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21、図書館を後にして

  私達は図書館の3日間入館禁止を言い渡されて、図書館を退出した後その足で闘技場の使用許可を取るために事務のある本館へと向かっていた。



「なんだか無駄に疲れてしまいましたわね……。図書館も3日間の入館禁止となってしまいましたし」


「事務に行くのは日を改めますか?」


「いえ。図書館入館禁止となってしまったからこそ魔術実践の方に力を入れたいところですわ。今日、闘技場の使用許可を得て明日にでもーー」


「あなたたちぃ〜!!」


「え……メリーさん」



  叫びながら走りよって来たのは、先程図書館を強制的に追い出されたメリーだった。

  メリーは走り息を切らした状態でゼーゼー言いながら私達に話しかけてきた。



「あ……あなたたち!ゴホッ……あなたたちのせい……で、追い出されたん……だから……」


「追い出された原因がこちらだけにあるとは思えませんが?」


「だまって……!ゴホッ……ふぅ、はぁ~」



  メリーは一呼吸置いてから話を続けた。



「地理と歴史の授業は受けなきゃならないけど、他の時間をその復習と次の試験の為の予習に当てて図書館で勉強していたのに!あなた達のせいで図書館を利用できなくなって私すっごく迷惑してるんだから!」



  私が1つため息を吐き、完全に私たちを悪者にしてそんなことを言われてもと言葉を返そうとすると、メリーはビシっと私達に指を突き付けた。



「図書館を追い出されて勉強出来ない分、あなた達が勉強を教えて!いえ……ヴァシュロン様だけでいいわ!そしたら2人きりの勉強会が実現出来るもの!」



  手を打ちながら『名案だわ』とでも言うように自信満々にメリーはそう言った。


  1人で捲し立ててさも決定事項であるかのように今後の予定を独り言し始めるメリーに私は呆れの目線を送るが、メリーはまるで気づかない。



(自由人といいますか……身勝手な方ですね本当に。熱意を持って勉強に取り組もうという姿勢は素晴らしいのに……)


「僕はフィリセリア様と2人で勉強をしたいのです。あなたに邪魔されたくは無い」


「じゃっ……邪魔なんて酷いじゃないですか!」


「先程も言いましたが僕達とメリーさんの勉強の進捗度合いには随分と開きがある。あなたの勉強の進捗状況に合わせるとなると僕達の勉強が進まなくなるのですよ。十分邪魔をしていると言えるでしょう?」


「そ……そんなに冷たくしなくたって……」


(ヴァシュロンって私との勉強を邪魔されるのをすごく嫌うわよね……。レン令息が一緒に魔術の勉強も~と言っていた時も駄目だって即答していたもの)



  ヴァシュロンが私を特別な友達として認識して、その仲を邪魔されるのを嫌うのは分かる気がするが私以外の全てを拒絶するのは良くないと思う。


  実際のところ、学院生活が始まってから今までヴァシュロンはほぼ私に付きっきりの状態で、他の生徒と関わるところなどレン令息との剣術訓練の時のみだ。



(……いつも私と居てくれるのは嬉しいですが、このままではいけませんね。ヴァシュロンも私も完全に依存し切って人脈が広がらなくなってしまうわ)


「ヴァシュロン様、3日間ぐらいよろしいのではありませんか?せっかく勉強に熱心なメリーさんが勉学に励めないのは可哀想ですし……」



  勉強を全くせずに嫌味に関わってくるだけの人間に無理して接する必要は無いが、意欲があって勉強に励む人物なら関わっても良いのではと思い私はメリーを推してみた。


  メリーは事の流れが自分に良く進むことに目を輝かせて胸の前で手を組む。

  このまま話が通ればその勢いのまま私に感謝を述べ始めそうだ。


  対して、ヴァシュロンはメリーの事を自分と同じく邪魔に思っていると思っていた私がそのような事を言うので、意外そうな顔をした。


  そして、目を泳がせながら私に一言問う。



「フィリセリア様は……それでいいのですか?」


「ええ。できれば仲良くなった方がいいと思いますし」


「はぁ……そうですね。あなたはそういう方でした」


「嫌ですか?」


「クスッ。いいえ。だから好きなのですよ」



  ヴァシュロンのその言葉を聞いて先程まで輝いていたメリーの目が輝きを失った。

  そして『信じられない!』と、騒ぎ立て始めた。



「は……?え?ちょっと待ってよ!好きってなに?『だから好き』ってなに!?まさか付き合ってたの!?」


「へ?ちっ!違いますよ!お付き合いなどしていません!」


「でも、じゃあ何よあのいい笑顔はっ!あんなの好きな人にしーーむぐっ」



  騒ぎ立てるメリーはヴァシュロンが彼女の口を手で抑え込んだ事で強制的に黙らされた。



「メリーさん……フィリセリア様は第一皇子である兄と婚約関係にあるのです。僕との仲を下手に騒がれると彼女が不誠実な女として周囲に噂されかねない。余計な事を口に出して彼女を貶めるような事はやめていただきたい」


「んぐっ!?ふぐっ…んんんー」


(そこに理解があるなら日頃の手を繋ぐのも距離感が近い気がするのも、もう少し気をつけた方がいい気が……。ああ……慣れないことするから鼻まで一緒に塞いでいるわ!あれはかなり苦しいはず……)



  ヴァシュロンに諭されてメリーはこの件を口外しない事を約束して口元の手を離してもらった。

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