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37、誕生日と討伐隊の現状

  母様と雑談をしながら過ごすうちに午前はあっという間に過ぎて、午後には父様も城から帰宅してきた。


  そして、父様の帰宅を合図として私達は揃って昼食をとる事になった。


  まだ、最低限の礼儀作法を身に着けていないファディだが、今日は彼も特別に同じ食事の席に着いている。



「誕生日おめでとう」


「おめでとうフィリス」


「ありがとうございますお父様お母様」


「フィリスはこれで7つか」


「はいお父様。7歳になりましたわ」


「すまなかったなこんな日にまで皇城務めで……」


「お父様はご多忙ですものお気になさらないで下さいませ」


「うむ……その、初等部入学初めての誕生日なのだが、プレゼントがだな……」


「?」


「相応しいものが思いつかない。フィリスが望むものはないか?」


(プレゼントに欲しいもの……?)



  去年の6歳のプレゼントは無難にドレスや装飾品の山だった。

  おそらく、それらを受け取った私があまり嬉しそうになかった事を気にして何を贈ったらいいのか分からなくなったのだろう。


  今まで父様から貰ったもので私が喜んだものは、私が望んだ偽の収魔ブレスレットと収魔の髪飾り、それと魔法訓練場だ。


  故に欲しいものを直接聞くことにしたのだろう。



(欲しいもの……ね。物は特に欲しいものが無いわ。大抵の物は用意できる程の大金を持っているもの。あえて必要な物をと言うなら……)


「錬金術や付与魔術をやるための作業部屋……などでしょうか」


「錬金術や付与魔術のための作業部屋か……なるほど、手配しよう。場所は魔法訓練場の側がいいか?」


「はい!お願いします」


「フィリス、私からはこれ」


「!もしかしてお母様の手作りですか?」


「そうよ〜。料理長に手伝ってもらって作ったの」



  母様が用意してくれたのは手作りケーキだ。


  今まで料理などした事がなかっただろうに、挑戦してくれた事がとても嬉しい。



「物として残らないじゃないか」


「わかってませんねシディ。プレゼントで下手な物を贈って相手を困らせるより、食べ物で済ませて残らないようにするのも大切なのですよ?」


「ゔ……ぐ」



  去年、私に誕生日プレゼントとして贈った品々を私が喜ばなかった上にほとんど身に着けて居ないことを気にしたのか父様は返答に詰まった。



(ごめんなさいお父様。さすがにあの配色でフリフリレースまみれは、着ていく場所がなかったのです……)


「ふいすっ!あいっ!」


「あ……りがとう。ファディ」



  使用人たちからも両親からもなにか受けとっているらしいと思ったファディが自分の持っていたヨダレまみれでびちょ濡れのハンカチを差し出してくる。


  嬉しそうに笑うから無下にもできない。



(……早く成長して欲しいものです)



  ファディの事で思い出した私は父様にファディの教育について意見を言い、その話に母様も参加してとファディを中心に会話を弾ませながら昼食を過ごす。


  家族故のその時間がとても嬉しく思えて、とても心が満たされた。



「次の学期までは家で過ごすのか?」


「え?あ……」



  誕生日なので一時帰宅しただけで、本当は次学期まで学院で勉強をして過ごすつもりでいた。


  だが、ヴァシュロンの私に依存し過ぎなところを考えて距離を置いたばかり、まだ学院に帰るには早いように思う。



(学院の勉強は次学期以降のところまで終わってしまっているし、冒険者活動をしながら過ごすなら家の方が動きやすいわ……。レン様とカルには冒険者ギルドで待ち合わせすれば良いのだし……)



