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天下無双

 城の近くに着くと、なにやら騒がしい。


 構わず進もうとする俺を兄弟が止めた。


「……兵士は血眼になっている。 必死な奴を相手にすると厄介だぜ」


「なら、どうする……大人しく引き下がるのか?」


「一旦進み出した男は簡単に引き下がったりするもんじゃねえな」


「その通りだな兄弟」


「まぁ、ちょっと待っててくれよ」


 そういうと、カドワキは物陰に隠れながら城に近づいて行く。


 慌てふためきながら兵士が走る。


 その兵士の視線を読みながら近づいて行く。


 そして、1人の兵士と兄弟の距離が最も近くなった時、兄弟の激情の一撃が兵士を捉えた。


 気絶する兵士を引きずりながら、兄弟はこちらへ近づいてくる。


「さて、適当に建物に……そうだな。 あれがいい。 あそこに入るか」


「え? 人に見つかったらどうするつもりだ」


「安心しろよ。 この騒ぎのせいか一般人は見つからない。 きっと中にもいないさ」


「俺は、むしろ中にいっぱいいると思うけどなぁ。 だって外にいないから」


「じゃあ行くのはやめとくか?」


「いいや、行こう。 キラキラしてて面白そうな建物だ」


「そうこなくちゃっ。 さすがは兄弟だ」


 そう言い合うと俺と兵士を担いだ兄弟は城の近くにあるきらびやかな豪邸に入っていく。


 扉を開け中を伺うと、どうやらもぬけの殻のようだ。


 受付のようなものが見えるあたり、ここは何かの店なんだろう。


「ひゅー。 貸し切りとは気分がいいな」


「だな。 で、ここは一体なんの店なんだ?」


「そうか。 兄弟は知らねえのか」


「うん。 兄弟は何か知ってるのかい?」


「まぁ……愛がある場所かな。 とりあえず適当に部屋に入るか」


 俺たちが入り込んだ部屋は暗いがカラフルな光に照らされた部屋だった。


 それなりに広く円形のベッドがまず目に入り、近くにはシャワーが設置されている。


 最初に思ったのはカラオケボックスだ。


 ただし、置いてあるのはカラオケセットではなくベッドだったが。


「ここは、歌でも歌いたくなるねぇ」


「そりゃあいい。 だが、またにしようぜ。 今日は忙しい……いっ!!」


 兄弟はそういいながら、兵士を蹴飛ばした。


 兵士はいつのまにか、腕と足が拘束されている。


「何者だ。 お前らが……君はレム君か」


「あちゃー。 顔を見られちゃったか」


「なんのつもりなんだ。 君が刺客だとでも言うのかい?」


 刺客?


 なんのことだろう。


「おい、そのことを詳しく話しな。 もしかしたら力になれるかもしれないぜ」


 兄弟が問う。


 それに対し兵士は口を一切開きはしない。


「そうかい。 なら、喋りたくなるようにしてやるよ」


 そういいながら、兄弟は棒状のものを取り出す。


「待ってくれ。 なぁ、俺たちに状況を教えてくれないか」


「……君が刺客の可能性があるのに言うことなんてできない」


「刺客ってなんのことだよ。 もし仮に俺たちがそうだとして、こんな回りくどいことをするもんか」


 兵士は答えない。


 口を紡ぎ言葉を発さない代わりに、目で敵意を訴えかけてくる。


「どきな兄弟。 こいつは俺たちの質問が聞こえなかったんだよ。 耳くそが溜まってるんだ。 だから、掃除してやらなきゃな」


 兄弟が兵士を押さえつけ、耳に棒を突っ込んだ。


 ゆっくりと侵入するそれは、周囲の壁を撫で兵士に悦の感情を与えているのは、兵士の表情から見て取れる。


「どうだ。 やっぱり溜まってだろう。 ほら、兄弟見てくれ。 こんなにでかい垢が取れた」


「ん? おぉ。 確かにこりゃ立派だな」


「だろう? そういえば兵士。 腹が減ってないか? ここにこんな立派なものがあるんだが」


 そういいながら耳垢のついた棒を兵士の喉に突っ込んだ。


 いきなりのことで兵士がむせる。


 その目には涙を浮かべている。


「さぁ、続きをするか。 今度はもっと奥にしてやろう。 知ってるか? 耳の奥には膜が張ってるらしい。 俺は膜を破るのが好きでなぁ。 お前も好きだろう?」


「…………」


 兵士は、顔を真っ赤にしながら歯を食いしばっている。


 耳へ、棒が侵入すると、その表情は一層険しくなる。


 ゆっくりと、だんだんと侵入していくにつれ、赤かった顔は青ざめていく。


「おいおい震えるなよ。 手が滑ってズッポリいったら大変だ……すまんすまん。 聞こえてないんだったな」


「は……話す」


「ん。 なんだって?」


「話す。 話すからもうやめてくれ」


「いいんだよ無理しなくても、俺はお前に奉仕したいだけなんだから」


「話させてください。 私がお礼したいんです」


「……そうか。 なら、聞こうか」


 兄弟は耳から棒を取り出す。


 そして、足の拘束を解除し座らせてやってから話を聞き始めた。


「王を殺す刺客が放たれたらしい。 そう言う情報が間者から流れたんだ。 それで、厳戒態勢が敷かれて、あんた達はあまりに怪しかったから」


「……そうなると面倒だな」


「あぁ、王が死ぬ前になんとかしないとだな兄弟」


「兵士さん聞いてくれ。 俺たちは王を救うために来たんだ。 信用できないかもしれないけど安心してほしい」


「レム君……どのみち、俺にはもう何もできなさそうだ。 頼んだよ」


「あぁ。 頼まれた」


 そう言って、俺たちは兵を解放して部屋を後にした。


「物は言いようだな。 良い言い訳ができたぜ。 さすがだ兄弟」


「へへ。 兄弟に褒められるとお世辞でも嬉しいや。 よし、王が殺される前に行こうか」


「あぁ。 ぱっと身柄を回収してやろうかい」


 俺たちは正面から城に入っていく。


 兵達の視線が集まっていき、中へ入れた頃には囲まれてしまった。


「楽しもうぜ。 今日はパーティだ」


 兄弟のその言葉に呼応するように俺は言った。


「主役はもちろん俺たちだな!!」


 2人の力は天下無双に届き、それを止められる兵士が現れるのはもうしばらく後になりそうだ。

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