会話
俺は人生の中である持論がある。
直感は大事。
目の前の女の子とおっさんどっちを信じる?
例えば、俺がかつて、クラスメイトの女の子にいじめられ、女嫌いになったとしよう。
それでも可愛い方だよね。
おっさんの方が可愛いなんてのは無しだぜ。
「事情はいざ知らんが、助けを求められたら邪険にはできないぜ。 君、名前は?」
「えっ?」
なぜか女の子は狼狽える。
「ん? どうした」
「や。 名前……どうしようかと思いまして」
あれ。 もしかして。
「名前とかない感じ?」
「ええと。 そういうのは嫌な感じなので」
埒があかない。
「おい。 クレイン。 この子の名前は」
「……………」
沈黙がかえる。
「どういうことだよ」
「ええと……おじゃる」
俺なんかやっちゃいました?
いや、変なことは聞いてないと思うけど。
「じゃあ、アリアで」
女の子は口を開く。
じゃあって何だよ。
「おじゃっ!! 抱きたい女世界ランク1位でおじゃるな」
何だそのランキング。 ぜひ知りたい。
「黙っとけ……ていてください」
この子もちょっと崩れてきてるなぁ。
「わかったわかった。 とりあえず話し合おうぜ。 お互い、誤解してるだけやもしれん」
「話し合うでおじゃるか? 何をでおじゃる?」
「とりあえず、お前たちはここで何をしてるんだ?」
「研究でおじゃるよ」
「オーケー。 もっと具体的に頼む」
話し合いに応じるのか。 もしかして悪い奴らじゃない?
「ここは学校でおじゃろう? 生徒をさらって人体実験をしてるんでおじゃる」
ははっ。 前言撤回。
げ、下、外、ゲドーだ!!
こいつ度がつくほどの外道じゃねえか。
「さぁ、銃を上げろ。 俺はお前を許さない」
「待つでおじゃる。 話は最後まで聞くでおじゃる」
「ん。 なんだよ」
「わしたちは依頼されてここで実験をしているのでおじゃる。 つまりそいつが主犯でおじゃる」
「別にお前が許される理由にはならなくない?」
「おじゃ? ちょっと待つでおじゃる。 取り引きをするでおじゃる」
「取り引きだと?」
「お前の求めるものを一つやるでおじゃる。 何が欲しいんでおじゃるか?」
「はぁ? 馬鹿かお前」
「わしは誰一人死なせてないでおじゃるし、傷つけてないでおじゃるよ? それなのにわしを殺すでおじゃるか?」
「……実験って何をしていたんだ?」
「強制的な魔力の覚醒でおじゃる。 擬似的な魔法の再現ではなく、全ての人が魔法を使える最高の研究でおじゃる」
「副作用は?」
「今の所確認されてないでおじゃる」
今のところね。
「わかった。 とりあえず見逃しておいてやる。 だが、何かあった時、お前ら2人を真っ先に思い出してやるからな」
「えぇ? 私も? なんでよ」
「もうバレてるでおじゃるよ。 イデア、とりあえず帰るでおじゃる」
へぇ、イデアねぇ。
「そういえば、お前らの依頼者って誰だったんだ?」
「ひ……」
「ひ?」
「秘密でおじゃる」
「……遺言を聞こう」
「嘘でおじゃる。 だから許すでおじゃる丸。 依頼者はアルカイオスでおじゃる」
「はっ!?」
「何でおじゃるか? あの有名なアルカイオスでおじゃる。 しってるでおじゃろう?」
「……いや、分かった。 もう行け」
「まだ、欲しいものを書いてはないでおじゃるよ?」
「……またの機会に頼むよ」
「だがそれじゃあ……」
「ドクタークレイン。 いくよ。 いいって言ってるんだから無駄に何か上げる必要がある?」
イデアが外へ向かって歩いていく。
クレインは少し俯いたあと、一つのものを差し出す。
「指輪?」
「なかなか指輪でおじゃるよ。 困った時きっと君の助けになるでおじゃる」
「そうか、いただくよ。 じゃあな」
クレインも、イデアを追いかけていく。
ふと、クレインが振り返る。
「まだ君の名前を聞いてなかったでおじゃる。 聞いてもいいでおじゃるか?」
「あぁ。 えっと、レムナント。 レムでいい」
「ふむ。 何処かで聞いた名でおじゃるな。 思い出さないでおじゃるが。 なんだかまた近いうちに合う気がするでおじゃる」
「出来ればもう二度と会いたくないがな」
とりあえず、この学校の異変は解決……な訳ないよなぁ。




