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勇者と魔王の子

 外に出ると、そこで待っていたのは親父であった。


「待っていたのか? 俺を……」


「できの悪い息子だったが。 何があってここまで強くなった。 それを知りたくてな」


「仮にもあんたの息子だからな……世界のためになら強くもなれるさ」


「違うな。 お前は……いや、始めようか。 俺を止めるんだろう」


「あぁ、止めてみせる」


 俺は、親父との最後の戦いを始めた。


 親父は、剣を振ることしかしない。


 だが、それだけで、魔王さえ倒す力がある。


 俺は、数々の魔法を再現できる。


 たが、父とは違う。 俺は何もなしていない。


「あんたのことは尊敬していたのに」


「そうか……そうだろうな」


 親父の一閃を避け、即座に攻撃する。


 親父はそれを避けて、また一振りする。


 俺は、地面を殴り親父の体勢を崩す、そして、影を弾にして親父に撃ち出す。


「ふん。 出来損ないが」


 親父はそれを払うと、俺を地面に叩きつけ、剣を当てる。


「ひとおもいにやれっ!!」


「馬鹿者が!!!!」


 剣を捨てた親父が俺にビンタした。


 その一撃は、今までに受けたどんなものよりも、痛かった。


「……早く立て、お前は俺を倒すんだろう。 世界を救うんだろう? こんな悪党の俺ぐらいさっさと倒さんか!!」


 親父の拳に力がみなぎる。


 俺は、立ち上がり全ての魔力を拳に込めた。


「ごめん。 親父」


「謝るな。 終わらせるぞ」


 拳と拳がぶつかり、衝撃を生む。


 周囲が崩れ、光る。


 そして、最後に立っていたのは、俺だった。


「はやく、トドメをさせ」


「……俺はさ、母さんが死んだのは悲しかったよ。 でも、それが正しかったんだと思う」


「ーー正しいから、それを押し付けて言い訳じゃない。 正しいからこそ、後戻りできる道が必要だったんだ」


「今なら、後戻りはできるよ」


「俺は、王を殺した。 もう引き返せない」


「そんなことはないよ。 だった世界はまだ存在してるもの。 そんな罪、忘れて2人で生きていこうよ」


「……ははっ。 そんな道があるのか」


「うん。 親父が嫌じゃなければ」


「…………それもわるくないかもしれない」


 俺は、その後も生きている。


 親父と、母と一緒に。


 伝説の勇者と、それに倒された魔王の子どもとして。


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