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2、久々の休日は自由に

  出立式が無事に終わった翌日は、勉学等が無い休日日だった。


  私は朝からリリアに訓練着に着替えさせてもらい、訓練の合間に食べるからと言って用意させた昼食用のサンドイッチが入ったバスケットも持って訓練場に入る。


  訓練場は魔力認証で入場制限があるので私と父様しか入れない。

  私は誰も入って来れないのを良い事にある事をするつもりだ。



(希闇!影に入るわ)


『わかった』



  私は希闇の居る自分の影に入りバスケットを闇収納に入れると代わりに冒険者セットを取り出した。

  冒険者セットは革服やコート靴など身に付けるものの他に、片手剣や腰鞄なども含む。



(着替えるから見ないでね?)


『わかっておる!』



  希闇をからかうようにわざとそう言ってから私は手早く着替えを済ませた。



『それに着替えるということは冒険者活動をするのか?』


(ええ。やっと時間が取れるようになったし、魔力量は着実に増やしたわ。髪飾りに貯めてある魔力も使えば余裕を持って領地まで往復可能でしょう?)



  そう、私がやりたかったのは空き時間を使って影移動を行い、レストルーチェ領で冒険者活動をする事。


  ヴァシュロンを救いに領地から影移動した時に、領地から帝都までの距離であれば往復可能である事を確認済み。


  あの時より魔力量も増え、勉学のある日には収魔髪飾りに魔力を貯め込んだ。

  領地までの影移動の往復に加えて、冒険者活動をする際の魔法使用に耐える量の魔力は確保出来るはずだ。



『可能だな。すぐに移動するか?』


(ええ。お願いするわ。行き先は……領地下街の人の居ない路地とかが良いかしら)


『わかった』



 ****


  希闇はすぐに移動させてくれて、私は路地の影から地上に出た。



「さて……久しぶりのフィルだね」



  口調に気を付けないとと思うだけで、つい嬉しくなってニヤニヤしそうになる。


  私は早速、冒険者ギルドへと向かった。



(……はじめて冒険者ギルドに来た時、知らずにこの中央大扉を開けて入っちゃったんだよね〜)



  冒険者ギルドの入口の扉を見ると、もう何年も来ていなかったかのような懐かしさに駆られた。


  依頼をまず受けるつもりなので正面左の扉から冒険者ギルドへと入ると、そのまま左側の依頼ボードへと進む。



(……そういえば、今まではカルやビエラと一緒に依頼を受けていたから、1人で依頼を受けるのは初めてだ)



  私はカル達と依頼を受けていた時の経験から、1人でもこなせそうな討伐系依頼を2つばかり取って依頼受付けカウンターへと向かった。


  受付に居たのは私がレストルーチェ支部で冒険者活動をしていた時の受付の女性とは別の人で、赤紫のストレートヘアをした若い人だった。



「冒険者ギルドレストルーチェ支部へようこそ!ご依頼ですか?それとも街依頼か薬草詰みかしら?」



  明らかに幼い子供に接するように対応される事に新鮮味を感じつつ、私は依頼書をカウンターに置いた。



「討伐依頼2つです」


「はーい……て、これCランク依頼じゃないですか!ダメですよ?ちゃんと自分のランクと同じかひとつ上のランクの依頼じゃないと受けられません。ギルドカード発行の時にそう説明されたでしょう?」


(やっぱりこういう反応されるかぁ……まぁ、そうなるとは思ってたけれど)


「まして討伐依頼はDランクからで、君は見たところまだ10歳にすらーー」


「はい。ギルドカード」



  私は親切お説教が長くなりそうだなと思い、ギルドカードをカウンターに提示する。

  依頼の受理にはギルドカードの確認が必要なので、疑われていようがいなかろうがどっちにしても提示の必要はあるのだ。



「だからGランクギルドカードじゃ……え。C?C!!?誰のを持ってきたの!どこかで拾ったの!?」



  受付嬢はギルドカードを提示してからも『もしかして、このカードの持ち主は既にっ!』『このカードは魔物のいる森で見つけたの?この辺にはCランク冒険者を倒すような魔物はそうそう出ないのに!』と1人慌てふためいていて話を聞いてはくれなかった。



「そんな危険な魔物がいるならすぐにでも討伐隊をーー」


「おお!なんか騒がしいから見に来たらフィルじゃねーか!」


「あ、シゲさん」


「え?あ、シゲさん……もしかしてこの子知り合いですか?」



  騒ぎを聞き付けたシゲさんが素材受け取りのカウンターからこっちに様子を見に来て、先に私が気付き後から受付嬢も気付いた。



「おうおう。こいつがこの支部に居た時はしょっちゅうこいつの持ってくる魔物を捌いててな」


「この子が……持ってきた魔物?でもこの子Gランク……」


「あぁー、見た目で判断してGだと思ったから騒いでいたってことか。そいつはCランク冒険者だぜ。しかも実力試験で一発飛びランクのCだ」


「この子が本当にCランク!?でもでもこの子まだ10歳にも見えなーー」


「まぁな。フィル今いくつだ?」


(登録の時4歳なのを5歳って事にしたんだよね……)


「6歳になったよ」


「6歳でCランク!!?規格外過ぎじゃないですか!危ないですよそんな幼い子に魔物討伐なんて!」


「だから言ったろが、こいつがこの支部に居た時はしょっちゅうこいつの持ってくる魔物捌いてたんだって。実力は十分すぎるくらいあんのさ。討伐依頼だろ?受理してさっさと行かせてやんな」


「う……はい。間違いなくCランク冒険者という事でしたらCランク依頼の受理に承諾しか出来ません……。本当に気を付けて……」



  受付嬢は依頼内容が集団でようやく1匹狩るのが基本のシャルトウルフや外皮が硬く剣の通りの悪いロックジャイロである事を見て固まった。


  それからまた受付嬢はまた慌てふためき、シゲさんにそれらは以前もフィルから卸されていたことを説明された。


  なおも受付嬢は心配気な様子だったが何とか依頼を受理してもらってシゲさんに感謝を述べてから討伐依頼に向かう。



(はぁ〜。新しい支部に行ったら今みたいな対応をまたされる事になるんだろうなぁ……)



  慣れた土地で慣れ親しんだ人達と過ごす方が気楽だなと小さいため息を吐きつつ、先程の受付嬢の様子を思い出して笑顔になる。



『フィル君!絶対気をつけて行ってきて下さいよ!?ミリーとの約束です!ほら、指切りしてください!』


(……クス。最後まで子供扱いだったなぁ)



  まだまだ手足の短い5歳児の身体だ。


  心配されるのも当然か……と思い、たっぷり獲物を持ってきて驚かせようと意気込んだ。


  当然シャルトウルフもロックジャイロも危なげなく討伐し、討伐依頼の数を遥かに上回った数を納品してミリーを驚かせた。



(やっぱり冒険者は楽しい!)



  その後も日常では貴族令嬢として過ごし、休日日は魔法訓練場に籠ると言いつつ冒険者活動を続けた。

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