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2校の中

 それにしたって、やけにボロい校舎だな。


 趣があるといえば聞こえがいいが、このままでは災害に耐えられまい。


 建て直しをしない訳があるのか……予算か。


 校長室内で見つけた資料では、軍事費の減少に伴って、学校予算が年々減少していることがわかる。


「それで、対抗戦か」


 合点がいき、つい口ずさむ。


 なるほど、戦争中だというのに軍事費がカットされるなんて、あの平和ボケの王らしい。


 だが、この対抗戦賞与という文字。


 なかなか金が入ってきてるじゃないか。


 今回は、あるいは毎回、本気で取りに来ているんだろうな。


 だが、限られた予算で結果を出すのは難しいようで、ここ最近ではあまり勝ててないようだな。


 さて、めぼしいものは大体見回ったが……ある一点を除いて特に何もなかったな。


 まぁ、妙なところがあるというのか、ないというのか。


 俺はこの校長室にたどり着くまでに、廊下を普通に歩き、各教室を見て回った。


 廊下はそこそこ広く歩くたびにカツカツと音が響いていた。


 教室では、気まぐれに机の中をのぞいてみたり、展示品にをいじって壊したり、黒板に落書きもしてみた。


 ーーレムナントここに参上ーーって書いた。 頑張った。


 それらのことが敵の校舎内で簡単に出来たことが問題であり、異常なのであった。


 というのも、一切の人影がない。


「秘密の特訓とかか……俺を襲ったみたいに潜んでるのか」


 うちの生徒達の身が危ないかもしれない。 時間がないな。


 とりあえず校長室を後にして、後いくつの部屋が見られるか。


「えーと。 うぇーと」


 俺がやってきたのは、新しい教室ではなく、体育館。


 さっきボコったやつに直接聞き出そうと考えたからだ。


 その俺が狼狽えている。


 どこにもいないから。


 そこにいるはずの気絶している数多い生徒達は、

 姿形を跡形もなく消し去っていた。


「うーん。 匂いは残ってるな。 瞬間移動か? いや、それならさっきの戦いで有効に使えるだろうし、そもそもあんな古典的な拉致の仕方をする意味がない」


 ならどうやって消えた。


 そして、何故消えた。


 俺を再び遅い直すために身を潜めたか?


 バカな。 回復が早すぎる。


「ん? 何か違和感が」


 先ほどは集団に囲まれていたために、あまり意識して体育館内を観察することは出来なかった。


 だから、今この違和感に気がつくことができた。


 そして、その違和感の正体にはすぐたどり着くことができた。


「そうか。 あそこがおかしいんだ。 あそこだけ、調和を崩す形状をしているんだ」


 普通、体育館は左右対称に作られる。


 この学校の体育館も、一見すると左右対称だ。


 だが、一点だけ非対称な場所があった。


 床である。


 そしてそれは床ではなかった。


 その床だけ、やけに色が異なっている。


 その事実だけでは、それに気がつくことはできなかったが、もう一つ、普通ではあり得ないことがその床におきていた。


 ずれている。


 その床は、まるで蓋のようになっており、持ち上げるとそこそこ重い。


 その蓋が、ずれて置かれていたがために、隠されるべき地下への入り口が露見してしまっていた。


「ははーん。 そういうことね。 黒い噂……尻尾ぐらいは掴ませてくれそうだ」


 どうするか。


 準備を万端にするためにここは下がろう。


 嘘だ。 今すぐゴーっ!! だ。


 俺は正直自分の力を過信している。


 慢心している。


 その地下でどれだけ恐るべきことが起きようとも、なんとかなると思っている。


「だからこそ、今すぐ向かってお前達の秘密を暴いてやる」


 地下へと飛び込み、その出入り口を凍らせて塞ぐ。


 そこはかなり広く、空気は通っている。


「さて、怯えながら待っていてくれ。 あるいは、後悔をする時間は待っていてやるよ」


 俺はまっすぐと地下を進んでいった。

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