ボストージョー
リーダーの男から得られた情報を簡単にまとめるとこうだ。
エミリアに国王暗殺をさせた理由はわからない。
エミリアは、多額の借金で逆らえない状況だった。
彼は知らないが、トップの男がエミリアの何かを利用しようとしている。
この男の笑い声は気持ち悪い。
「……もう、何も話すことはねえよ」
笑い疲れたようで、男は悪態を吐くことも出来なくなっていた。
「いや、お前ほとんど何も離してないからね」
結局のところ、特に何もわかってない。
トップの男に接触すれば、色々わかりそうだが。
「なぁ、トップの男に合わせてよ」
「嫌だね。 俺たちは仲間は売らないんだ」
「そう。 それじゃあ仕方ない」
「……くそっ」
俺が男に手を伸ばすと、男は目を背ける。
男の拘束が解かれる。
「ねぇ、借金を返したいんだけど、今手渡しでもいいの?」
「……悪いが、受け取る気はねえよ。 それが、ボスの命令なんでな」
「返済できない借金ってなんだよ」
「……いいぜ。 俺を殺しても。 ボスが必ず仇をとってくれる」
「は? いやいいよ。 もう帰れよ」
「……いいのか?」
「そりゃねぇ。 そうだ。 君の名前は?」
「次、あった時聞いてくれ」
男たちは、この場を離れていく。
今気がついたが、夕陽はもう落ちかけている。
……帰るか。
「とりあえず、うち来るか?」
「そうですね。 今1人になるのは危ないですし、ご厄介になります」
「うん。 騒ぐなよ」
「私、静かな方ですよ」
「そりゃ助かる」
「えぇ。 よくマグロに例えられるぐらいです」
「……あえてスルーさせてもらおうか」
俺たちが帰路にたち、歩いているうちに完全に日は沈む。
そういえば、城でのこと、結局探りを入れることはできなかったな。
また、後日なんとかするか。
そんなことを考えながら、月明かりに照らされた寮へたどり着くと、1人の男が立っている。
先程、別れたばかりのリーダー格だ。
「なんだよ。 やっぱり名前を教えに来たのか?」
「……詳しいことは、これで聞いてくれ」
「これは? 電話か」
電話というよりかは、小型のトランシーバーか。
ボタンを押すと、男の声が聞こえる。
「どうも、俺がそいつらのボス。 カドワキだ」
「あぁ、どうも。 レムです」
「ご丁寧に。 それで、相談なんだが。 その女を渡してくれないか?」
「……やだって言ったら?」
「君の部屋が1人部屋になる」
どういう……
「おい、そこを退け」
俺は、リーダー格をどかして中を見る。
誰も、いない。
「理解していただけたようだな。 安心しろ、お前は何も知らなかった。 ただ、俺たちの邪魔をしただけだ。 だから、このまま渡してくれたら何もなく日常に返してやろう」
「……お前、どこにいる?」
「そうだな。 今日はもう遅い。 明日、指定の場所に来い」
カドワキがそう言うと、リーダー格は一枚の紙を渡してくる。
地図。 指定の場所には目印が付いている。
「今すぐだ。 来い」
「……そう急くなよ。 主導権はこっちにあるんだぜ」
「何かあったら、お前は許さない」
「おーけー。 じゃあまた明日」
俺は、携帯をたたきつけようとして、やめた。
「……じゃあ、俺はこれで」
俺は、男を睨みつける。
それだけで、男は動けなくなる。
「いいよ。 帰れよ」
「……あ、あぁ」
男は、そのまま、帰っていく。
「とりあえず、寝るか」
「すみません。 私のせいで」
「…………」
気にすんな。
そのひとことがいえなかった。




