紆余曲折あって幼馴染どうしで一線を越えちゃう話(?)
一部現実離れした設定があります。
また、ギャグ要素つよめとなっております。
※一部表示が崩れてしまう場合は諦めてください。
私、五十鈴 明日香の自慢は、この髪である。
ロングストレートの銀髪、親世代譲りの地毛だ。
一日だって手入れを欠かしたことは無い。むしろ、今まで生きてきた日数よりも手入れの方が多いだろう程に手入れしてきた。
無論、この長く煌めく銀髪は私のトレードマークであり、個性犇めく魔境の我がホームルームでも埋没はしていない。……埋没は。
……一応補足すると、髪色が衝撃的桃色(地毛)の日産さんだとか、購買欲が強すぎてコミュニケーションに細心の注意が必要な必至的爆買の流能さんだとかがおかしいだけで、私の銀髪だって強い個性なんだぞ?
そんな私に声をかけてくる女が居た。
「いや〜、おはよう! アスカちゃん! 今日もいい髪してるねぇ! ぺろぺろしていい? わさわさしていい??」
日野 野兎、前述の手入れ多すぎ事件の主犯であり、私の髪が好きすぎる女。……そして、私の彼女である。
正しく没個性側であり、黒髪はツーサイドアップ。
特徴らしい特徴もないが、顔は可愛らしく整う。
しかし、可愛いで済まさずによくよくつぶさに観察すればわかる。この女、泣きぼくろがたいそうえっち。淫靡。インビジブルえっち女。見てると興奮する。
が、それとこれとは別。毎朝頑張ってセットしている髪に気安く触れられてたまるか。
というわけで、言い返す。
「今は何時だと思っているんだ……? 寝ぼけたまま学校に来るんじゃない」
「えー、嫌なの?」
「……そういう話ではないだろう。……その……帰り際まで待て。今乱されるのは困るから」
「了解っと! 期待して待つ!」
「……だが、別にさせると言ったわけじゃないからな」
「ふっふーん。素直じゃないんだから」
ふぅ。ノニトの相手は疲れる。丸め込むのにも一苦労だ。
そんな、話題が切れた間隙を縫ってノニトが言葉を発した。
「あ、そうだ。アスカ、誕生日おめでとう!」
「ん、ああ。そんな日付だったか。では、私からも一言」
「なにかなー?」
「誕生日おめでとう、ノニト」
「いえーい、ありがとー!」
そう、私とノニトは誕生日が同一である。
しかも、産まれた病院も同じであり、さらに言うなら家も隣同士。
所謂、腐れ縁の幼馴染というやつだ。
故に、私には分かる。この顔だけは可愛い女の喜ぶことが。
「しかしノニト。私からお前にあげるものは無い」
「なっ!? わ、わたしの誕生日プレゼントが無い、だってぇ?」
「ああ……その通りだ」
「な、なんてこと……! こうなったらアスカを美味しくいただくしかない……? よし。いただきます!!」
「まあ、待て。代わりに……どころか、より光栄だろうが。ノニトには私に貢ぐ権利をあげよう。私の銀髪を映えさせる服でもいい。アクセサリーでもいい。さあ、着飾らせてみよ」
「な、今年もわたしに散財させる気かキサマぁ! ……まあそう言うと思って一部持ってきたよー。はい、どうぞ」
そう言ってノニトが手渡してきたのは、何の変哲もない猫耳カチューシャ(白猫Ver.)だった。
「言ったからには着けてね。今、ね」
「う、うむ。着けるよ」
─────────────────────
うへぇ。
猫耳つけっぱなしで学校はバカ。
ことある事に『ああ、アスカさんとノニトさんの誕生日でしたね。』的なことを言われるんだ。
……私の頭頂部を見ながら。なんなんだ。にゃーん。
とは言えど、もう終わったことだ。既に私とノニトは下校中である。
たわいない話をしながらの下校は、矢の如く一行で過ぎ去っていく。
位置関係の都合上、ノニトの家の方が若干学校から遠い。
となると、私が先に帰り着くことになるが、ここでノニトが中まで着いてくるのはいつものことである。
しかし、今日はどこか家の様子が違う。具体的に言うと、靴が多い。
「あらアスカ! おかえりなさい。今日は日野さん家も来てるのよ。誕生日パーティーを開くわ。まあ、まだ準備が整ってないのよ。少し待っていてちょうだい」
ふむ。なるほど。
我が母の言葉に納得する。
