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1、焦燥感を掻き立てる蒼月

初めて小説を書きます。どうぞよろしくお願いします(´∀`*)

 特に夢を見たわけでもなくなんとなく目が覚めてしまった真夜中……。

  すっかり目が冴えて、寝直す気にもならないので窓のカーテンを開けると暗闇の中で眩しく光る蒼銀の満月が輝いていた。


(なんだろう……何かやらないといけない事があった気がする。急がないと……あれ?急がないとなんだというの?)


  月を見上げながら何に焦っているのかも分からないまま焦燥感に駆られた。


(何か……やらなくてはならない使命があった事だけがわかる。なんだったのかまるで分からない……)


  いくら考えても何をしなくてはならないのか使命とは何なのか思い出せず焦りの感情だけが湧く。

  だが、使命もやる事もあるはずが無い。

  私はまだこの世界に産まれて3年と少ししか経っていないのだから……。



 ****


「フィリセリア様、昨夜はよく眠れなかったのですか……?」


「うん……。なんか、夜に目が覚めちゃって……」


「あらあら、目を擦ってはいけませんよ。赤くなってしまいます」


  そう言いながら私の朝の身支度をしてくれるのは私付きの専属侍女のリリアだ。

  リリアは亜麻色の髪を2つの三つ編みに結んだ朱色の目をした若い侍女。

 2歳までは私の世話をしてくれるのは主に乳母だったけれど3歳の誕生日からは専属の侍女がついたのだ。


  リリアに言われてから近くにある姿鏡を見れば深く明るく色んな色合いを見せる蒼の瞳。

  そして、周囲の色をそのまま写す銀水晶の波打った髪。

  知る者にはミラージュヘアと呼ばれるその珍しい髪色をまとった少女が、いかにも眠そうな顔をしていた。



「本日は午前にマナーと読み書きの勉強の続き。午後はダンスの練習ですよ。5歳のお披露目までには頑張って色んな事を身に付けなくてはなりませんからね!」



  やる事リストからも、専属メイドが付いていることからもわかる通り私の生まれた家は貴族の家柄。

 しかも、このレストルーチェ家の爵位は公爵。


 私は女だから爵位は産まれてもいない弟が次ぐ事になるだろうけど、当然のように私にも公爵家の人間としての完璧さが求められた。



「朝食食べても、まだマナーの勉強まで時間あるよね?」


「逃げたりしたらダメですよ〜?まだ3歳ですし、なかなか集中が続かないのも分かりますけどいずれ社交界に出る時にーー」


「嫌なんじゃないの!家のためにも私のためにも必要な事だってわかってるから。そうじゃなくて……時間があるなら読み書きの勉強してようかなって……」


「へ?」



  リリアが驚くのも当然だ。


  昨日までは勉強の時間を避ける事はなくとも集中力が続かず隙あらば「勉強したくない」「外で遊びたい」と顔に書いてあったお嬢様だ。

 突然自分から勉強をしたいと言い出すなど思いもしない。



「ど……うなさったのですか!?熱?……は無いですね」


「……(とても失礼よそれ)」



 突然勉強をやる気になったのは昨夜の焦燥感が原因。

 何をすればいいのかまるで分からない。


 だが、何か目の前の事を真剣に取り組んでいかないと取り返しがつかなくなるのでは……と気持ちばかりが急いていた。



「本当に朝から勉強なさるんですか……?」


「うん。朝食食べたらマナーの時間までやるから用意しておいてくれる?」


「かしこまりました……」



  それから朝食の用意された食堂へ移動した。食堂には既に母様が座って待っていた。

  父様は見当たらないけれど、いつもの事。


  きっと仕事が忙しくて皇城で軽食程度に朝食をとっているのだろう。



 ****


 食堂の入口に立った彼女の短いミラージュヘアは、ドレスの淡いオレンジ色に毛先の方から染まっている。

 その姿を目に止め笑顔で挨拶してくれたのは、ファリシア・レストルーチェ 私の母様だ。



「おはようフィリス。今日も素敵な髪色ね。よく……は眠れていないようね?顔に書いてあるわ」



 食堂に入った私にお声をかけて下さった母様は、透き通るような金の髪が艶めいて藤色の瞳が今日も澄んでいてとてもお美しい。


(私もあのような美人になれるのでしょうか……)


「おはようございますお母様。はい……夜に目が覚めてしまってそれからなかなか眠れなかったのです」


「そういう時はメイドを呼んでもいいのよ?暖かい飲み物を飲んだ方がよく眠れるし。いつでも呼べるように専属のリリアが付いているんですからね?」


「はい。わかりました」



 専属のメイドは主の部屋のすぐ隣に部屋がある。

 続き部屋ではないが、すぐに呼び出せる距離には居るのだ。



「お腹の赤ちゃん元気ですか?」


「元気だと思うわ。まだ、お腹に居るって分かったばかりだから動いたりはしないけれど。お医者様がお腹の子は元気に成長してますよってこの間も言ってくださったの」



 母様のお腹には私のきょうだいがいる。


 男の子か女の子かは産まれるまで分からない。


 もし、男の子ならその子がこの家の次期当主になるのでみんな待ち遠しそうにしている。



「フィリスは赤ちゃんの心配をせず、マナーの勉強やダンスの練習を頑張ってね?5歳のお披露目は2年後だけれど2年なんてあっという間よ?」


「はい。お母様」



 ****


 朝食を終えてからは朝リリアに伝えたようにマナーの時間まで読み書きの勉強。

 それからマナー、読み書きとこなした。


  昼食は母様が来客としなくてはならないとの事で1人で食べた。

  5歳のお披露目までは親戚以外に顔を見せてはいけないからだ。

  それからダンスの練習も問題なくこなした。



(やらなくちゃと思うと出来るものね……。今まで全然進まなかった勉強や練習がサクサク進んじゃった)


  いつもなら続かない集中力が強く意識して取り組むことでよく持ち、先生が驚く程にどちらも捗った。



(この調子でマナーもダンスも完璧にしておこう。多分……やらなきゃいけない事はこれじゃない。けど、いずれ必要になるかもしれないし元々必要な事だから早く身につけよう…)



「色んな事を身につけるんだ。どんな事が待っていても、大丈夫なように……」



  気持ちばかりが急いた結果だが、その後も読み書きもダンスの練習もよく捗り、月齢には早く計算や歴史の勉強を始めるまでになった。


 私自身は気持ちの焦りから目の前の出される課題を次々クリアしていく事にばかり目がいっていた。

 だが、お披露目前から彼女を目にしてきた親戚達からは身分も確かな優秀な娘として映っていた。

挿絵(By みてみん)


はじめの方の鏡で自分の容姿を見るところ

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