表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

96/113

96 愛玩奴隷 筋肉を信仰する


「だから優先順位の話、したでしょ?」


「……優先順位、デスか?」


 やべぇな……半分以上寝ていたせいで、かなり記憶が怪しい。


「そうよ! 筋肉も同じ! いきなり全身を鍛えようと思っても上手くいかないわ! まずは、僧帽筋、次に上腕二頭筋、広背筋、大胸筋……順番に一つ一つ丁寧に彼らの声を聞くの!」


 お、おう……?

 そ、そういうもんなのか? 筋トレって……


「でも、大切な筋肉の話をしている内に、レイニーったら船をこぎ始めるんだもの……」


「す、スイマセン……デス」


「だから、改めて言うけど、要は同じことよ! 私たちの目的は家に帰る! そのためにまず何をすべきか整理しなきゃ!!」


「そ、そういうことデスか!」


 なるほど!

 では、整理しよう。


 ・目的:ここからの逃亡

 ・目的を妨げる障害:1、外の結界 2、隷属の首輪……である。


 では、この障害を排除するために僕たちが出来る事は何だろうか。

 まず、一つ目の結界を壊す方法は「古代魔法遺物アーティファクトを壊す」「スオウさんを倒す」の2種類の方法が考えられるのだが、それぞれに問題点がある。


 まず、 古代魔法遺物アーティファクトを破壊する場合は、それが何処にあるのか、そして、それはティキさんが素手で破壊できる程度の代物なのか分からない。

 次に、スオウさんを倒すには、あの【防御魔法】と『隷属の首輪』がネックになる。


 となると、どうしたって厄介なのが『隷属の首輪』。

 ただ、これは、スオウさんがいつも腰に付けて持ち歩いているので、在処はハッキリしている。


 また、どういう訳なのか、スオウさんはあまりこれを使いたがらない。

 僕がこういうのもおかしい話だけど、「性奴隷調教士」なんだから、さっさとこれを使って女の子の心を叩き折っちゃった方が効率的なような気もするんだけどね?

 でも、それは彼のプライドが許さないんだろう。


 う~ん……何か、あの人って「性奴隷調教士」って職業の割には、甘っちょろいトコロが有るんだよね……?

 本当は調教が嫌なのかな? いや、でも称号的にそれは無いか。

 魔道具ではなく、己の言動で女性を惹きつけたいというか……単に女性って生き物に対してロマンを持ちすぎてるというか……

 まぁ、ココの女の子達の懐きっぷりを見てると、一定の効果は出てる気もするし、逃げ出す為にはちょっとチョロいくらいの方がありがたいから、是非とも、今後もその矜持は持ち続けていただきたいものである。切実に。


 それを踏まえて考えると、まずは、この『隷属の首輪』をなんとかするのが良さそうだ。


「そうね。何とかして、あの鞭の魔道具を壊すことができればいいんだけど……」


 うーん……あの鞭か。


「あの~、僕に一つ考えがあるんデスけど……」


 僕はティキさんに、作戦を伝える。


「うーん、そうねぇ……うまくいくかしら? 要は、アイツに懐いているフリをして、あの鞭を奪って壊すって事でしょ? せめて、数日後でないと怪しまれると思うわ。」

 

「……デスよね」


 女の子達から聞いた話を総合すると、スオウさんのやり方は、1か月くらいかけて(薬漬けと)優しい態度で接することで、女の子の拒絶する意思を懐柔してる、と結論づけられる。

 だから、ここに慣れてきたフリ……他の女の子達みたいに彼を「先生、先生」と慕って甘えればいけると思うんだけど……?


「……でも、悪くは無いわ。隙を見て、いつでも実行できるようにチャンスが有ったらどんどん仕掛けましょう。ただ、それとは別に、貴女には、明確にやれるべきことが有るわ!」


「へ?」


 何だろう? 思わず間抜けな声が口から漏れてしまった。


「それは、筋トレよ!!!」


「ふぇっ?!」


 な、なんで筋トレ?!


「え? だって、いざというとき、自在に飛べないとヤバいって、レイニー自身が言ってたでしょ?」


 お、おう、そ、それは確かに……

 この変身と飛行の力、自在に使えるのと、使えないのとでは、逃亡にしろ、回避にしろ、難易度が天と地だ。


「それに、筋肉を育てる強い意志は、どんな時にも役立つはずよ! さらに、筋肉は決して裏切らないわ!! 大胸筋のトレーニングなら任せて!!」


 ティキさんは、にっこり笑顔でサイドチェストのようなポーズを決める。

 キラリ、と輝く白い歯がカッコイイ。


「よ、よろしくお願いしマッソー!」


 そ、そうだ! 

 万が一、何かのタイミングで、飛行が必要になった時、筋肉の無さが原因で飛べないのでは、あまりに切ない。ここが頑張りどころならばやるしかあるまい!! む、胸肉はマッスル!!!


「それと、口に入れるモノは貴女が【鑑定】してくれるんでしょ?」


「それは当然デス!」


 それだけでなはく、楽園ここでは、可能な限り何でも【鑑定】するように心掛けますよ!

 何てったって、温泉内で誘拐されたんだもんな……僕。


 そう、ここは、僕たちにとって地下迷宮ダンジョンも同じなのだ!

 どこにどんな罠が潜んでいるかわからない。

 リーリスさんが助けに来るまで、命的な意味でも、貞操的な意味でも、無事に生き延びてやるわ!!!

 僕は、トリレタを大切に握り締めて、朝の光に決意を新たにしたのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