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27、レンのお披露目会1

  ガルマ公爵家レン令息のお披露目会は、昼前の開始となるので私はそれに向けて早朝訓練を手短に終えて支度をした。



「本当にフィリセリア様は何色を着ても似合いますから羨ましいです」


「ありがとうリリア」



  私としては髪の色は違いながらも瞳の色に合わせたドレスの人も素敵だなと思うのだが、こればかりは体質なので仕方ない。


  今日のドレスは暖色の庭にレン令息と出た時に薄紅色も似合うと言って貰えたので、薄紅色のドレスにしてみた。

  髪はリリアによる編み込みと持ち前の癖毛で、とても華やかな髪型となっている。


  私はなんとなく物足りなさを感じて、アクセサリーボックスの中の花のネックレスを取って欲しいとリリアに頼む。



「でも、フィリセリア様。首元はドレスで既に華やかですけれど?」


「こうするのよーー」



  私は錬金術を使い、花のネックレスのネックレス部分を加工して花の簪に作り変えた。

 

  私が錬金術を扱えることは、昨日のお披露目会で多くの貴族たちの周知となった。

  なので、その点に関しては今更隠しても仕方ないだろうと開き直ったのだ。



「凄いですフィリセリア様!!それは土魔術ーーいえ、魔術陣は見えませんでしたね」


「錬金術よ」


「フィリセリア様は錬金術が使えるのですか!?はぁ……想像を超える優秀さですね」



  今作り直した花の簪を編み上げられた髪に挿してもらうとより一層、髪の華やかさが増した。



「とても可愛らしいですね!これも流行りそうです!」


「そう?」


「はい!ドレスアップの時はドレスを目立たせるために髪はシンプルにする事が多いですが、髪が華やかなのもいいですね!」



  ミラージュヘアが服の色をそのまま移してしまうので、私は普段着でもドレスでもシンプルに単色で着たり、他の色を入れるとしても裾に少し入れる程度にすることが多い。

  そして必然的にシンプルなドレスとなる。

  そこに華やかな髪飾りだからこそ似合うのだ。


  ネックレスから作った髪飾りは銀製か金製の物で、内部に付けられている宝石は色物。

  何故か銀製、金製の物は髪が色を移さないから髪飾りなどは銀製か金製と決めているのだ。


  ちなみに錬金術についてお披露目会の帰りの馬車で父様に『なぜ錬金術が使える事を事前に教えてくれなかった?』と言われたが、その場の思いつきだったとしか言えなかった。


  前世で身につけていた事だったから出来ただなんて言えないし、前もって訓練していたと言っても『どこでその知識を得た?』と言われるだろう。


  その場の思い付きだと言った私に、父様は『お前の才能には呆れる』と言われたが、深く詮索されずに済んだことに私はほっとした。


  支度が整うと玄関ホールへ行き、父様母様と共にガルマ公爵家へと向うため馬車に乗り込んだ。



 ****


  ガルマ公爵家の宴会用屋敷も当然帝都内に造られているので、我が家からほど近い所にある。

 

