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13、修学院Sクラス

  帝国立修学院の入学者クラス分けは学院内の掲示板に貼り出される。


  入学後すぐのクラス分けは実力試験の成績発表を兼ねるので、自分の位置を正確に把握させるためだ。

  もちろん入学後の各試験結果もこの掲示板に貼り出される。



(まず間違いなく私の名前ははこっちの方にあるでしょうね……)



  私はリリアに寮の部屋から送り出してもらった後、まっすぐにこの掲示板に来た。

  既に私より早く来た他の貴族子達が掲示板の前に集まっている。


  私はその集団から少し離れて、Sクラスの掲示板を見に行く。


  修学院のクラスは5クラス。

  SからDまでのクラスがあり、Sが最上でDが1番下だ。



(試験では色々と目立ってしまったし確実に……やっぱりありましたわね)



  私の名前は案の定Sクラスの1番目に書かれていた。


  各クラス表に書かれる名前の順は成績順だ。

  見た通り私の入試成績はトップだという事になる。


  そして、私の名前の下になヴァシュロンの名前……。



(皇子より成績が上って目立ち過ぎにも程があるわよっ!ああ〜……試験を受けた私っ!目立ちたくないのならなぜ手を抜かなかったのー!)


「やっぱり流石ですねフィリセリア様」


「あ……ご挨拶申し上げます。ヴァシュロン殿下」


「うん、おはよう」



  私は何となく居た堪れず頭を垂れる。



「あの……申し訳ありません。臣下が皇子の上に立つようなーー」


「謝らないでよ。修学院では身分差関係なし、無礼講でしょう?それと、修学院で共に学ぶ間だけでも『殿下』はやめて名前で呼んで欲しいな」


「そ、れは……」



  確かに正しく成績を評価する為にも修学院では身分差別をしない事になっている。


  とはいえ、修学院を出れば元通りの貴族身分社会で生きる事になるので修学院の中だからと周囲の者を呼び捨てにする者など居ない。

  そんな事をして卒業後、無礼を働いた事を恨まれ不利益を得ては大変だからだ。


  皆、修学院内で無礼講と言われても最低限の礼儀は弁えるのである。



「友人でしょう?知らない仲で呼び捨てにするわけじゃないんだ。修学院で友人を名で呼ぶくらい許されると思うけど?」


「友人……。そう、ですね」


(確かに学院で友人を名前呼びするのは許されるかもしれない……皇子だって事が引っかかるけれど)


「あと、成績の事は本当に気にしなくていいから。それこそ、この学院の望む所なのだし。僕としては、フィリセリア様の成績が僕より上なのはむしろ誇らしい」


「誇らしい……?」


「だって、僕の先生はやっぱり凄いって事でしょう?」



  そう言ってとても嬉しそうに笑うヴァシュロンに私はキョトンとした顔をしてしまう。



「クスッ。ヴァシュロン様がそう仰るならもう成績の事を気にしませんわ」


「……名前」



  今度は笑いながらそう言う私にヴァシュロンがキョトンとした。



「友人だから良いのでしょう?」


「もちろん!」



  私がそう言うとヴァシュロンはすごく嬉しそうに笑った。



 ****


  私はヴァシュロンに誘われて、2人揃ってSクラスに向かう。


  学院内の廊下は床も壁も土魔術で作られた白石造りだが絵画や花瓶が飾られていているのでとても鮮やかだ。

 

  日本で言うなら学校というよりも国会議事堂の方が印象が近い。


  廊下の横幅も広く、どこを見ても品が良いのだ。



「Sクラスはここだね」



  そう言ってヴァシュロンが立ち止まる。


  私達は綺麗に金装飾の施されたSクラスの扉を開いて中に入った。



「ヴァシュロン殿下、ご挨拶申し上げますわ」


「ヴァシュロン殿下、ご挨拶申し上げます。フィリセリア令嬢もおはようございます」


(サランディア令嬢、さらりと私の事を無視しましたね……)


「ええ。おはようございますお二人共」


「サランディア令嬢、レン令息おはようございます」



  教室にはサランディア令嬢とレン令息が居た。


  席は既に決まっているようで、レン令息は廊下側の後ろの席、サランディア令嬢は窓側の後ろの席に着いている。


  教室入口付近の壁を見ると座席表が書いてあった。


  私は窓側の前、ヴァシュロン殿下は廊下側の前のようだ。



(Sクラスはこの4人だけですか……少人数ですね)



  皇家と公爵家のみSクラスという事になる。

  だが、決して身分贔屓という事はなく確かな実力があって皆Sクラスに入っている。


  AクラスからSクラスに上がってくる者が今後居るとしても、この4人の中の誰かがAクラスに降格になることはまず無いだろう。



(このメンバーは長い縁になりますね。仲良くありたいものですわ)



  そう思いながらサランディア令嬢の様子を見ると、彼女はいかにも嫌そうな顔をして私の事を見ていた。



(仲良く……なれるのかしら?)



  程なくしてSクラスの担任となる先生が教室に入って来た。



「儂がこのクラスを受け持つ。皆、よろしく頼むぞ?」


(…………被ってる)



  現れたのは、私があげたカツラを付けて自信満々な様子のフリーデス学院長だった。



「案の定の面子じゃのう。今後が楽しみじゃ。では、授業の説明をしーー」


「その前に自己紹介していただきたいですわ。初対面ではありませんか」



  そう言ったのはサランディア令嬢だ。


  私は思わず後方を振り向いてしまったが、困惑の表情をしているのはサランディア令嬢だけでなくレン令息もだった。



(あ……被るとみんな本人だと分からないのね)


「何を言うかサランディア令嬢。入学式で皆の前で挨拶したじゃろう。学院長のマイヘア・フリーデスじゃ」


「生えましたのっ!?」


(そんな言い方しちゃーー)


「生えたのじゃっ!」


(生えたんじゃありませんからーーー!)



  心の中のツッコミに忙しく、なんだか始まってもいない授業に疲れてしまった……。


  カツラを作って学院長にあげたのは自分だが、学院長がいちいち『生えた』と嘘を言って回ることに、なんだか何とも言えない気分になる。



(……でも、訂正したところで『生えた』で通しそうですし、静観するしかないですわね)



  その後、フリーデス学院長から授業の説明があった。



「筆記授業においても実技授業においても試験申請をして合格すれば免除となる。下級学年では既に授業内容を事前学習済みな事も多いからのう」


「試験は直ぐに受けられますの?」



  空かさずサランディア令嬢が学院長に質問をする。



「明日から可能じゃの。試験申請自体は今日のうちに可能じゃ。試験に合格すれば次の試験がある3ヶ月後まで自由じゃ。各家に戻って家で過ごすも良いじゃろうし、図書館に籠って勉強するも闘技場で自身を磨くも良し。好きにするが良い」


(それはとても助かるわっ!試験が済んでしまえば家に帰って、また冒険者活動に戻れるもの!でも……)


「学院長。実技って魔術ですか?魔術はまだ習っていませんが……」


「実技は魔力操作と剣術じゃよ。とはいえこのSクラスにいるそなた達ならば魔力操作はまるで問題ないのう。剣術は来学期以降も剣術を学びたい者は必須じゃが、剣術を学ぶ気の無いものは受ける必要は無いものじゃ」


(剣術試験を合格しないとその後、剣術の授業を受けられる機会が無くなってしまうのね……。うーん。それはちょっともったいない気もするわ)



  私は明日にでも学期試験を受けてしまおうと心に決めた。

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