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11、お父様の一時帰宅

 翌日も収魔ブレスレットの魔力を取り出しては圧縮する魔力操作訓練を勉学の傍ら繰り返していた。



(勉学や運動は必要に駆られて行っているという感じですが……。魔力操作や魔法については編み出せば編出すほど幅が広がるからかとても楽しいですわ)



  私は今まで、令嬢として身に付けてきた刺繍も武を身に付けるために素振りを続ける木刀も趣味と言えるほど没頭してこなかった。

  だが、魔法はいままでのどのようなものより没頭出来ていると自負している。



(もっと魔法を知りたいですわ。早く師となる魔法士様は見つからないかしら……)



  5歳のお披露目まで貴族の子供は親族以外に会えない決まりだ。

  もし、師となる魔術士が見つかったところで5歳のお披露目を過ぎてからでないと会わせてはもらえないだろうと私は思ってもいた。



(でも、待ち遠しいものは待ち遠しいですわ。先生となる方を驚かせるように、今はしっかり魔力操作は訓練しておきましょう)



  私が午前の勉学と魔力操作を一段落終えると、リリアが予定を告げてきた。



「フィリセリア様、昼食の席に旦那様がいらっしゃるそうですよ?ご一緒に食事をとの事です」


「昼食の席に?いつもお仕事が忙しくて食事をご一緒するとしても夜でしたのに……」


「昼食をフィリセリア様とお取りになられたらまた皇城へ戻られるそうですよ?」



  そんなにも忙しいならば尚更、いままで関心を特に寄せていなかった私と昼食をとる意図が分からない。

  だが、公爵を待たせる訳には行かないと直ぐに支度して食堂へと向かった。



 ****


  食堂へ足を運ぶと公爵は席に座っており、既にいくつかの料理は並び始めていた。



(そんなにもお待たせしてしまってたのかしらっ!)


「遅くなって申し訳ありません。お父様」


「なに、遅くはないさ。私がこのあとも仕事で忙しいため厨房を急かしてしまっただけだ。気にすることではない」



  そう言って公爵は私に席へ座るよう促した。



「どうだ。勉学や運動は捗っているか?」


「はい。滞りはないかと思います」


「ならいい」



  食事の間は近頃の勉学や訓練の進行状況の確認をするような会話を言葉少なにするだけだった。



(私の日頃の状況は影から聞いているのではなかったの……?わざわざ再確認するために忙しい中、会いに来られたとは思えないのだけれど……)



 ****


  2人とも昼食を食べ終え沈黙が数分間あってから公爵が口を開いた。



「お前に渡すものがあったので立ち寄ったのだ。持って来い」



  公爵が傍に控える筆頭執事のシュバラに声をかけるとシュバラは小さな箱を私に差し出してきた。



(相変わらずシュバラは、髪も髭も白いけれど紳士でダンディって感じね。物腰も完璧だわ……)



  ちらっと公爵を見ると開けるように促されたのでそっと開けてみる。


  中からはシルバーのブレスレットが出てきた。



「これは……」


「頼んでいた偽の収魔ブレスレットが出来たのだ。魔法の修行のために必要だと言っていただろう?」


「あ……」



  確かに自分自ら収魔ブレスレットを常時外していたいのだと公爵に頼んで偽の収魔ブレスレットを作ってもらっていた。

  だが、今付けている収魔ブレスレットにはここ最近も熱心に圧縮して入れ直した魔力が入っている。

  それにまだ圧縮していない魔力も多く、今後も修行のために活用する気になっていた。



「あの……では、今付けている収魔ブレスレットは……」


「2つ付けていてはおかしいだろう。こちらで預かる」



  公爵の顔には、今更何を渋るのか分からないと書いてある。

  自分から頼んでおいて今更取られて困るなど、言えるはずもなく私がどもっていると、公爵が言った。



「魔力暴走が心配なのか?その事ならば問題ない、その対策も考えてある」



  公爵がそう言うとシュバラがもうひとつ箱を持ってきた。


  公爵に促されるままその箱を開けると、中からは髪飾りが出てきた。

  花と蔦の銀細工でできた髪飾りは大きな花に黒に近い紫の石が嵌められている。

  光にかざすと紫の石に細かく入れられたカットによってキラキラと光を反射する。



(綺麗……)



「それの石に収魔ブレスレットと同じものを使っている。より純度の高いものだから魔力暴走を起こすほどの魔力でも直ぐに吸ってくれるだろう」



  もしも自分で魔力操作しきれず魔力暴走しそうな時に、収魔出来るようにわざわざ代わりになるものを用意してくれたらしい。



「ありがとうございますお父様!」


「それは、手で触れ意識すれば周囲の魔力を収魔するが、触らなければ収魔することは無い」



  そういうと公爵は席を立ち、食堂を出るところで振り返らないまま止まった。



「しっかり励みなさい」


「!はい!」



  その一言を言うと公爵は食堂を出て直ぐに皇城へと向かわれた。

  私は公爵が食堂を出たのをしっかり見送ってから、手元の髪飾りを眺めて一生の宝にしようと心に決め抱きしめた。

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