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22、魔術実践1

遅ればせながら、あけましておめでとうございますm(*_ _)m

  次学期に向けた勉強を私とヴァシュロン、メリーの3人で行うことが決まった。



「じゃあ今日から毎日一緒に勉強ね!朝は何時に集まる?どこでやる?今日はどうする?」


「待ってくださいメリーさん。私達の予定もあるのです。予定を調整してから追って連絡致しますから、少々時間をくださいな」


「予定って勉強以外に何するの?……てか、今どこに向かっているの?」



  私は目で『魔法以外なら……魔術の事なら言っても大丈夫ですよね?』とヴァシュロンに語り。

  ヴァシュロンは目で『話しても問題ないと思います』と応えた。



「図書館で魔術の初歩は勉強したので闘技場で魔術を試そうと思ったのですわ」


「その為、闘技場の使用許可を取るために本館にある事務へと向かうところなのですよ」



  それを聞いたメリーは案の定、目を輝かせてさも自分が行くのは決定事項であるようにはしゃぎ出した。



「楽しみね〜!私、早く魔術が使ってみたくてうずうずしてたの!なのに図書館のどこに魔術書があるんだか分からなくて、仕方ないから他の勉強を先にしてたのよ」


「魔術書が保管されているのは図書館の地下1階のフロアにある魔術書専用の部屋ですわ」


「地下なんてあったのあの図書館!」


「司書からはむしろ地下の方が広いのだと聞きました。まぁ、そちらは関係者以外立ち入り禁止の区域がほとんどのようですが……」


「へぇー!まるでダンジョンね!」



  私の言葉に軽く返答するのは許せても、ヴァシュロンに対しても態度を変えない彼女に私はつい、溜め息を吐いた。



「……はぁ。メリーさん、少しづつで良いので言葉遣いを丁寧にしてくださいね?殿下にそのような話しかけ方をしている所を他の者達に聞かれでもしたら……」


「硬いわね〜。そんな姑みたいにグチグチ言わないでよ。そこは平民だからって寛大に受け止めるところでしょ?」


「メリーさん、フィリセリア様はあなたのためを思ってそう言ってくれているのです。そのような態度を彼女に取り続けるようならーー」


「わっ、わかっ……わかりましたよ!少しづつは気をつけるから、そんな冷たい目で見ないで?ね?」


 ****


  魔術書の保管場所やその部屋の話、メリーの勉強の進み具合を聞くなどしているうちに本館の事務へと着いた。



「明後日以降で闘技場の空きはあります?」


「明後日で問題ありませんよ。使用許可をお取り出来ます」



  私と事務の会話を横で聞いていたメリーが困惑の声を上げた。



「え?あれ?なんで明日じゃないの?てか、今日でもいいんだけど」


「さすがに今日予約で今日は難しいでしょう。明日は他の生徒と剣術訓練の約束があるので予約を入れるわけにはいかないのです」


「え!?明日は一緒に勉強会できない……んですか?」


「明日は約束がありますからね。今日、明後日で闘技場の使用予約を取るとメリーさんとの勉強が進みませんし……」


「そこはいいです!筆記勉強より魔術実践の方がずっと楽しそうだもの!それに私が2人に合流出来るのは歴史と地理の授業の後になるから時間が少ないし……魔術は授業じゃまだやらないからそっちを重点的にーー」



 コホンッ


  ヴァシュロンとメリーの段々と脱線していきそうな会話が聞こえていた事務が軽く咳払いして、ヴァシュロンに話しかける。



「時間は短くなりますが、今日でもお取り出来ますよ?使用予定が入っていませんから、問題ありません」


「あ!じゃあそれでお願いします!ね?いいよね?明日一緒に勉強できないんだったらその分今日一緒に!ね?あ、それと明日の闘技場使用予約、私一人分で取っていいですか?」



  私とヴァシュロンはお互い若干呆れを含んだ笑みを交わし合い、メリーの願い通り今日と明後日で闘技場の使用許可を取った。

  メリーは今日、明日、明後日と3日間連続で使用予約を入れたことになる。



(もはや図書館で勉強できない分の補填からだいぶ脱線しているのだけれど……。まぁ、図書館で魔術の勉強をできない代わり……と思っておけばいいのかしら?)


