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 深夜2時、社会に貢献している人間であればおおよそ起床しないであろう時間帯に男はいつも目覚める。40歳を過ぎ、自身の部屋から出ることなく黙々と画面を見つめ、暇をつぶすことだけに興じる。そこには何も感情はなく、外界から人がこの部屋の中に入ってくることはほとんどない。


枳貝紀夫≪まつがい のりお≫はこの薄汚い部屋で一生を終えることを確信しているし、両親が自分よりも早くに命を亡くす可能性すら微塵も思い浮かんでいない。彼の時間はもう20年近く前からとまったままだった。人とかかわりを断ち遊興に準じることだけが彼の心と体を癒している。


誰にも関心されない生き方をしているこの男だが、一つだけ自分自身で誇っていることがあった。それは多くの人々が見ても誇れるようなことでもないのだが、人とのかかわりを断った彼にとってはこれ以上ないほどに自慢したいことだった。


他者を見下し自分は他の人とは違うと自己を守り、口を開けば相手のことを常に否定する。そんな社会不適合者でも注目される場所。今は廃れつつある視聴者の文字が右から左に流れる動画サイト。枳貝は匿名ながらもこの動画サイトで多くの人からの人気を獲得していた。


彼がなにか面白い実況をあげ、それが視聴者に受けたわけではない。それはただ偶然が重なってできた産物だった。この動画サイトにはライブ機能があり多くの配信者が様々な時間帯で放送を行っている。枳貝はこのサイトのヘビーリスナーであり、たまたま見ていた動画のコメントに苛ついただけだった。


「うちのピッピもそんなこと言ってた~www」


誰も聞いてないそんな自分語り、自分の幸せの自己開示にいら立ちを覚えた。






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