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49、公爵家での過ごし方

  すぐにでもカルとレンに冒険者活動の足が出来たことを伝えたいところだが、冒険者活動を3人で行う約束の日までまだ日数がある。


  今度の冒険までのお楽しみだなと思いながら、今は魔法訓練場で飛行魔法の練習中だ。



(飛ぶの自体は岩山でだいぶ慣れたけれど、戦闘でも活用できるほどにはなっていないものね。でも……)



  普段の地上戦で素早く動き回れるのは、全身身体強化のおかげだ。

  だが、魔力の塊で作ってある魔力翼に身体強化をかけることは出来ない。



(うーん……今度、ガミルダにコツでも教えてもらおうかしら?)



  ガミルダは飛竜と違い、翼を羽ばたかせて飛ぶのではなく魔力で飛んでいるので魔力を使って飛ぶという点では同じだ。



(あ、でも……ガミルダは自身の翼に魔力を込めるから身体強化に近いと言っていたわね……。聞いても同じ答えしか返ってこなそうだわ。……ダメもとで同じようにやってみましょうか?)



  魔力翼を自身の翼であると思い込んだ上で、身体強化の時のように魔力翼を更に上から魔力で包む。


  試しにその状態で飛んでみると先程までとは明らかに速度が違った。



「できたわ!これなら、空中戦闘も充分に出来る」



  後は、この速度で飛びながら剣を扱う事や攻撃魔法、魔術を撃つ練習を重ねる事にした。



 ****


  午後は錬金術をするつもりだが、父様に頼んだ魔法訓練場横の錬金術用の建物はまだ完成していない。


  頼んだのがたった2日前なので出来ていなくて当たり前なのだが、さすがは父様。

  手隙の宮廷魔術士を呼んで土魔術で大まかな所を作らせたので、既に建物自体は完成しているのだ。

  今は、錬金術に使う備品を取り寄せているところで、内装まで完全に仕上げてから私にプレゼントしてくれるつもりらしい。


  なので、今日は自室で錬金術を行う。


  今日作るつもりなのは、冒険者活動用のカツラだ。

  レンにフィルがフィリセリアの男装だとすぐにバレてしまったので、何とか仮装レベルを上げようと思うのだ。



(魔術付与はまだ習っていない範囲だけれど、一応の予習は済んでいるもの。魔法士である私になら独自なやり方で何とかなるような気もするわ)



  まずは学院長マイヘア・フリーデスのカツラを作った時のように、シャルトウルフの毛皮でカツラを作る。


  私の普段の髪がくせっ毛なので普段の私と別人に見えるように、カツラはストレートヘアの短髪で作成。


  試しに風魔法で髪を纏めて、作ったばかりのブルーグレーのカツラを被ってみる。


 

(良いわね。でも……学院長とまるで同じ色だから、血縁者のように見えてしまうわ)



  私は、机にあったインク壺とカツラを並べて再び錬金術を使う事で、ブルーグレーだったカツラの色を濃くして、ブルーブラックへと変えた。


  パッと見は黒髪のように見えるがよく見ると青がかっている。



(私の髪を薄目の色と思っている人が多いいからこの方がいいわね)


『我もその色はなかなかいいと思う』


(希闇の属性、闇に近い色だものね)



  後は、このカツラが激しく動き回る冒険者活動の中でも落ちたりズレたりしないようにするだけだ。



(頭にカツラを貼り付ける感じかしら……?付けばいいのよね……)



  魔術陣付与では、関連した属性魔術陣を元に更にどのような効果をもたらすのか描き加えて作る。


  風魔法で髪を纏めはしたが、風は固定には向かない。

  貼り付ける目的ならば、近い属性は水か闇だろうか?


  水の集まりが溜まる性質、闇の常に何かに付属する性質。

  闇の方が近いように思うが、物を貼り付けておけるものだろうか?



(もたらしたい効果を描けばいいのなら、いっその事『付』1文字とかなら楽ですのに)


「こんな感じで……」



  私は人差し指の先に魔力を溜めて、作成したばかりのカツラに『付』と書いた。



「これで付いたら楽ですのに」



  そう言って私はそのカツラを頭に乗せる。


 

「……本当に?」



  カツラを被った瞬間に明らかに先程よりもしっくりくる感覚がして、まさかと思い頭を左右にブンブンと振った。



(……落ちない)



  次に、カツラの髪を掴んで外そうとしてみる。


 ギッ



(……と、取れませんわ!?)



 コンコン



「フィリセリア様。ファリシア様が一緒に午後のティータイムをと仰ってます」


「あっ、まっ……待ってリリア」



  私は焦って更にカツラの髪を引っ張ってみるが、まるで外れる様子がない。



(どれほどしっかり付いているというの!もう!)



  いくら焦ってもカツラの抵抗はまるで変わらない。



(あ……付与魔法でそうなったなら、魔力で解決するものでは無いかしら?)



  私はひとまず落ち着いて、手のひらに魔力を溜めてからカツラに手をかける。

  すると、さっきまでの抵抗は一切なくスルっとカツラは取れた。


  私が取れたカツラを一通り観察してみても、カツラに先程書いた『付』の文字は見当たらない。



(なるほど、魔力で書いた魔力付与は1回限りの効果で魔力を加えると解除される。という事でいいのかしら……何度か試さないと分からないけれど、このやり方は使えそうね)


「あっ。お母様を待たせているのでしたわ!」



  私はフィル用のカツラを闇収納に入れ、お母様とのティータイムへと向かった。

 


 ****


  母様とのティータイムの最中に、乳母と遊んでいたファディールも私たちの元へ来た。

  ファディールは1歳過ぎてすぐくらいに歩けるようになり、今ではハイハイより立って歩くことの方が多くなってきた。



「ファディもどんどん成長しているわね」


「ええ。色んなものに手が届くようになったから様々な事に興味を持っているみたいなの」


(……手が自由になったなら、手のひらに魔力を集める練習くらい出来そうよね。まぁ、収魔のブレスレットがあるから自由になる魔力なんてちっとも無いでしょうけど……)


「……お父様に相談しようかしら」


「お父様がどうかしたの?フィリス」


「あの……」



  私は、ファディールの収魔のブレスレットを外して魔力訓練を始めてみたらどうだろうと考えている事。

  ガルマ公爵家では幼い頃から収魔のブレスレットなしで過ごして、身体強化を幼少から身に付けることなどを母様に説明した。



「ん〜……確かにガルマ公爵家では1歳頃から収魔のブレスレットを外す練習を始めるわね。けれど、それは武のガルマだからであってそれ以外の血筋で出来る事かは……」


「ガルマ公爵家以外の家がどこも収魔のブレスレットを外さないのは、魔力暴走を恐れてですのよね?」


「ええ。そうね」


「なら、私がファディールの傍にいられる時に魔力操作訓練をしてあげたら大丈夫では無いでしょうか?私が傍にいれば暴走しそうになっても止めめられるかと思いますわ」


「そうね!学院でサランディア令嬢の魔力暴走を止められたフィリスだもの。ファディールの魔力訓練の先生にピッタリだわ!」



  母様も一緒に父様を説得してくれたこともあり、私は手隙の時間を見てファディールの魔力訓練の先生をする事になった。

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