「では、これが入場許可証になります。闘技場の使用後にこちらへお持ち下さいね?」


「わかりましたわ」



 ****


  修学院の制服は男子生徒の物も女生徒の物も動き回るのに阻害しない作りになっているし、付与魔術によってそれなりに丈夫な作りをしている。

  剣術訓練ともなれば訓練着に着替える事が推奨されるがそれも絶対ではなく、魔術の訓練であれば制服のままで可能だ。


  故に、私達は制服のまま闘技場の使用許可を取ったその足で闘技場へと赴いた。



「魔術、魔術かぁ〜。やっと使えるんだ〜」


「とても楽しみにしていらしたのね?」


「当然!全属性で凄いなんて周りに言われても1度も魔術を使った事なんてないのに実感なんて無いし。修学院に入ったら魔術が使える!と思ってたら、初学期では初歩すらやらないし」


(その気持ちはとても分かりますわ)



  魔法の訓練や身体強化訓練であれば魔力操作訓練から始めるところだが、魔術はそこまで操作性を求めなくても使用出来る。


  まずは魔術語の基礎言語から……と私は思っていたのだが。



「じゃあ、まず火を出す魔術教えて!」


「え?えっと……魔術陣はこう……『ピセ ラ トルタ ルタ』が火の玉を出す基本のーー」


『ピセ ラ トルタ ルタっ!』



 ヒュボウッ



  メリーさんが火の玉を出す魔術語を唱えると、火の玉が彼女の突き出した右手の先から飛び出して行った。



「やったぁー!これが火の魔術ね!じゃあじゃあ、次は水は!?」


(せ、説明されずとも初めてで出来るようなものなのですかね???)



  次の魔術を使う気満々で目を輝かせているメリーさんに対し私が困惑している横で、ヴァシュロンがメリーさんのように右手を突き出した。



「ピセ ラ トルタ ルタ」



  ヴァシュロンが右手を突き出してメリーさんのように魔術語を口に出して唱えてみたが、何も起こらない。

  やはり、初見で魔術語を唱えるだけで使えるものでは無いようだ。



(……メリーはただの天才か)


「ねぇねぇ、水は?水のは?水の魔術はもしかして知らないの?」


「いえ、知ってますよ水は『セレ ラ トルタ ルタ』魔術陣はこうですわ」


『セレ ラ トルタ ルタっ!』



 ビシュッ



「やった!次!次は?風は?土は?光は?闇は?」


「えっと……風は『フィス』、土は『デク』。光は私達が読んでいた魔術書には無かったですわ。闇はそもそも魔術書が無い可能性もありますわね」


「え?なんで光と闇は無いの?闇の魔術書がそもそも無い可能性があるって、どういう事?」


「光属性は神から与えられるもので、神官などごく一部の人しか扱えないとされていますから基礎四属性とは次元が違う為、初級中級では学ばないようですわ」


「光属性は神から……え?もしかして光属性を持ってる私は将来強制的に女神官にされちゃうとか……?」


「メリーさんは優秀そうですから勧誘はありそうですね……。でも、光属性の冒険者も居ますし絶対に神殿で神官として過ごさなくてはならないという事はないと思います」



  私がそう告げるとメリーは、安堵して胸を撫で下ろした。


  ヴァシュロンは先程の火の玉が不発だった事が悔しかったのか少し離れたところで熱心に火の玉の魔術を練習している。

  因みに、2発目で問題なく火の玉は発動し、今は正確に発動出来るように回数を重ね、さらに練度を上げているようだ。



「あ、なんで闇は魔術書すら無いかもしれないの?」


「闇は光属性よりさらに希少……というか、本来人間は持たない属性とされているのですわ……闇属性は魔物の属性であると……。魔物の中には闇属性の者も多いのですが、人間には本当に数える程しか居ないらしく」


「え……じゃあ、私……?」


「心配しないでください。メリーさんは人間ですよ。私が想像するに闇属性は光属性よりさらに希少で人数が少ない事と、魔物の中に闇属性を持つものが多い事から闇属性は魔物のものと誤解されたのではと思っていますわ」


「ゔ……差別されて殺されたりとか」


「すごく少ないですけれど闇属性を持つ人間は少なからず居ます。大貴族のレストルーチェ公爵家とガルマ公爵家に闇属性持ちが居るんですもの。表立って差別出来る者などそう居ないでしょう。大丈夫ですわ」



(私もレン令息もメリーも魔物の類いなんかじゃない。大貴族である私やレン令息を闇属性だからと害そうとする者も……国内には居ないはず)



  そう思いつつも闇属性である事を理由に自分達に危害を加える存在もどこかに居るのではと、少しばかり不安になった。

  メリーに告げた『大丈夫』は、自分に言い聞かせたものでもあった。



(……私は化け物なんかじゃないわ)

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