  考えてみればばわざわざ学院に残ってやる事はもう残ってい無い。


  心残りは学院に残してきたヴァシュロンだが、彼も私が居ない方が他者と接触しやすくなるだろうと思えば答えは決まった。



「そうですわね……。来学期の分の予習も済ませてあるので急ぎ戻ることは無いのですが……、学院の方には一時帰宅ですぐ戻ると伝えております」


「そうか。急ぎ戻る必要がないならば好きなだけ居るといい。学院の方には私から連絡を入れておこう」


「ありがとう存じますお父様」



  ヴァシュロンに対して少し気まずく思う部分もあったので、父様から学院に連絡を入れてくれるという申し出に胸をなでおろした。



「あっ、そうだ。お母様。モーリスを呼べないかしら?錬金術の材料をモリス商会を通して取り寄せたいのだけれど……」


「ふふ。もちろん出来ると思うわ。あなたが呼んだらすぐにでも来るでしょう。錬金術の材料も心配ないわ。あそこは他領も他国も手広くやっているもの。今度、呼んでおくわね」



  家に居続けるとなると、したい事は次々と湧いてきて、尚のこと学院へ戻る意味がないと感じられる。



(やることが沢山ありますもの。必要な勉強分が終わっているのにダラダラと学院に残って居ては勿体ないですわ)



  家で過ごす間にしたい事をあれこれと考えて浮かれている私を父様は少し嬉しそうに見ていたのだが、その表情がふと陰った。


  ため息でも吐きそうな顔をして一拍目を閉じると父様は私に話しかけた。



「フィリス、ダビッド殿下の出ている討伐隊から経過連絡が入ってな。思った以上に時間がかかっているらしい」


「そうなのですか」


(私としてはむしろ喜ばしいような気が致しますが、なぜ表情が暗いのでしょう?)



  私が父様の反応に疑問を持つと、直ぐにその答えは頭を抱えた父様から明かされた。



「遅遅として討伐が進まない原因がな……。殿下の我儘が過ぎるせいらしい。やれ、野営など出来ないだの、食事が美味しくないなど耐えられないから街から日帰りできる距離しか行きたくないだの……」


(ああ、予想通りですわね)



  ダビッド殿下がその様なので、討伐隊は依頼の来たところから出来るだけ近い街を経由しつつ、できる範囲で討伐を進めているところとの事だ。



「ダビッド殿下には街でお待ちいただいて、討伐隊だけで進行するなど致しませんの?討伐依頼のあった地域はかなり危険な状態で急いだ方がよろしいのでしょう?」


「それはそれで『俺を置いていくなど許さん!俺は剣を振るいに来たのだ!』と殿下が申されて、討伐隊のみで動くことも出来んとの事だ」


(なんて身勝手な)



  ダビッド殿下を街に置いて依頼の地域へ討伐に出ることも、殿下を連れて討伐に行く事も出来ない討伐隊は、不満と焦りが増している。


  ダビッド殿下がこのまま態度を改めない様なら、下手をすれば殿下の身に身内からの危険があったり、殿下が討伐隊から見捨てられる様なことになったりし得るとの連絡があったらしい。



(……むしろ、実際にそうなって結果的にダビッド殿下が有り様を改めるなら御本人の為になりそうですけれどね?……まさか、危害を加えられて皇族死亡などとなっては……流石にそこまではありませんわよね?)



  想像通りの展開に呆れつつも、もたらされるかもしれない結果を心配して妙な感情になりつつも、いくら心配したところで今の私に出来ることなどない。



(最悪の結果にだけはなりませんように……)



  この経過連絡もとい、討伐隊状況報告後もダビッド殿下の態度は改められず、ダビッド殿下の態度に耐えかねた隊員が殿下に進言するも殿下に除隊を言い渡され帝国に帰るのみ。

  当然、そのような事が続けば討伐隊の隊員はどんどん減り、そして討伐も遅遅として進まないまま。


  討伐依頼のあった地域の村は、なんとか耐え抜きながら討伐隊を心待ちにするも殿下達の来訪は未だなく、これではせっかく組まれ向かった討伐隊はその意味をまるで無くしていた。

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