罠
俺は奥地を目指して歩き出す。
そのための第1歩を踏み出した時、周囲が閃光に包まれた。
身体に電流が走る。
ビビリビリ、一昔前の表現なら骨でも見えるだろう高圧の電流は、俺の身体を痺れさした。
「罠か。 そう……だよな。 だが、この程度ならどれだけ受けても」
どれだけ受けても、問題はなさそうだ。
ただ、この威力こそが罠だった場合、まずい。
罠があるくらい当然のことだ。 誰だって警戒する。
その罠が人に耐えられる程度のものであるなんてあり得るだろうか。
このぐらいならと油断させたところを本命の罠が待っているとしたら……一応警戒の必要がありそうだ。
そうして俺は、全力で走り出した。
「はは、ははは!! 警戒はする、だが慎重になるとは言ってない。 クラスのみんなが帰りを待っているのでな。 いざ、推して参る」
高速で駆け抜けると、後ろで罠が発動する気配を感じる。
そう、罠は起動までにタイムラグがある、その間に駆け抜けることで全てを回避する作戦。
それは、どうやらうまくいったようだ。
「やっぱり俺は、はぁはぁ。 天才だな」
それにしても長い廊下だ、まだたどり着かないのか。
遠くを見つめると、大きな扉が見える。
よし、あと少しだ。 そう思った瞬間のことだった。
俺は床とキスをした。
転んだ。
足がもつれたか? いや、転ぶ直前、その感触は何かに引っ掛けた。
後ろを見ると、細い紐がきらめきながら存在をアピールしていた。
「だいぶ古臭い罠だな。 こういうのって大抵……」
大きな音とともに床が抜ける。
落とし穴、下は剣山となっており、上からは丸太が降ってくる。
かなり大きな落とし穴であり、その落とし穴は落とし穴として十分機能するであろう落とし穴であった。
要するに、脱出不可能である。
まずは、下の剣山だ。
生身で受ければ怪我をしてしまう。
今日学校のプリントを見るに、これは単純魔法に属するらしい。
単純魔法は、訓練すれば誰でもできるって意味の魔法だ。
俺は、魔力に目覚めてから、すぐに使えた。
だから、ちょっと自分が特別なんじゃないかって思ってた。
「だけど、これらは誰にでもできるんだろ。 それじゃちょっとした天才レベルじゃねえか」
軽く怒りをぶつけながら、剣山を凍らせて氷山にする。
せめて尖ってなければ大丈夫だろうという考えだ。
そして、空から降ってくる丸太を蹴り着山する。
痛くはないが、冷たい。 それもすごく冷たい。
背中をヒリヒリいわせながら俺はもう一つの魔法を解き放つ。




