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16、誘拐

 目が覚め身動きを取ろうとすると手足が縛られているようだ、その上で袋状の物を被せられているようで全く身動きが取れない。

  目も布を巻かれていて感覚でしかものを把握できない。


  布を目に巻かれた上で袋に入れられているからか真っ暗な為夜なのか昼なのかも分からない状態だ。

  床は板敷なのか袋越しにも固くて痛く、その上乗り物なのかガタガタと揺れている。



(真っ暗で光がない。袋に入れられているから当然風も通らない……2人どちらも呼べないわ。どうしましょう……)



  心臓はドキドキと高鳴っているが鬼気迫る恐怖に晒されてはいないためか、頭はまだ冷静だった。

  覚えている記憶から、暖色の庭で何者かに襲われてどこかへ運ばれているのだろうということは分かる。

  だが、親族以外に知り合いはいないしお披露目をしていないのだから私の顔は知られて居ないはず。



(いえ、親族が自慢していたとの事でしたからもしかしたら容姿も教えているかも……)



  親族が自慢していたことから自分の事が知られたならば、拐われた原因は容姿?勉学面などの能力値?公爵家という血筋?それとも……。



(噂に上がったという婚約者候補との繋がりが原因?)



  何にしても、まだ社交界デビューをしていない彼女には直接恨みを買うような相手は居ないはずだった。

  そして、お披露目前なので公爵家に長女が居る事を親族やその知り合いしか知らない。

  国の騎士や傭兵、冒険者にたまたま会えても公爵家の長女として信じてもらう事もできないだろう。

  世間に知れていないのだから幼女の妄言だと言われれば終わりなのだ。



(……お披露目前の貴族って思ってた以上に立場が弱いわね)



  屋敷の者が気付いて親族が探してくれない限り外部協力が得られないならば、捜索は確実に遅れることだろう。

 


(身代金目当てならそこまで遠ざかること無く様子を見るかもしれないけれど……)



  公爵家の知り合いになれる貴族、まして公爵家に出入り可能な程の身分の高い者が主犯なのだとしたら身代金など要らないはず。

  もしかしたら、公爵家の能力の高い娘という存在自体を邪魔に思う者が拐わせたなら命も危ういかもしれない。


  そう思うと、私は途端に怖くなってきた。



(どうしましょう……どうもできませんけど。翡翠も白妃も呼べないのに……)



  恐怖に駆られて身動き取れないまま運ばれて行く時間は、とても長く感じた。



 ****


  どこかに着いたらしく揺れがおさまり、近くでガコンという音がする。

  誰かが近づいていた事にドキドキと心臓を高鳴らせながら怯えた。



「そろそろ起きちまってるか?まぁ、もーちいと寝ててもらおうかね」



  近付いてきた何者はそう言うと、袋を開けて私の口元に布を当てた。

  すると私の意識は遠のき再び眠りについた。



 ****


『もう近くに人はいない』


 

  誰かの話かける声が聞こえて私は目を覚ました。

  だが、聞こえた声は知らない声だ。



(誰……でしょう?)


『君の魔力を昨日食べた闇の精霊』


(!そういえば白妃がもう1人居たと言ってました。でも、なぜ……)


『君が風と光、2人と契約したと風に自慢された。だから見に来た』


(み……見に来た?)



  闇の精霊は言葉少なでなかなか言いたいことが分からず問答が長くなるが、今は時間が無い。

  翡翠と白妃が来れない環境で今、頼れるのはこの場にいる闇の精霊だけだ。

  自分の魔力を全て差し出してでも助けてもらおうと私は闇の精霊に話しかけた。



(私は何者かに拐われて身動きが取れないの)


『見ればわかる』


(助けてもらえないかしら、私の今ある魔力を全てあなたにあげていいわ。お願い助けて)


『魔力はいらない』



  闇の精霊にそう言われて今度こそダメかもしれないと彼女は思った。

  だが、闇の精霊はさらに言葉を重ねた。



『魔力は昨日もらった』


(じゃあ……助けてくれるの?)


『助けてもいい、けど君は契約者では無い。助けなきゃならない義務はない』


(そんな……)


『でも、義理はある。契約者になるなら助ける』


(契約……精霊契約してくれるということ?)


『君の名は?そして、私に名を』



  言葉少なで、愛想も良くなさそうだがそんな闇の精霊が今唯一の救い。

  私は心から闇の精霊に感謝して自分の名を告げ、精霊に名を与える。



「私の名前はフィリセリア・レストルーチェ。あなたに付ける名前は、希闇」


『我、キアンはこの名を持ってフィリセリア・レストルーチェと精霊契約を成すことを認める』



  希闇は、契約を成すと私を影に沈めた。



(えっ?えっ?どうなっているの?)


『そうか。見えないからな』



  希闇がそう言うと視界が開けた。


  周囲を見渡しても闇が広がるだけで、頭上には窓のない部屋が見える。

  木箱や麻袋などが屋の隅に置かれていて、普段は使わない部屋なのか埃が多いように思う。

  真上には、先程まで自分が入れられていた物と思われる皮袋があった。



『暗視。見えてるのは影のある所。影のある所、出られる』



  声に反応してそちらを見ると漆黒の光の中に、長い黒髪をゆったりと結んだ目付きの鋭い落ち着いた顔の少年がいた。

  翡翠や白妃は可愛いワンピースに見えたが、彼は同じワンピースでもローマ人が着るようなトーガ型だ。



(……今、影のある所なら出られるって。なら!外に出ることも出来る!?)


『出られる。影が足りない』


(外に出ることは可能だけれど、日中だから影が少ない……という事?)


『そう』


(影は続いていないと移動できないの?)


『そう』



  そうなると日中に身動きは取れないという事だ。

  今は影の中に潜んで居るので、一応の安全確保はできている。

  無理に外へ出るよりも夜になるのを影の中で待った方が賢明だろう。



(陰の中にはいつまで居られるの?夜になれば家まで影を伝って行ける?)


『影の中ずっと。夜は家行ける』



  希闇の返答は、陰の中にはいつまでもいることが可能。

  夜ならば影を伝って家まで移動する事も出来るというものだった。

  それを聞いて、夜になるまで影の中で待って夜間に家までの移動をする事にした。


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(´∀`*)

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