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33、帝都の冒険者ギルド3

  ベルデルとの決闘の約束だったお金を拘束されているベルデルの前に10ゴールド程置いた。


  ベルデルはそこまで金をもらえると思っていなかったようで驚いた目をしてはいたが、先程の事を許せてはいないようでギルド長と共に去る私をいつまでも睨んでいた。


  私はランゲディスギルド長に連れられて闘技場を出た後、ギルド長室へと通された。


  そして今は、ギルド長と対面して座っている。



「ベルデルにかけた魔術……解かなくて良かったんですか?」


「ええ。時間経過で解けるようにしていますからあのままでいいでしょう。彼の事より私はあなたの事に興味があります」


「レンズ副ギルド長から何か聞いておられたと……」


「ええ。無詠唱魔法士、魔術も見て直ぐに真似て使い、その実力は魔法師団員と同等かそれ以上」


「……魔法士の事まで」



  信頼得るために他には言わないと言ったのに……と、私が不貞腐れているとランゲディスギルド長がレンズ副ギルド長を庇った。



「広めないため、でもあると思いますよ。恐らく、私と彼の祖父であるマイヘア・フリーデスにしか伝えて居ないのではないでしょうか」


「広めないため?」


「彼は、一ギルドの副ギルド長に過ぎません。万が一、魔法士の事が人に知れて広まりそうになった時に彼では口止めしきれるほどの権力が無い」


「だから、師であるランゲディスギルド長と自身の祖父であり魔術師団団長であるマイヘア・フリーデスにだけは伝えた……?」


(あら……もしかして、マイヘア・フリーデス様が強引な感じで私とヴァシュロンを弟子にしようとしたのって……。いえ、学院長はフィルの方は知らないはず……)



  それから先程の闇属性を持たせた魔力障壁の事を聞かれたり、レンズ副ギルド長との模擬戦の時のことを聞かれたりして過ごした。



「フィル、私の事はランゲと呼んでもらって結構です。これからこちらで活動をするのであれば、何かある時は私を頼ってください」


「良いのですか?あの……帝都ではまだ田舎から出てきたばかりの子ども冒険者です。僕を特別扱いはベルデルのようなーー」


「まぁ、やっかみはあるでしょうね。でも、君の実力ならそれも対処可能でしょう。舐めてかかられたら今日のように反撃してしまいなさい」


(帝都の冒険者ギルドの長がそういうのだから、いいのよね?)



 ****


  私はランゲギルド長の部屋を出た後、依頼版を見るために一階へ降りて行った。


  ギルドの間取りはどこも同じなのでギルド長の部屋は入って左の階段を上がった2階のエリアだった為だ。


  ギルドへ入って右の階段を上がると食事処なので皆利用するが、左の階段の先はギルド員しか出入りすることがあまりないエリアになる。


  左階段を降りて行く私は当然ギルド内にいた皆に注目される。



(登る時はギルド長について行った形だからまだ良かったのですが……居心地が悪いですわね)



  私が見てくる人達を不快そうに見返すと、皆即座に目を逸らす。


  私はため息をひとつ吐くと、その足で受付へと向かう。

  初めて利用するギルド又は数年越しにギルドへ顔を出す際には、まず来訪を受付に伝えるのが基本だからだ。



「こんにちは。先程は入口でお騒がせしました。こちらのギルドは初めての利用です」


「はい。こんにちは。騒ぎの件は気になさらないでください。元々、ベルデル・ギースは他の冒険者との衝突も多く、騒ぎを起こす事は珍しくないので……」


「彼はここを中心に活動を?」


「いえ、先月に地方から来たばかりですね。一緒に行動している方々も一緒にいらしたようです。ギルドカードのご提示を願えますか?」


(田舎でそれなりに強くなったから帝都に出てきた……というわけですのね。心配しなくても帝都の冒険者に淘汰されそうだわ)



  私は腰のポシェットに手を入れ、その中から取り出すふりをして影収納からギルドカードを出した。



「お名前はフィルさん、ギルドランク……C?あの失礼ですが、フィルさんはお幾つ……いえ、御種族は……」


「6歳ですよ。人間です」


「6歳で……Cランク?登録はレストルーチェ支部ですね。失礼ながら、ギルド試験の試験官はどなたが……」


「最終的に僕の実力を測ったのはレンズ・フリーデス副ギルド長です。僕の実力をお疑いで?」



  私が『実力を疑うなら試験してくれてもいいですけど?』と少し鋭い目線を送ると、受付の女性は慌てた。



「いえいえ!失礼致しました。疑ったのはむしろレストルーチェ支部の審査基準と言いますか……。しかし、試験を行ったのが副ギルド長であるレンズ・フリーデス様であるとの事ですしなんの問題もありません」


(レストルーチェ支部が何らかの不正をして私の事をCランク扱いにしたと疑ったわけね。まぁ、帝都の冒険者ギルドともなると冒険者ギルドの元締めなのだろうし、ギルドの不正を見張るのも仕事のうちなのかもしれないわね)



  そういう事であれば気にしないと受付の女性に伝え、依頼掲示板を少し確認したら帰る旨を伝えた。



  依頼板を見ると1番多いのは護衛依頼のようだった。


  魔物討伐系の依頼もあるにはあるが、この辺付近の物ではなく随分と離れた地方のAランク魔物の集団を討伐であったり、地方のSランク討伐だ。



(多分、地方のギルドでは処理出来ないレベルのものが帝都支部に回されるのね。帝都の周辺には魔物の生息地なんてろくに無いし、遠征が前提のものばかりだわ)



  護衛依頼が多いのは帝都に訪れた貴族や御者、商人の護衛依頼が集まる為だろう。


  どの依頼にしても私にとっては受けにくいものばかりなので残念だ。



(気軽に遠征に行けるような本当の意味での冒険者になれたらいいのに……)


「ん?……あっ!」


「あれは……」


「フィル!「フィリ……え?」」



  私が依頼掲示板を見てため息を吐いているのを見て2人の人物がギルド内で反応した。



(呼ば……待って、1人は『フィル』って呼んだけどもう1人は……)



  私が訝しがりながら振り返ると嬉しそうに手を振ってこちらへ歩いてくるカル。

  そして、少し離れたところからカルと私を戸惑いながら見ている……。



(そうだった。レン様も冒険者資格を持っていると確かに聞いていましたわ……)



  少し離れたところから、私とカルを困惑の顔で見ているレン令息が居た。

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