しているカルが一人で騒ぎ続け、私たちは厩舎の前まで来た。



(みんな!私の仲間を連れて来たわ。脅かさないであげてね)


『はーい。そっちにも攻撃しないでねって言っといて〜』


(了解よ)


「2人ともこれから小屋に入ってご対面だけれど、びっくりしても大きな声出して驚かせたり、いきなり攻撃したりしないでね?」


「いきなり攻撃とかするわけないだろ。平気だから早く見せてくれよ」


「約束しますよ。大丈夫です」



  私は2人の返事を聞いてから飛竜達の居る厩舎の戸を開けて中に入った。



「クルルルル『はじめまして!』」


「クァ〜『こんにちは〜』」


「ひっ……んんっ。(ちょっと待てよフィル!?これ、これって!)」


「……飛竜」



  飛竜達が友好的にカルとレンに声をかける中、当然のように2人は驚き混乱したが、約束通り大声を出すようなことは無かった。


  私はカルに腕を引っ張られて、厩舎の外へ出た。



「フィル!乗り物が飛竜ってどうなってるんだよ!?」


「馬より早いし、空なら障害物気にする事ないからうんと遠くまで行けるでしょ?」


「でしょ?じゃねーしっ!うあぁ!人生で飛竜に乗ることがあるなんて思ってもなかったーーー!」


「僕も……正直、驚いてます」


「でも、これで遠征しやすくなるよ?完璧でしょ!」



  私が自信満々な態度を取ると、2人は呆れと諦めを含んだ表情で見合わせてから、ため息を吐いた。



「……フィルだもんな」


「そうですね……」


「もー!嬉しくないの?2人とも」


「嬉しいさ。ほんとに人生のうちに1度でも乗れるとは思ってなかったからな」


「感謝してますとも」



  それから私たちは自分の乗る飛竜を選んだ。


  私はグレ、カルはピレ、レンはレニを選んだ。


 

 ****


  飛行の際の風の抵抗を抑える為に翡翠に風の膜をそれぞれにかけてもらった上で向かったのは、レストルーチェ領にある魔物の多い森だ。


  馬車でなら3日かかる道程も飛竜で空を飛んでいけば半日で着いた。



「すげえ……フィルがレストルーチェ向かうって行った時は無理だろって思ったけど、マジで着いちまった」


「本来、帝都からレストルーチェ領までは3日くらいかかりますよね?」


「うん。でも、半日で済んだね!この子達のおかげ」


『えへへ〜』



  私が褒めながらグレを撫でるとピレとレニが羨ましそうな様子だったので、そちらも褒めながら撫でてあげた。



(試しにレストルーチェ領までどのくらいかかるのか試したけれど、なかなかいい感じだわ)


「ふむ……。これだと四公爵家領地といくつかの他領地は半日で移動可能になりますね」


「四公爵家の領地ってどこも馬車で3日くらいなの?」


「いえ、ライダンシェル公爵領は移動しやすいように領主直々に手を加えてきたので馬車で2日程で着けますが他は違いますね。ガルマ公爵領は国境線ギリギリにあるので単に遠いですし、ナディル領は山を越えなくてはなりません」


「まぁ、どの道にしても真っ直ぐじゃねーし、馬を途中で休ませたり交換したりするからなぁ〜。ほんとすげーな飛竜」



  カルは自分を連れてきてくれたピレの体をポンポン叩いて褒めた。



「クルルル『えへへ褒められた』」


「ははっ!なんかこいつが可愛く見えてきたぜ」



  レンも飛竜に慣れたようで、自らレニに近づいて体を撫でている。



「飛竜達は疲れていませんか?飛竜達の食事は……」


(みんな疲れてる?ご飯どうしようか?)


『『疲れてないよ〜』』


『ご飯はその辺の小鳥とか兎でいい〜』


『僕は川で魚でも食べようかな〜』


『あっ、いいなぁ!私も川で魚食べる〜』



  飛竜達から疲れは全く感じられない。


  それどころかあと何度か往復しても余裕を見せそうな3頭に頼もしさを感じた。



「大丈夫。疲れてはいなそう。食事も心配ないよ。自分達でその辺の小動物や川の魚を探して食べるから」


「おいおい。飛竜を放して大丈夫なのか?」


「大丈夫だよ。呼べば来るから」


「そういう問題か?」


「ん?危なくなったら自分達で飛んで逃げられるよ?」


(まぁ、一応安全のために翡翠、白妃には飛竜達と一緒に居てもらいたいけれど)


『了解だよ〜』


『承知しましたわ。この子達が万が一怪我でもしたらお任せ下さいな』



  私達は降り立ったレストルーチェ領内の森に3頭を放してから、冒険者ギルドレストルーチェ支部へと向かった。

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