「おじゃましまー! アスカの部屋行ってるね!」
「待て、手を洗え」
「うへーいわかりやしたー」
─────────────────────
母が呼びに来るまで、ノニトによる私のプロデュース会が開かれていた。
折角なので、気に入った一着でパーティーに出ることにする。
八人がけの大机、向こう側に我が両親とノニトの両親が座る。
そして私は座る席を指定され、ノニトの両親側に。ノニトは私の両親側に。
つまり──
アスカ母・アスカ父 ノニト母・ノニト父
[ ]←机
ノニト アスカ
──こうだ。
この時点で私は察してしまったのだ。
というよりも、今確信に至った。と言うべきかな。
なにしろ、私の両親は……どちらも黒髪である。
そのうえ、ノニトの両親はどちらも銀髪である。
きっと、同じ病院であったが為に取り違えが生じてしまったのだ。
それを、誕生日という節目の日にカミングアウトするつもりなのだろう。
つまり──
アスカ母・アスカ父 ノニト母・ノニト父
\ / \ /
[ \ / \ / ]←机
\/ \/
ノニト アスカ
──こうだ。WVに違いない。
「アスカに言うべきことがあったんだ」
両親ズが一度に話し始める。
「俺たちはアスカの本当の親じゃない……っ!」
「ちょっと待って混濁してる。別々に話してくれ」
一気に話されるとさっぱりだ……。どうか落ち着いてくれ。
「そうだな……話すか。日野家と五十鈴家の秘密を」
ノニト父が言う。続いて我が母が口を開いた。
「ごめんなさい、アスカ……。私は、あなたの母親じゃなくて、ノニトちゃんの母親なの。今まで、騙すようなことになって本当に申し訳ないと思ってる。でも! あなたの事を娘じゃないなんて思ったことは無いの! それはノニトちゃんも同じよ。二人とも、私の子供だと思ってるわ!」
やはりそうか。我が母。
そんなとき、ノニトが声を発した。
「じゃあ、やっぱり……!」
それに対応し、ノニト父が言った。
「ああ、そうだ。すまない。俺がアスカの父親だ」
更にノニト母が続く。
「そうなんです。そして私が、……私が。母親です。……そう、ノニトの」
やはり──ん? ノニト母がノニトの母親なんだな?
ん? あれ?
ちょっと私が混乱してるときに、我が父が追い打ちをかける。
「……オレはアスカの父親だ」
んーー??????
つまり──
アスカ母・アスカ父 ノニト母・ノニト父
\ \ / /
\ \ / /
[ \ X / ]←机
\ / \ /
\/ \/
ノニト アスカ
──こうか!!
って!
「これじゃあVWじゃないかッ!」
それっきり、キャパオーバーで私の脳は活動を停止したわけだ。
─────────────────────
「あー! やっと起きた。ねぼすけさん♪」
目を覚ます。ノニトの可愛らしい声が聞こえ、目を開ければ、私は覆い被さるように押し倒されていたのだ。
「なんだ、ノニト。私は夢見が悪かったんだ。そっとしておいてくれ……」
「それってもしかして、ママたちのこと?」
「ああ、そうだ。我が母が我が父で我が父が我が父な夢を……って、ノニト、何故それを知っている」
「知ってるも何も、さっきの話じゃんさ」
「な、なんだと。悪い夢じゃなかったのか……? いや、夢だろう、あんなことあるわけが──」
「ねぇ。そんなことよりさ」
ノニトが嗜虐的な笑みを浮かべる。
「よく考えるとさー。あの誕生日プレゼントの内容じゃあさ、私に得がないよね」
「な、なんだと。自分でも楽しんでいただろうに!」
「でもね、アスカ。貴女がわたしの選んだ服を着てるから。……いつにも増して、今の貴女は……わたしの理想の女の子なんだ」
「お、落ち着けノニト! まだ早いから! こういうのはちゃんと大人になってか──んむっ!?」
「──ぷはっ。アスカの唇、おいしっ」
あぁ……ノニトの、お顔が……恍惚とした顏が……えっちだ……。
もう、素直になっても、いいよね……?
「アスカ、わたしと子ども、つくってくれる?」
──私は、無言で頷いた。
女の子は女の子同士で恋愛して人類が存続すればいいんです。
ですが、申し訳ないがふたなりは解釈違いです。
別の方法を模索してください。