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25、サランディアのお披露目会3

次回から3日に1度の投稿にさせていただきます

m(*_ _)m

  ティリカミリス令嬢達に殿下達にのことを聞かれた後は、各々のドレスを褒め合ったり参加者の服装を評価したりしてたわいなく過ごせていた。


  ダビッド殿下が私と関わるのを嫌ってサランディア令嬢とばかり居たおかげで、いつものように直接的な実害は無いまま時間は過ぎていく。



(このまま何事もなくお披露目会が終わるといいのですが……)


 

  そう上手くは行かないようで、ダビッド殿下がサランディア令嬢を連れてこちらへ向かって来た。

 

  2人とも嫌にニヤついている。



「皇城お披露目会では随分無礼な特技披露だったなあ?レストルーチェの娘」


「そのようなことはございませんわ」


「とても素晴らしかったではありませんか!」


「美しい舞と歌でしたわ」



  ダビッド殿下の言葉に、その場に居たシャディア令嬢達が否定してくれた。


  だが、その反応を殿下は鼻で笑う。



「貧民が得意とする歌や踊りを城でしておいて無礼でないわけが無かろう?見苦しいものを見せやがって……サランディア嬢、バリシテを貸せ」


「ええ」



  サランディア令嬢は殿下の言葉で、自らのバリシテを手渡した。

  お披露目会の時にも使った装飾過多のバリシテだ。


  それをダビッド殿下は私に差し出す。



「特技披露で見せる事が出来ずとも一応の教養としてバリシテくらい習ってるだろう?下手くそなバリシテをここで弾いてみるがいい」


「クスクス。ろくに楽器が弾けないからお披露目会であんなのを披露したのでしょう?どの程度の腕前なのか見てみたいわ」


(2人とも午前の私のお披露目会に参加していないから、バリシテを披露したことを知らないままなのね……)



  実態を知らずに大きな態度で私にバリシテを弾かせようとする2人の元に、サランディア令嬢の兄であるラグダリガ殿が駆け寄った。



「サランディア!フィリセリア嬢はーー」


「黙ってくださいな兄様。私の邪魔立てなど許しませんわよ?」



  恐らくラグダリガ殿は、レストルーチェ公爵家のお披露目会での事を伝えようとしたのだろう。

  だが、サランディア令嬢はそれを遮って兄であるラグダリガ殿を黙らせた。


  そして、ダビッド殿下に向けてドヤ顔な笑顔を向ける。



(多分……『私は兄より立場が上なのよ!』と、自慢したいのでしょうね)



  稚拙な自分優位欲により今まさに首を絞めたことに気付きもせず、サランディア令嬢はそれはもう上機嫌であった。


  この時点で既に周囲の目はだいぶ集めていたが、ダビッド殿下はさらに私が引けないようにするため会場に声を響かせた。



「これよりフィリセリア嬢がサランディア嬢のためにバリシテの演奏を行う!!皆、視聴するがいい!」



  ダビッド殿下は『これで引けないだろう?』と、嬉しそうに私に笑みを向ける。

  そして、サランディア令嬢も楽しくて仕方ないと、先程からクスクスと笑い続けている。



(バリシテは得意ですし別に構いませんが……。私が本当にバリシテを弾けない人間だったなら、明らかな虐め行為ですわよね?)



  内心苛立ちを湧かせながらも私は殿下の手からサランディア令嬢のバリシテを受け取った。



「……このように装飾の付いたバリシテでは、それほど響かないと思いますが……」


「ハッ!この期に及んで言い訳をして逃れようと言うのだな?そんなことは認めん!」


「装飾が多いからなんですの?本当にバリシテに自信があられませんのね〜?アハハハッ」



  何を言っても言い訳だ弱音だと馬鹿にされそうなのでそれ以上の事は言わず、私は装飾過多なバリシテを持ってホールの中心へと進んだ。



(このように色んなものを付けられていてはきっとバリシテは、響かない。短い音の曲で弾き弾くしかありませんわね……)



  私は前世のバイオリン曲のように響の綺麗なものの方が好きだが、こちらの国の曲もしっかり練習を積んできているので演奏可能だ。


  私は目にものを見せてやろうとバリシテを習い始めてから最も難易度の高かった曲を弾き始める。


  身体強化をかけて。


  動きも音も、もはや人間業とは思えないものな上、 圧倒的な演奏技術力に、完璧なリズム感。


  この速さでは1曲弾くだけだと直ぐに終わってしまうので、独自アレンジをしながらその曲を続けて5回演奏した。


  そして、演奏が終わった途端に観客が一斉に歓声と拍手を送った。



「凄いっ!もう凄いとしか言えない!」


「なんて才能の持ち主っ!」


「もはやフィリセリア嬢はバリシテのプロ奏者だっ!」



  誰もが賞賛の声を上げる中、ダビッド殿下とサランディア令嬢は唖然としていた。



「いやあ、素晴らしい演奏を有難うございます!最高の宴になりました」



  そう言ってライダンシェル公爵までもが私を褒め、握手を求めてくれる。


  その事にサランディア令嬢は、信じられないという様子で目を見開き、目に涙を浮かべてキッと私を睨んだ。


 そして、正気に戻ったダビッド殿下はーー



「あっ」



 ガシァアンッ!


  ダビッド殿下は、私にドシドシと近づいてきたかと思えば、私の手からサランディア令嬢のバリシテを強引に奪い取り、床で叩き割った。



「クソ駄楽器がっ!!」


「あ……ああああ〜っ!」



  ダビッド殿下はそう吐き捨て、シンと静まり返ったホールの中でサランディア令嬢だけが悲鳴を上げ崩れ落ちた。



「なんて事を……」


「フンッ!クソ駄楽器が悪い。耳障りなもん聞かせやがって……」


「だからとっ!あれは私のバリシテでは無く、サランディア様の持ち物なのですよ!?」


「知るかっ!気分が悪い、俺は帰る!!」



  そう言ってダビッド殿下は、その足で出口の方へと向かい、殿下の元へはライダンシェル公爵が向かった。



「お待ちくださいダビッド殿下!娘のサランディアは大層バリシテが好きで、今まで集めたバリシテを全て大切に大切にしているほどなのです!」


「だからなんだ!弁償か?なら適当な額を払ってやる!そんなのは後日でいい!俺は帰る!」



  サランディア令嬢はバリシテ好きで、バリシテ収集の趣味があるようだ。

  だから、あの崩れようなのか……と、私は納得すると同時に人の大切にする物を気遣いもしない殿下に怒りが湧く。



(本当に最低男っ!!)



  殿下は周囲の目もライダンシェル公爵も振り切り、本当にそのまま帰ってしまった。


  会場内はダビッド殿下が退場すると、さすがの殿下の態度に皆思うところがあり、小声ながら非難の言葉でざわめいた。

  その中で、サランディア令嬢は泣きながら自らのバリシテに近付き、バリシテの前まで来ると再び崩れた。



(バリシテが好きで収集家でもあり、ましてこのバリシテはお披露目会のために設えた特別な物。替えなんて効くものでは無いわよね……)



  先程までは『目にものを見せてやる!』と意気込んでいたが、まさかこのような結果になり目の前で泣き崩れられては、とても哀れに思えた。



(……多くの貴族の前で目立つ事はしたく無かったのですが……仕方ありませんわよね?)

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