  私達が到着すると既に皇家からヴァシュロン、ライダンシェル公爵家からは公爵とラグダリガ殿、サランディア令嬢。

  ナディル公爵も既に到着しており、私達が公爵家では最後の入場だった。



「ようこそお越しくださいましたレストルーチェ公爵。ファリシア公爵夫人、フィリセリア嬢もお越しくださりありがとうございます」


「こちらこそお招きありがとうございます」


「本日はおめでとうございます」


「お披露目、誠におめでたく存じます」


「改めまして、こちらが今回お披露目となりました息子のレンでございます」


「レン・ガルマでございます。今後、何卒よろしくお願い致します」



  ガルマ公爵家にはレン令息の兄達、長男サイ殿次男ユウ殿も居るのだが、その二人はそれぞれヴァシュロン、ライダンシェル公爵とナディル公爵のお相手をしているようだ。



「サイとユウは他のご来賓方の相手をしており、この場でご挨拶出来ず申し訳ありません」



  私がヴァシュロン達の相手をするお2人を目で追ったからか、ガルマ公爵が私にそう言った。



「いえ!私こそ不躾な視線を送ってしまい申し訳ございませんわ」


「後で2人を令嬢の元へご挨拶に向かわせますね」



  ガルマ公爵がそう言ってすぐ、他の来客が入場して来た為、私達はその場を離れた。


  私達は揃って皇族であるヴァシュロンの元へと挨拶に向かう。



「ご歓談中申し訳ない。殿下にご挨拶申し上げたく存じます」


「これはレストルーチェ公爵。挨拶喜んで受けましょう。すみませんサイ殿」


「お構いなく殿下」



  ヴァシュロンにサイ令息と呼ばれた青年は、黒髪黒目で切り揃えられた短めの髪をしていた。

  目は少し鋭く、なんだか気難しそうな印象に見える。



「帝国の星、ヴァシュロン・ティルス・シャルディルチア殿下にレストルーチェ一同ご挨拶申し上げます」


「ええ。挨拶確かに受けました。フィリセリア様、お久しぶりですね」



  ヴァシュロンは父様の挨拶を受けてすぐ、私に向けて微笑みながら話しかけてきた。



「はい。お久しぶりですヴァシュロン殿下。お会い出来て嬉しいですわ」


「僕もです」



  私が一般的な社交辞令で会えて嬉しいと言うと、ヴァシュロンはそれはとても嬉しそうに笑みを見せる。



「フィリス、お披露目会が始まるまでにまだ時間がある。ヴァシュロン殿下と共に過ごされたらどうだ?」



  父様が私にそう提案すると、ヴァシュロンは見るからに嬉しそうな顔で私の顔を見た。



(ガルマ公爵家の長男であるサイ様がヴァシュロンの相手をしているなら、私が彼の相手をするのはガルマ公爵家にとって邪魔な事でしかない気がするけれど……)



  私が心配になってサイ令息を伺うと、彼は無表情のままお辞儀してきた。



(お願いしますってこと?でも……)



  私が若干不安に思いながらヴァシュロンの方を見ると、先程と同じく期待の表情でこちらを見ていた。



(まぁ……いいんでしたら、いいですけれど)



  私は、来場者が揃い開始となるまでヴァシュロンと共に過ごす事となり、共にグラスジュースを貰うため近くの侍女に声をかける。



「飲み物を2人分いただける?」


「はい。何に致しましょう?葡萄果実水、柑橘水、冷やし緑茶、梅水などご用意ございます」


「!緑茶や梅水があるの?」


「何それ?」


「ワディス国より取り寄せました緑茶葉で作ったティーと、同じくワディス国より取り寄せました梅という実から作ったジュースでございます」



(ワディス国ってガルマ公爵の娘マヤ様が嫁がれた国ね?もしかして他にも日本っぽいものがある国なのかしら……とても気になるわ)



「そんな遠い国の産業を知っているなんてさすがフィリセリア様は博識なんだね?」


「ちょっと……ワディス国の物に興味があって少し勉強していたのです……」


(日本のものなら大抵わかるなんて言えないし、遠い国らしいワディス国に詳しいのもおかしい。適当に誤魔化します!)



  私は緑茶を選び、ヴァシュロンも私を習ってか緑茶を受け取った。



(うん。この味だわ……やっぱり落ち着く)


「……水に少し味が付いている?紅茶ほど濃くないんだね?でも、色の割にはそこまで苦く感じないかも?」


「上手に入れているからですね。美味しいです。下手に入れれば茶葉の苦味が出て渋くなりますからーー」


「お詳しいですね?」



  私がヴァシュロンと緑茶を飲んで感想を言い合っていると、サイ様が話しかけて来た。



(さっき別れたのに、いつの間に来たのかしら?)


「詳しくなんて……たまたまワディス国について勉強していただけです。サイ様、こちらにいらしたのは何か……」


「いえ、あの後すぐ父にヴァシュロン殿下はフィリセリア令嬢にお任せした旨を伝えたのです。そしたら『長男であるお前が接待しなくてどうする!』と言われまして戻ってまいりました」


(……え。当たり前ですけれど……ため息まで吐かれて……。キリッとしていて厳しそうな冷たい印象でしたのに、意外に抜けたところのある方なのかしら?)

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― 新着の感想 ―
[一言] この小説は楽しいです!お気に入りです。主人公は多分まだ、本当のチートに目覚めてないと思うのでこれから期待です。お話の展開も楽しいですね。長期小説を希望したいです。漫画、アニメ化も望みます。
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