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言ノ箱庭  作者: 若取キエフ
三日目 明かされる島の正体
18/52

18話 少女とデート


 その後、コンビニの前で出会った少女を連れて、地元民からすると特に人気でもないスポット巡りをした。


 自転車を近くの駐輪所へ停め、バスに乗って田舎道をひた走る。

 島が一望出来る展望台、島に唯一ある、何を祀っているか分からない神社、海辺付近のなんかご利益があるらしい大岩など、島についての手掛かりがないか回るのだが、ミコトは終始「なるほど」と、一人で勝手に納得しながら黙々と眺めるばかり……。


 少女がいるから下手なことは言わないスタンスなのか知らないが、いつもより口数は三割減なミコトである。

 と、一通り見てから。


「そういえば君の名前聞いてなかったな」


 お互い自己紹介がまだだったと気付く。


「ん~? 璃羽りうだよ」


「璃羽ちゃんね。俺は圭、こっちはミコトだ。今更ながらよろしく」


「うん、よろしくお兄さん」


 どうやら名前を覚える気はないらしい。







 あらかた見て回った俺達は目的を果たし、今度は璃羽の行きたい場所はないか尋ねた。

 すると璃羽は商店街を勧めてきた為、彼女の要望に応え若者の賑わう場所へ足を運ぶ。


 日曜日なだけあって、平日よりもさんざめく声が強く耳に残る商店街。

 ここは普段から来ているしミコトにも案内済みの場所。……とくに目ぼしい所などはないが、璃羽に付き合ってあげるのもいいだろう。

 そう思っていた時。


 ふと、ミコトは遠くを一点に見つめながらぼそりと呟いた。


「遠くから視線を感じる……」


 それは例の百眼百手ひゃくがんびゃくしゅだろうか。


「それってさっきの奴か?」


「分からない。ちょっと見てくる」


 そう言って、ミコトは俺達の元から離れていくのだ。


「おい待てって、本当にさっきのお面女なら危ないんじゃねえの?」


 と、俺は静止するのだが。


「大丈夫、ここは人通りが多いし、急に襲われる心配はないはず。圭はその子の面倒見てあげて」


 聞く耳持たず、彼女は視線が向けられているらしい方向へと歩き出す。

 俺は溜息を吐きながら。


「ミコト、何かあったら昨日の交番に行け。久須見さんが守ってくれる。俺も後で向かうから、そこで合流しよう」


 そう提案し、ミコトは軽く頷いた。


「分かった。それじゃあまた後で」


 そして、彼女は颯爽と駆けて行った。

 ミコトを目で見送っていると、急に璃羽は俺の袖をくいくいと引っ張る。


「いいの? 彼女さん向こう行っちゃったけど」


 なんでみんな付き合ってる体で話すの?


「彼女じゃないんだけどね」


 そう否定すると、「そうなの?」と言いながら若干楽しそうな表情を浮かべるのだ。


「なら遠慮しない。お兄さんは今から私とデートするの」


「ええ~急に? どこ行くの?」


 そう言うと、璃羽は俺の腕をがっちりホールドしながら。


「リードしてあげるから私に任せなさい」


 そう言って、彼女主導で商店街を回った。






 その後、ウキウキしながら駆け回る璃羽。


「あそこのクレープ屋さん行こっ! あ、あっちのアクセサリーもみたい!」


 あっちへこっちへ、少女は興味の湧くほうへ指を差し、手招きしながら誘導してくる。

 俺は少女の気の向くままに後を追う。しかもだ。


「あ、ここは私が払うね」


 飲食代は少女持ち。


「いいよ、子供に奢られるのはさすがに気が引ける」


 と、断るのだが。


「私がそうしたいからいいの。お兄さんは黙って一緒にいてくれればいいから」


 少女の強い意志に負けてしまう。周りの目が気になるからむしろ払いたい……。




 そして現在、猫カフェでまったりと猫に囲まれていた。


「ニャン子かわいい~」


 少女は顔をほころばせながら猫を抱いている。

 こうしていると、やはり見た目通りの女の子だ。

 商店街に入った途端の天真爛漫っぷりは見ていて和む。


「楽しいか?」


「うん、普段誰かと商店街なんて行かないから、とっても楽しい」


 璃羽は年頃の子供らしく満面の笑みで俺に返した。


 その笑顔を見ながら思う。

 こんな小さな子でも、何かの『想い』に縛られて島に囚われているのだろうかと。



 やがて璃羽はホコホコ満足した様子で「堪能した」と呟き、俺達は猫カフェを出た。





ご覧頂き有難うございます。

申し訳ございませんが、明日、明後日はお休みさせて頂きます。

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